第122話 あまりにも美人だと、緊張するよな


ルナと呼ばれる人は、黒髪が腰辺りまで伸びていてつややかに光っている。

その仕草、目線・・どれも殺人級だな。

横にいたウルダと呼ばれる女の人も、ルナと比べるとやや輝きが少ないが、見たこともない美女だ。

エロさを超えた、むしろ神々しい感じさえある。

・・・

話しかけてもいいのかという雰囲気だ。

アニム王、こんな世界を運んでもらい本当にありがとうございます!!

俺は心の底から感謝した。


「貴様はダークエルフの・・」

ルナはそう言って、シルビアに話しかけていた。

その声は色っぽくて、声だけでも一目惚れしそうだ。

しかも、その言葉に何やらアニム王と似たような信頼感もある。

「はい、シルビアです!」

シルビアはピョンピョンと飛び跳ねるんじゃないかと思うテンションの高さだ。


「うむ、出迎えご苦労」

「シルビア。 お連れの人間は・・」

ウルダがそうシルビアに問いかける。

「はい、ウルダ様。 この星の住人でテツといいます。 私をここまで連れて来てくれた人です」

シルビアが俺を紹介したようだ。


俺もルナとウルダに近寄っていく。

まずは俺から話しかけなきゃいけないだろう。

そう思いつつも、声をかけづらい。

ド緊張な状態だ。

右手右足が一緒に出ているんじゃないのか?

そう思いつつも、とにかく声を出す。

声を出すと少し緊張が緩んだようだ。

「ルナ王、シルビアから紹介されました、テツです」

俺はそう言って、ルナの右手を、失礼しますといって俺の右手で取った。

そのまま片膝をつき、その手を俺の額の部分まで上げ、目線をルナに移した。

ルナの目を見て、美しいなと思いつつ、

「よろしくお願いします」

どこかの騎士風のようにやってみた。

とにかく相手に片膝をついて礼節を守ればいいだろうと思ったからだ。


「うむ。 テツとやら・・貴様は分をわきまえているな」

ルナはそういうとウルダの方を向く。

「ええ、問題ないですね」

ウルダもうなずいている。

俺は何が問題ないのかわからなかった。

そんな俺の疑問を感じたのか、ウルダが説明してくれた。


「実はな、ここに転移してきたときに、この星の住人だろう・・ルナ様に無礼を働いたものがいてな」

(ルナの転移編を参照してください。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894879033t

・・・

なるほど、そういうことか。

俺は、少し考えていたがゆっくりと言葉を発する。

「そうですか・・で、私は合格ですか?」

ルナはクスクスと笑い、ウルダは笑顔になった。

「大丈夫だ、テツよ。 貴様は合格だ」

ルナが軽く答える。


「ルナ様、これからどうされるおつもりですか?」

シルビアが聞いていた。

「うむ。 ウルダとともに、アニムに会いに行ってみようと思って移動していたところだ」

ルナはそういう。

「そうですか・・では、こちらのテツがアニム王の居場所を知っております」

!!

ドキン!

俺の心臓がバクッとなる。

おいおい、シルビアさん!

あんたいきなり、アホですか? 

心の準備もなにも、俺はこの無茶振りに焦ってしまった。


「そうか。 テツよ、アニムのところまで案内してもらってもよいか?」

ルナが言う。

あのねルナさん、断れないでしょ。

そりゃ、美人と一緒なら楽しいですが、超絶美女でしょ・・緊張しますよ。

「え、えぇ、はい。 わかりました。 ご案内いたします」

俺は思わず答えてしまった。

大丈夫か?


「うむ、頼むぞ」

ルナは言う。

俺はうなずくしかなかった。

嫌ではない。

だが、何かこう・・モヤモヤするんだよなぁ。

いきなり会った俺を、そのまま信じていいのか?

そんな感じだ。


「あの、ルナ王・・」

「何だ?」

「私とは初対面ですが、そんなに信用してもよいのですか?」

「何を言っている? 先ほど、合格と言ったではないか。 それでは不足か?」

ルナは平然と答える。

「いえ・・何と言うか、ありがとうございます」

そんなに信用してもらっても困惑するよなぁ。


「テツと言ったか。 何も問題ないぞ。 もし、間違えていたのなら、それだけだ。 ただ、嘘だった時には・・こちらも困ってしまうな」

ルナとウルダは笑っていたが、俺は笑えなかった。

その言葉が重い。

つまりは許さないぞということだろう。

まぁいい。


「あの、ルナ王・・私はあなたをどうお呼びすればいいですか?」

俺はそう聞いてみた。

いちいちルナ王、ルナ王と呼べないだろう。

「そうだな・・ルナでよいぞ、人間のテツよ」

ルナは少し考え、そう答えてくれた。

「はい。 わかりました。 では、ルナさんと呼ばせてもらってもいいですか?」

ここでウルダが一歩前に出てきた。

!!

俺はビクッとなる。

迫力あるぞ、ウルダさんよ!

美人だが、それだけじゃないな。

「人間! ルナ様と呼べばいいだろう。 それをルナさんとは・・なれなれしいぞ」


俺は少し驚いたが、なるほどそういうものかとも思う。

「わかりました。 では、ルナ様と呼ばせてもらいます」

俺が答えると、ルナは微笑んでウルダに言った。

「ウルダ、テツがおびえているではないか。 私は別にどう呼ばれようと構わんよ。 それに、ルナさんというのは、響きがいいな。 今まで誰も彼も、様付けだったからな」

「そうですか、ルナ様がそうおっしゃるのなら、私が言うことはありません。 テツ、良かったな」

・・・

ウルダさん・・あんた、怖いよ。


そういうとみんなで移動し始めた。

美人だが、怖いよな。

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