第129話 なるほど、女性受けがいいわけだ


初めに来た3人の男はレベル20だった。

後から来た集団の中にはレベル22が1人、他はレベル15~20くらいの男女で構成されていた。

そのレベル22の男が話しかけてくる。

「もしかして、新宿方面へ行かれようとしているのですか?」

ん?

この男・・どこかで見たことあるぞ。

俺の記憶がそうつぶやいていた。


「えぇ、先ほども聞かれましたが、身内の安否の確認をしに行こうと思っておりまして・・」

「そうですか。 ですが、都心部はとても危険な状態になっています。 とてもおすすめできる場所ではありません」

レベル22の男はそういうと、俺たちの目線を気にしたのか、

「あぁ、申し遅れました。 私、泉進といいます。 警視庁で勤務しておりましたが、こんな状態になり、せめて生き延びている人たちを集めて、こうして移動してまいりました」


!!

思い出した!

確か、元首相の息子で、まもなく政治家に転身するとか何とか、騒がれていた男だ。

女性受けがいいらしく、現政権が票集めに広告塔として採用するとか。

「あ、泉さんて、あの元首相の・・」

俺がそういうと、泉は少し照れたような顔をしながらも、しっかりと笑顔で接してきた。

「ええ、そうです。 すみません、親の七光りっぽくて・・」

なるほど・・その態度が受けるわけだ。


「しかし、本当に都心部は危険ですので、なるべくなら行かれませんように。もし、私たちと一緒に移動するのであれば、ご一緒にいかがですか」

泉は言う。

思わず、お願いしますと答えそうになる語り口だな。

軽く咳ばらいをし、俺は返答。

「泉さん、ご厚意はありがたいのですが、私たちは大事な人の安否を確認しに行くところです。 お気遣いだけ感謝しておきます」

泉は無理強いすることはしない。

だが、さりげなく言葉で探ってくる。


「わかりました。 あの・・今のこの現状をご存知かと思いますが・・」

「ええ、知っています。 レベルのある世界になっていますね」

俺はそう答える。


泉の見る目が少し鋭くなったようだ。

「なるほど・・それをご存知で進まれるわけですね」

泉は深くうなずき、後は何も言わなかった。

賢い奴だな。

俺はそう思った。

ルナたちは無言のまま、その場で立っている。


ただ、泉以外の男たちの目線は、ルナたちに集中していた。

「あの女性の方々の護衛は大丈夫ですか?」

泉が聞いてくる。

「大丈夫です。 彼女らは、私よりも強いですから」

俺は笑顔で答えた。

泉の目が大きく見開かれて、すぐにスマイル顔に戻った。

泉以外の男は、ルナたちをジロジロと見ている。

当然だろう。

だが、泉はそんな素振りを見せない。


俺の記憶が確かなら、この男・・。

若くしてどこかの警察署の偉いさんになったと思ったんだが。

それでいて、えらく住民に頻繁に接したり、イベントに参加したりと活動的に動いていたと思う。

その効果だろうか、おばさんなどにものすごく人気があった。

ただ、何かの拍子でカメラが向けられた時の絵面えずらが忘れられない。

自分の部下だろうか。

年配の男の人に対してだったと思うが、ものすごく横柄な態度で怒鳴り散らしていた。

カメラに気づくとすぐにその場を去ったが、怒鳴られた男の人は恐縮していた。

そのニュースも1度くらいは全国に配信されただろうか・・だが、それっきりだ。


政治家も警察や自衛隊などの国家機関に属する組織。

不祥事があると一応ニュースにはなる。

だが、1~3日くらいすると、もう配信されない。

意図的だろう。

何かの圧力があるのかもしれない。

普通のアホなニュースや芸能スキャンダルは長く放送されるんだが・・。

まぁいい。


泉に関しては、その記憶があるのでどうも好きになれなかった。

だが、目の前にしてみると、確かに好青年を演じきっている。

そりゃ、次の選挙では当選確実だっただろう。

こんな世界にならなければな。

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