第110話 貴様のせいで危なかったぞ!


初めて出会ったトロウルはメイスに炎をまとわせていたが、このトロウルのメイス・・キラキラ光ってるぞ。

氷か?

しかし、トロウル・・お疲れ様!

俺はトロウルに向かって1歩踏み出した。


その瞬間、叫び声が聞こえた。

「危ないぞ! 人間!!」

な、何だ?

俺は思わずその声の方を向いてしまった。

・・・

しまった!

そう思いつつも、トロウルの方を見直す。

すでにメイスは振り下ろされていた。

「チィッ!!」

俺は全力で横へ飛ぶ!

着地のことなど考えていない。

とにかく避けないと。


ゴロゴロと転がりつつ起き上がってみると、さすがトロウル。

メイスを振り下ろした辺り一帯にクレーターが出来ていた。

そして、ところどころがキラキラと光って、凍っているようだ。

俺は50メートルくらいは離れたというか吹き飛んだというか。

しかし、無傷だ。

とにかく距離を取った。

その俺のところへ先ほどの声の主が現れる。

「おい、大丈夫だったか、人間!」


俺は自分の集中力のなさに腹立たしく思いつつも、こいつのおかげでしくじったのかとも思った。

声の主の方を向きつつ言葉を発した。

「きさまのおかげで・・・」

そう言ったところで言葉を失ってしまった。

!!

またもエルフだ。

でも、髪が銀色で皮膚の色がやや褐色だ。

まさかこれって・・ダークエルフ、なのか?


即座に目線を移動させる。

瞬間的に上から下まで3度ほど見ただろう。

!!

フレイアとは違う。

でっかい胸だ!

スタイルは抜群だな、おい!!


「おい人間、大丈夫だったか? それよりも、お前・・なんか失礼なことを考えてないか? 言葉は通じてるか?」

その銀髪美人は矢継ぎ早に聞いてくる。

俺は少しぼんやりとしながら答える。

何せ、胸から目が離れない。

「あぁ・・言葉はわかるし、大丈夫だが・・それよりも、あなたはダークエルフなのか?」

美人さんは少し目を見開くとすぐに俺の方をみる。


「そうだが、よく知ってるな。 貴様はこの星の住人だろう。 おっと、話は後だ。 トロウルが来たぞ」

その言葉で俺もトロウルの方を向く。

ダークエルフは槍のようなものを持っていた。

俺はそれを見つつも、トロウルの方に向かって歩いて行く。

「お、おい、人間! 危ないぞ」

ダークエルフが声をかける。

さっきはその言葉で、本当に危なかったからな。


俺は片手を挙げ、その言葉を背中で受ける。

そして足を速めた。

トロウルがメイスを振り上げたところを一気に両腕を飛ばす。

そのまま頭から縦に真っ二つに切断。

『経験値を獲得しました』

天の声もあまり邪魔にならなくなったな。

トロウルが蒸発して魔石が残った。

魔石を回収してアイテムボックスに収納する。


ダークエルフの方を向くと、口を半開きでこちらを見ていた。

おいおい、そのアホ面・・美人が台無しだぞ。

しかし、エルフは本当に美人揃いだな。

俺が近づいていくとダークエルフは首を軽く振り背筋を伸ばす。

「に、人間・・貴様、かなり強いな・・まさか、トロウルを一撃で仕留めるとは」

え?

レベル28でしょ。

そんなにランク高い魔物じゃないはずなんだが。

まぁいい。


「そうか? ま、とりあえず、ありがとう」

一応、俺はお礼は言った。

ただ、お前のせいで危なかったからな。

言ってやろうかな。

「いや、こちらこそ余計な口出しをして申し訳ない」

ダークエルフは頭を下げていた。

お、なかなかわかってるじゃないか。

「あ、それよりもダークエルフがどうしてここにいるのです?」

俺はまずそう聞いてみた。

「人間、お前はこの星の住人なのだろう。 よく私のことがわかるな」

ダークエルフは不思議そうな顔で俺を見る。

そりゃ・・ゲーム、ラノベ、異世界もの、好きですからね。

・・・

聞けば、このダークエルフ、半日ほど前に転移してきたみたいだ。

大きな魔素が集まっていたので、その方向に向かって移動してきたという。

たぶん、俺とフレイア、優の時だな。


ダークエルフってどういう種類なんだろう。

フレイアはエルフだし・・どう区別されているのだろうか?

そんなことを思いつつも、エルフも転移してることを伝えてみた。

・・・・

・・・

「ほんとうか? フレイアがすでに転移してきているのか? なるほどな・・」

フレイアのことは知っているみたいだ。


ダークエルフは大きくうなずいて、感心しながら話をしてくれた。

名前は、シルビアというらしい。

エルフは光の神の属する精霊の加護を、ダークエルフは夜の神の属する精霊の加護を得ているのだという。

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