第108話 これって、もしかしてテイムできるんじゃないか?
時間は14時くらいになっていた。
藤岡の奥さんと子供はまだ帰って来ない。
いつものことらしい。
どこかでお茶でもしているのだろうという。
「藤岡、後は無茶しなければ大丈夫だと思うぜ。 俺はそろそろ帰るよ」
「そっか・・いろいろすまんな。 ありがとう」
藤岡はそう言って見送ってくれる。
「いや、別にいいよ。 どうせ、反対の立場だったら同じことをしただろう」
「・・・・」
藤岡は微笑むだけで言葉では答えなかった。
「ま、ほんとに命は大事だからな。 後は家族と一緒にいろいろ考えてやってみてな。 また、来るから」
「すまんな、町田」
藤岡が苦笑する。
「さて、俺たちも帰るか」
俺は優たちを見ながらうなずく。
優もフレイアもきちんと挨拶はしてくれる。
後は来た道を戻って行くだけでいい。
これでいいと思う。
藤岡には生き残ってほしいし、大事な友人だからな。
山陽自動車道が見えてきた。
福知山を越えた辺りだろう。
山と街の境といったところか。
ガーゴイルが結構多くいるのが見える。
上空を旋回しているのもいれば、地上付近と上空を往復してるのもいる。
その下の山の方では、ワイバーンが3匹ほど固まっていた。
ガーゴイルがレベル16。
ワイバーンがレベル33。
どう考えても、ガーゴイルの数だけで勝てる相手ではない。
だが、そのガーゴイルがワイバーンにプレッシャーをかけてるように見えるのだ。
1匹のワイバーンが上空へ舞い上がり、ガーゴイルを追い払い始めた。
ガーゴイルは逃げ惑う。
ワイバーンが近くをかすめる度にボトボトとガーゴイルが落ちてくる。
ま、当然だな。
「フレイア・・あれ、何だと思う?」
俺と一緒にその状況を見ていたフレイアに聞いてみた。
「私も考えていたのだけれど、ワイバーンが何かを守ってる感じだわ」
フレイアが答える。
ワイバーンがか?
俺は不思議に思った。
「フレイア、あの状況に介入して討伐しても大丈夫だろうか?」
「大丈夫じゃないかな? ただ、ワイバーンが何を守っているのかわからないのが気にかかるけど・・」
フレイアが答える。
「そっか、じゃぁ優、ワイバーンの爪と尻尾に気を付ければ大丈夫だから、一緒に討伐してみようか」
俺がそう言うと、優はうなずく。
そういえば、こいつレーンジャーだったな。
問題ないな。
これで優のレベルも上がるだろう。
3人で接近して、地上の2匹のワイバーンを見てみる。
1匹のワイバーンが地上付近でうずくまっている。
もう1匹は横で警戒している感じだ。
怪我でもしているのか?
俺はそう思ったが、すでに討伐対象だ。
遠慮する必要はないだろう。
遠慮なく2匹の尻尾を切断。
尻尾を切られたことで、こちらの存在に気づかれたようだ。
フレイアが弓を構えて、上空のワイバーンを狙う。
パシュ!!
矢を放った。
見事にワイバーンに命中。
それと同じくして、優は地上のワイバーンの首を切断していた。
俺は、フレイアの弓に見とれていたが、すぐに目の前のワイバーンの首を斬り落とす。
ガーゴイルたちがウロウロしていたが、ついでに討伐。
優がサクサク狩っていた。
ワイバーン・・レベル33だよな?
あっけない。
それにしても、フレイアっていったいレベルいくつなんだ?
改めて見ても凄いな。
また聞く機会があったら聞いてみよう。
しばらくしてワイバーンは蒸発。
すると、魔石の横に白い大きな塊がある。
ん?
「フレイア、あれは?」
「あ、ワイバーンの卵ね。 なるほど、ここに巣作りをしようとしてたんだわ」
フレイアが言う。
「なんか、悪いことした気分だな」
俺は少し気の毒に思った。
「テツ、気にすることないわよ。 ここでワイバーンを倒しておかなければ、被害が大きくなるかもしれないんだから」
フレイアは当たり前のように言ってくれる。
そういうものなのだろう。
俺はワイバーンの卵のところへ行って、アイテムボックスにしまおうとした。
あれ?
アイテムボックスに入らないぞ。
なんでだ?
もう1回入れてみる。
入らないな。
俺の動きをフレイアが見ていてクスクス笑いながら言う。
「テツ、生きているものは基本、アイテムボックスには入らないわよ」
?
生きてるものって・・この卵、生きてるのか?
基本?
例外もあるのか?
チラっと頭の中を言葉がよぎるが、卵のことですぐに忘れる。
「え? フレイア、この卵って生きているのか?」
「そりゃ、そうでしょう。 ワイバーンが今まで卵を抱いていたんだから。 それに食べると結構おいしいわよ」
フレイアが教えてくれる。
「そっか、卵焼きか・・」
俺は卵焼きを想像しつつ、思いついた。
!!
「フレイア! この卵って孵化するのかな?」
「う~ん、わからないわね。 どうするの?」
フレイアが不思議そうな顔で俺を見る。
「うん、颯にテイムしてもらおうかと思ったんだけど・・」
フレイアの目がグッと大きくなる。
!!
「テツ! それいいわね! あなた、最高ね!」
フレイアはとても喜んでくれた。
俺の両手を持ってブンブン振ってくれる。
おっと、優はレベル上がったかな?
「魔石集め、ありがとう。 優、それでレベル上がった?」
1人で魔石を集めてくれていたようだ。
ご苦労様。
「うん。 上がったよ」
優は作業しながらにっこりとして答える。
「そっか、よかったな。 じゃ、帰るか」
周囲には魔物はもういない。
3人で軽く淡路島を通過して、家に帰った。
こんな移動、今までではありえないが普通になってきたな。
この移動感覚、大丈夫か?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます