第106話 少し、友人の様子を見に行きたいと思うのだが


いや、フレイアさん。

本当にありがたいのです。

俺は本気で思っていた。


「フレイア・・それにミノタウロスの時に助けてくれたお礼、まだしてなかったな。 何かしてほしいこととかあるかな?」

俺は聞いてみる。

優が少しピクッとしていた。

「テ、テツ、お礼なんていらないぞ。 十分もらったよ。 御父上に打ち直してもらったレイピア・・あれで十分すぎるお礼だ。 むしろ、こちらが何か差し上げたいくらいだ」

フレイアがバタバタしながら言う。

じいちゃん、ありがとう!!

俺はじいちゃんに大感謝だ。


「そうか、すまないなフレイア。 そして、ありがとう」

「い、いや、別にいいって・・」

フレイアが顔を赤らめてソワソワしていた。

かわいいな。

ん?

優が何か言いたそうにしている。

「どうした優?」

「おやじさん、ミノタウロスって・・そんな魔物がいたのか。 強かったの?」

どうやら討伐に興味があったようだ。


「あぁ、強かったな。 フレイアがいなければ、本当に死んでいたかもしれない」

俺の正直な感想だ。

「そんなに? 俺もレベルアップしてみたいな」

優がつぶやく。

優は後ろを向く年齢じゃない。

前だけを向いて行く歳だ。

そりゃ、レベルアップしたいだろうし、未知の魔物も体感したいのだろう。

「そっか、じゃあ、少ししたらまた討伐に行ってみるか?」

俺はそう提案。

優は喜んでいた。

しかし、危険すぎるかな?

俺は言葉にしたものの、少し迷っていた。

すると、優がいきなり椅子から立ち上がる。

ビクッ!

俺が驚く。

優は2階へ行って、早速準備してくるそうだ。

いやいや、少ししたらって言わなかったか?

即行か!!


ばあちゃんがその様子を見ながら言う。

「テツ、あんまり無理しないように。 どんな状況になっても、身体だけは大事だから・・」

ありがとう、ばあちゃん。

「うん・・わかってるよ」

俺がそういうと、フレイアがばあちゃんに近寄って行って、おまかせくださいと力強くばあちゃんの手を握っていた。

フレイア、やけに懐いてるな。

じいちゃんが何か打ちたいような仕草をするが、たまには休んでくれ。


フレイアに、俺も2階に挨拶してくると言ってその場を離れる。

2階に行くと、優は準備完了だった。

やる気満々だな、こいつ。

!!

そうだ。

じいちゃんに、優の刀も新しく打っておいてもらおう。

嫁とお義母さんに、少し出てきますと言ってみた。

嫁は何も言わない。

・・・

そういえば、いつからだろう。

俺は必ず誰かが出かけるときに挨拶はする。

この嫁は挨拶もなくなった。

俺の稼ぎが少なくなってからか?

女の人は、お母さんになると、金の量=愛情表現の量になるのだろうか。

・・・

お義母さんが、気をつけてと声をかけてくれた。

嫁の代わりか!

それにしてもこの人・・まだ住人でいるみたいだな。

まぁ、お義母さんらしいといえば、らしいな。


1階に下りて、ばあちゃんに行ってきますと伝える。

じいちゃんには優専用の刀をお願いしますと、俺と同じトロウルのメイスを手渡しておいた。

魔石もいくつか置いておく。

適当に選んで作ってみるそうだ。

よろしくお願いします。


俺たちは家を出て、とりあえず明石方面に向かう。

俺と優、フレイアも一緒について来てくれている。

優は何だか嬉しそうだ。

わからないでもないぞ。

討伐だけじゃなく、こんな美人と一緒だからな。

俺と優の移動はかなりの速度だと思う。

フレイアはポーン、ポーンと軽く跳ねるように移動する。

妖精のようだな。

それでも同じような速度だ。


淡路島も10分もかからずに移動。

明石大橋を通過して、速度を歩行に変えた。

辺りを索敵してみる。

・・・

オーガくらいの魔物がいるだけだ。

高いレベルの魔物は・・いないな。

やはり大阪市内の方がいいかな。

・・・

!!

そうだ、藤岡だ!

北京都の友人のところに1度行ってみよう。

俺はフトそう閃いた。


藤岡という友人。

自衛隊の時の同期だ。

入隊して3年ほどで退職し、ワーキングホリデイなどで海外を回り、今は自営業をしている。

嫁さんが地方公務員だから、食べるのには困らないそうだ。

近くの海に、琴引き浜という海岸があり、鳴き砂、踏むとキュキュと音がする砂浜のある海岸が記憶に残っている。


明石大橋を渡り終えて優に言ってみた。

「優、藤岡のところへ行きながら、魔物を倒していこうと思うんだが・・それでいいかな?」

「藤岡さんのところ? 別にいいけど・・」

優が答える。

まぁ、反対ではないわけだ。

フレイアがいるから、どこでもいいのかもな。

「フレイアはそれで構わないか? 藤岡っていうのは俺の友人なんだが、少し様子を見ておきたいと思って・・」


「私は別に構わない。 どこでもついていくよ」

「そうか、ありがとう、フレイア」

「テ、テツ・・いちいちお礼などいらないからな!」

フレイアが慌てて返答する。

ツンデレタイプか?


ここからなら、高速道路に沿いつつ一直線で移動した方が速いだろう。

俺たちのレベルも結構あると思うし・・そう思って移動を開始。

魔物もレベル30前後を意識して移動しているが、都市部と言えないところを移動なわけで、それほど高いレベルの魔物がいない。

ほぼ無視だな。

20分ほどで現地に到着できた。


確か宮津市に住んでいたはずだが・・記憶があいまいだからな。

この辺りはあまり建物も壊れていない。

俺のところ同じような感じだ。

古い記憶を頼りに移動していた。

段々と記憶と一致する景色が現れてくる。

「あぁ、そうそう、このビジネスホテルあったよな」

俺はブツブツいいながら、記憶を確かめていた。

・・・

!!

あった、あった。

このマンションを曲がったところにスーパーがあったと思ったが・・。


あった!

そうそう、このスーパー・・確かユアーズだったっけ?

このスーパー、壊れてないな。

人の往来はほとんどないが、普通の生活空間の感じがする。

地方では魔物が溢れないのかな?

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