第105話 「飛燕」・・それがお前の名だ


フレイアがレイピアを受け取って喜んでいると、待っていた颯が出てくる。

じいちゃんにこの石をネックレスにしてもらっていい? と尋ねていた。

フレイアも落ち着いてきたようで、颯の後押しをしている。

無論、じいちゃんは孫の颯の言うことを断るわけはない。

颯は自分のイメージを身振り手振りで、一生懸命に伝えていた。

うまく伝わるのだろうか。

というよりも、じいちゃん聞いてるのか?

ただ、颯の一生懸命さをニコニコしながら聞いている。

ま、それにしてもウルフの魔石が有効利用できるのなら言うことはない。

また違う番犬になる魔物が必要かな?

今度はご近所の人に討伐されない魔物がいいな。

俺はそんなことを考えていた。


あれ?

優はどこに行ったのだろう。

聞くと、トイレで大きい方の用足しみたいだった。

ばあちゃんが教えてくれる。

そっか、頑張れ。


俺はフレイア達を見ていて思い出したことがあった。

俺専用の武器の名前をつけやらなければいけない。

俺と一緒に成長してくれる刀。

相棒だ。

パッと浮かんだのもあるが、少しずつ考えていた名前があった。

「飛燕」

燕のように素早く動いてくれる感じがする。

頭の中では、燕が田んぼの上を舞っているイメージが浮かんだ。

それも素早く上昇下降を繰り返し左右にも機敏に動く。

・・よし!

この名前がぴったりだ。


俺は刀を持ち上げて、鑑定をしてみる。

名称:未設定。

刀に心で呼びかける。

お前の名前は、飛燕だ!

そして、次に口に出して言ってみた。

「お前の名前は飛燕。 これからよろしく頼む」

言い終わると、鑑定に表示されていた名称が未設定から飛燕に変わった。

・・・

案外、簡単に変わるな。


颯の魔石はすぐに加工できたみたいだ。

じいちゃん、だんだんと神がかってきたんじゃないか?

颯はそれを手にすると、すぐに首にかけていた。

うれしそうだな。

じいちゃんも満面の笑みだ。

フレイアが、そのネックレスにはウルフの魂が宿ってるよと言っていた。

持ち主を守るのだそうだ。

颯はなおさら嬉しそうだった。


優はトイレから出てきて、チラチラとフレイアを見ている。

そりゃ、美人だからな。

男なら誰でも惚れるぞ。

声、かけたらいいのに・・でも、中学生くらいなら俺も声かけれないか。

そんなことを考えながら見ていた。


さて、今後のことを考えないといけない。

やはり、まだまだ都市部にはレベルの高い魔物がいるのだろう。

とりあえず、それらを問題なく倒せる位まで自分のレベルを上げておきたい。

別にこれといって明確な目標があるわけではない。

高レベルの魔物は、普通それほど出現するものではないとアニム王は言っていた。

ならば、いるうちに倒しておきたい。

ボーナスだ。


それにしても、ご近所さんたちの上昇志向要求。

ゲームならそれでもいい。

だが、命がかかっている。

危ないんじゃないか?

とはいえ、そこまで俺は真剣に心配はしていない。

極端な話、自己責任だと思っている。

自分の力を見誤った結果なら、仕方ないだろう。

それを誰かにカバーしてもらえるときは、運がいいときだ。

それに、基礎情報は提供済みだ。

さて、後でフレイアにも今後のことを聞いてみよう。

フレイアに目的はあるのだろうか?


あ!

じいちゃんに刀のお礼を言っておかなきゃ。

「じいちゃん、あの刀ものすごくいいものだったよ。 本当に助かったよ、ありがとう」

じいちゃんは無言でうなずいていた。


「フレイア、聞きたいことがあるのだが・・」

フレイアが俺の方を見る。

颯は2階へ上がるようだ。

優は緊張してまだ固まっているな。

「何?」

フレイアの目がまっすぐに俺を見る。

!!

フレイアさん、その仕草が殺人的なんですが。

もしかして、地球人にはエルフは天敵なんじゃないか?

ただ、振り向いて髪を耳にかきあげる仕草なんだが、それが何とも言えない色気を感じる。

「あぁ・・あのねフレイア、まずは俺のことなんだが・・」

とりあえず気持ちを落ち着けよう。

深呼吸。

「今の現状、レベルの高い魔物が溢れているけど、自分のレベルを上げながらできる限り討伐してみようと思っている。 方向性は間違ってないだろうか?」

俺がそう言うと、フレイアは少し考えていた。


「う~ん、そうね・・それでいいんじゃないかしら。 レベルを上げておけば役立つと思うわ。 それに今のような状況ってそんなにあるわけでもないし・・とにかくレベルの高い魔物がいるのは脅威だから。 冒険者なら討伐するわね」

「そうか、ありがとう。 それと、フレイアはこれからどうするつもりなんだい? というか、どうしようと思ってるの?」

俺は聞いてみた。

優がジッと見つめている。

フレイアはチラっと優を見て微笑んだ。

優は急いで目線を外す。


「そうね・・他に仲間も転移してきているかもしれないし、それを探そうと思うけど、そんなに急ぐことでもないしね。 テツに付き合うわよ」

「そうか、ありがとうフレイア、心強いよ」

俺は本気でそう思い、頭を下げた。

「テ、テツ・・べ、別にいいわよ。 頭を上げてよ!」

フレイアは少し驚いていたようだ。

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