第94話 俺専用の武器か・・


嫁もようやく起きてきたようだ。

俺の方を見て、あくびをしてそのまま通過。

・・・

挨拶もなし。

ま、いつも通りか。

「お母さん、おはよう。 あ! 朝ごはん、ありがとう」

嫁がお義母さんに挨拶をしていた。

自分の母親には気を使うんだよな、いつも。


「ママさん、後で優と出かけてくるね」

俺は声をかける。

「あっそ」

嫁はそういうと、顔を洗いに洗面所の方へ行った。

・・・

俺がいても邪魔になるだけだな。


俺は1階へ降りて行く。

優は2階でウルフたちと遊ぶそうだ。

俺はそんな優の顔を見て思った。

良かった、昨日のあのブルーな雰囲気はなくなったな。

さて、俺は1階に降りてくるとほっとする。

これではいけないとわかってはいるのだが。

2階は嫁に占領されてるからな。

あいつ、この家に1円も出資してないのに。

フッと頭にそんな考えがよぎる。


俺が1階に来ると、ばあちゃんがお茶を淹れてくれた。

やっぱ、ほっとするし、おいしいなぁ。

「ばあちゃん・・たった2~3日なのに、随分環境が変わったね」

「そうさねぇ・・わたし的にはそれほどでもないよ」

いやいや、ばあちゃんプリーストだから!

「いや、ばあちゃん・・」

俺がそう言葉を出すと、こちらを向いてお茶を一口飲む。

「そりゃ、変なことができるようになったけど、生きるということでは全然変わってないよ。 食べて、寝る・・人のやることは何にも変わってないよ」

・・・

ばあちゃん、確かにその通りだよ。

変わったといえば変わってるし、変わってないといえば変わってない。

モノサシをどこに置くかで全然違う。


そりゃ、今の身体能力や特殊能力はなかったものだ。

でも、動けば腹も減るし、疲れてくれば眠くもなる。

怪我をすれば血も流れるし、死ねば終わりだ。

ただ、蒸発するけど。

達観していると言っていいのか・・大物だな、ばあちゃん。


俺は、ふぅと息を吐きながら何かを思い出せそうな感じがあった。

横の部屋からじいちゃんが出てきた。

あ! 

思い出した。

じいちゃんに頼んでいたものがあった。

そうか、もう帰って来てから結構時間が経過したんだものな。

すみません、じいちゃん。


「おお、テツか。 とりあえずできたけど・・」

って、できたのかい!

かなり疲れてる感じがするぞ、じいちゃん。

まぁ、トロウルのメイスとその辺りの魔石を扱ったからな。

!!

じいちゃんが刀を引きずって来る。

え?

何それ・・そんな重いもの振り回せないと思うんですけど。

俺のその反応を見てじいちゃんが即座に言った。

「わかるか? 打つ時には問題なかったんだが、出来上がってみると重さがなぁ、重いんだ」

そういうとじいちゃんは床の上に刀を置いた。


見た目は黒光りしているといえばいいのだろうか。

漆のような光沢がある。

俺もそれを見ながらじいちゃんの方をみた。

「すまんなテツ。 重さだけはどうしょうもない。 ただ、イメージは強烈に焼きつけたと思うけどな」

じいちゃんは何やらうれしそうな感じで言う。

自信満々だな。

「いや、じいちゃんありがとう。 いつも無理ばかり言ってごめんな」

じいちゃんはにっこりとうなずく。


まずは刀を鑑定してみる。

!!

驚いた。

☆が3つも付いてるじゃないか!!

しかも俺専用みたいだぞ。

名称:未設定。

☆テツ専用武器。

☆使用者とともに成長可。

☆絶対切断。


「じいちゃん・・凄いものを作ったな。 しかも俺専用ってあるぞ。 本当にありがとう」

俺は心から感謝した。

じいちゃんは、その場で仰向けになって寝息を立て始めた。

それほど疲れたのか・・ありがとう。

ばあちゃんがタオルケットをそっとじいちゃんにかけていた。

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