第92話 バジリスク・・堅ぇ~!
バジリスクとの距離が30メートルほどになってきた。
まだ俺たちの存在は気づかれていないようだ。
10メートルくらいまで接近してきたときに、俺は一気に駆け寄った。
まずは目を潰そう。
そう思い、バジリスクの右目に刀を突きたてる。
ザシュ!
きれいに目に刺さる。
これはうまくいったようだ。
「ギィェェェエエエエエエ・・・・・」
バジリスクは大声をあげて、上体をのけ反らせた。
!!
うっわ、やっぱこの巨大トカゲ、怖いぞ!!
ドーーーーンと、4つ足の状態に戻ると辺りを見渡していた。
俺達を探してるようだ。
なるほど、俺たちのスキルで見えにくいわけか。
バカが。
俺は少し慢心する。
俺はそのまま接近して首を切り落とそうと、一気に刀を振り抜く。
ガキィーーーーーン!!
!!!
「な、なに?」
俺の刀が折れてしまった。
マジか!
こいつ、こんなに堅かったのか!!
俺の方がレベル高いのに。
舐めていた? 自惚れていたのか?
とにかく、バジリスクと距離を取るため俺はバックステップをする。
優は後方で待機をしている。
すると、優が声をかけてくれた。
「おやじさん! そいつの弱点は頭の上だ」
頭の上?
俺はその言葉を聞き、アイテムボックスからトロウルのメイスを取り出した。
右手に持つ。
少し重い感じだが、力が強く入る気がする。
バジリスクはそれほど動きは速くない。
それに俺たちがよく見えていない感じもする。
だが、身体を左右に揺すって俺の方に近づいてきた。
って、わかるのかよ!
匂いか?
他にも何かあるのかもしれない。
まぁ、いい。
俺は、メイスを持ったまま迎え撃つ。
バジリスクが口を開けて急接近してきた。
やっぱ、匂いか?
そう思いつつもバジリスクの潰れている目の方へ避ける。
俺はジャンプして、バジリスクの頭めがけてメイスを思いっきり振り下ろした。
「おぉりゃ!!」
ドン!!
グシャ!!
バジリスクの頭の部分が地面にめり込んでいる。
トロウルのメイス・・威力スゲーな。
頭を地面にうずめたまま、尻尾を左右に振っていた。
「優! とどめだ!!」
俺はそう叫ぶ。
優がすかさず駆け寄って来て、そのまま首のところから頭の方へ刀を突き入れた。
刀はうまく刺さったようだ。
バジリスクの尻尾がドーンと地面に落ち、そのまま動かなくなる。
しばらくして蒸発し、魔石が残った。
魔石を回収する。
優もレベルが一つ上がったようだ。
俺は、折れた刀を鞘にしまう。
・・・
言葉が出なかった。
短い時間だったが、何か相棒を失った喪失感に襲われた。
「俺の刀・・ありがとう」
俺はつぶやくように言葉にする。
「優、今日は帰るか」
優もうなずいて、そのまま俺たちは帰路についた。
帰って来てみたら、まだ7時30分だった。
俺は手洗いうがいをして2階へ行く。
・・・
なるほど、嫁たちはまだ寝てるのか。
結局、こいつらにとっては何もなかったのと同じだな。
俺は1階に降りて、ばあちゃんに報告をする。
無事、優もレベルが上がったこと。
それに、ばあちゃんたちもレベル上がったんじゃないか?
それを聞いてみた。
「そうだねぇ、頭の中でレベルが上がりました。 経験値を獲得しましたってうるさかったねぇ」
なるほど・・余裕ですか、あなたたちは。
レベルは27になっていたみたいだ。
少しやりすぎかもしれないが、これで死ぬ確率は低下しただろう。
で、職のところは何か変化あったのかな?
というか、あまりステータス画面の使い方がわからないようだ。
ばあちゃんにステータス画面を見てもらいながら、職のところをタッチしてもらった。
「ばあちゃん、何の職になれるって表示されてる?」
「職、職・・え~と、見えてるのを読めばいいんだね。 えっと、プリーストというのとロードっていうのがあるね」
ばあちゃんがいう。
なるほど、回復系の上位職ではプリーストを俺的には選んでもらいたい。
もしかしたら、リザレクションなんかがあるかもしれない。
これがあれば蘇生できる可能性があるからな。
口に出しては言えない。
俺が思っていればいいだろう。
「へ、へぇそうなんだ。 ばあちゃんはどっちがいいのかな?」
「そんなのわかるわけないよ。 どちらでもいいよ。 お前が決めておくれ」
ばあちゃんは即答する。
決して投げやりなわけじゃない。
RPGゲームなんてしたことないだろうしな。
「そう? 本当に決めてしまっていいのかい?」
「そうさねぇ・・みんなの役に立つのがいいねぇ」
なるほど・・ありがとう、ばあちゃん。
「だったら、たぶんプリーストがいいと思うよ。 回復系のより凄いのができると思うから・・」
俺がそういうと、優もうなずいている。
「そうかい・・じゃあ、それでいいよ」
そういって、ばあちゃんはプリーストになった。
・・・
何とも言葉が浮かばない。
ばあちゃんとじいちゃんは我欲がないというか、達観してるというか。
俺が勝手に決めてすみません。
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