第88話 優のレベルアップ


「おやじさん、それって・・」

そうつぶやく優を遮(さえぎ)って俺は言った。

「優、お前も明日、近いレベルになる」

!!

優の目が大きく見開かれる。

それで十分伝わったようだ。

もうさっきまでの暗い雰囲気はなかった。

都市部に行っても、中心部へ近づかなければなんとかなるだろう。

俺はそう考えていた。

優は軽い足取りで颯たちの輪の中に入って行く。


そうそう、生活魔法を覚えたのでみんなに見せてみた。

身体をきれいにする魔法がある。

魔法はイメージなので、詠唱なんて何でもいい。

ただ、ファイアと言えば火がイメージされるから火になるだけで、水をイメージできれば、水が出るだろう。

ファイアで水が出たら、牽制になるかもな。

いや、逆に無茶苦茶になりそうだ。

さて、身体をきれいにしなきゃ。


「クリーンナップ!」


そう言って、俺は風呂上がりのピカピカの身体をイメージした。

柔らかい風が身体を包んで吹き抜ける。

身体はさっぱりとした。

凛がそれを見ていて、

「パパ、私もして~」

と言ってきた。

結局全員にしてみたら、大いに喜ばれた。

後で、ばあちゃんとじいちゃんにもしておかなきゃ。


生活魔法自体は、難しくないしMPがあれば誰でもできる。

寝るまでみんなに教えることになった。

すぐにみんな覚えられた。

ちなみに、ばあちゃんとじいちゃんにも教えて、これまた喜ばれた。

魔法って便利だよな、ほんとに。


優は明日の朝が楽しみみたいだ。

パーティ的には、俺にばあちゃんとじいちゃんと颯・・かな。

優は単独だな。

みんな生活魔法を試したりして、楽しい時間が過ぎた。

やっぱり家は落ち着くな。

嫁も子どもたちと一緒になって遊んでいる。

子供に接するときは普通なんだよな。

俺にだけ厳しい。

そんなことを考えていたら、凛のおねむの時間が来たようだ。

みんなそれぞれの部屋に向かう。

おやすみなさい。

・・・

・・

時間は4時30分。

俺はいつも通り目覚める。

布団をたたんで、1階へ降りていく。

当然ながら俺の家族はまだ寝ている。


ばあちゃんのリビングへ移動しながらも、外の雰囲気がザワザワしていない。

やっぱりウルフのおかげか、静かなものだ。

「おはよう、ばあちゃん」

「ああ、おはよう」

ばあちゃんとじいちゃんは起きていた。

いつも通りお茶を飲ませてもらう。

ついでに味噌汁もいただいた。

「ふぅ・・やっぱり落ち着くね」

味噌汁を飲んでいると、優が起きてきていた。

「あれ? どうしたんだ、優・・」

俺が声をかける。

ばあちゃんも気づいた。

「おはよう」


優もきちんと挨拶は返せる。

「ん、おはよう」

「優、お前も食べるかい味噌汁? パパさんはもう食べたよ」

ばあちゃんが準備をしながら言った。

「じゃあ、いただきます」

優も普通に返事をする。

寝起きはいいな。


さて、食事も終わったな。

時間は5時くらいか。

「優そろそろ行くか?」

俺はそう聞いてみた。

優はうなずくと刀を背中に背負うようだ。

俺とは違うな。

・・・

背中に背負うほうが、かっこよく見えるな。


ばあちゃんとじいちゃんによろしく頼みますと言って出発。

ばあちゃんは、優に気をつけてなと念を押していた。

優が苦笑いをする。

まぁ、この年齢ってあまり構われると嫌だからな。

俺たちはそっと玄関を出る。

無論、嫁以下お義母さんも寝ている。


さて、俺と優なら3~40分もあれば神戸辺りまでは行けるだろう。

移動は高速道路だな。

俺は優をチラっとみながら軽く駆け出した。

優もゆっくりとついてくる。


「優、しんどくないか? あまり速そうなら、ペースを落とすが・・」

俺がそういうと、問題ないとサムズアップ。

淡路島を移動するが、ここはオノコロ辺りだな。

走りながら横を見た。

あの大きな鳥居は・・なくなっている。

・・・

すぐに明石大橋が見えてきた。

速度を緩めて、ゆっくりと渡って行く。

時間は5時30分。

橋を渡り、索敵をレベル20以上辺りに意識してみる。

・・・

ピ・・ピピピ・・・


結構いるな。

レベル21:オーガが4体いる。

海近くには、やはりレベルの高い魔物はいないようだ。

中心部へ行けば高いのがいるだろうが。

まぁ、今日は優のレベル上げだからな。

パーティには、俺にじいちゃんとばあちゃんを入れた。

颯は外した。


優はソロだ。

嫁たちはご近所さんとの兼ね合いもあるので、あまりにも上がっても困るからな。

それに、俺のために何かをしてくれたことなんてない奴だ。

既に命の危険な状態は脱しているはずだし・・なんで奴のために、ムカつく!

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