第87話 実際チートになったら、言葉がなくなったな


たった半日で、みんないろいろあったんだなと俺は思った。

さて、レベル上げの話で優の顔が明るくなってきた。

余程しんどい思いをしたのだろう。


ご近所さんはどうであれ、アニム王が転移してきた当時の脅威はなくなりつつある。

日常に近い状態とは言えないが、都市部に比べれば天国のようだ。

個人的な職やスキルに関する情報は、みんな出したがらない。

当然だろう。

だが、颯のテイマーの情報などは共有してもいいんじゃないかと思った。

ワーウルフをテイムしておくと、そのレベル以下の魔物の脅威が減る。

これは大きなメリットだろう。


家に犬を飼っている人などにテイマーの職が多いらしく、増えれば安心して睡眠がとれる。

テイマーって、レアじゃなかったっけ?

アニム王国ではペットの習慣はなかったのかもな。

俺はそんなことを思ってみた。


回復系の職業もある程度人数もいるようだ。

ただ、盗賊を選ぶ人が少ないみたいだが・・速度、結構おいしいんだけどな。

あ、そうか。

俺の職業をみんなに言ってなかったな。

まぁ、いいだろう。

そんなことをみんなと話し合いながら、今日は普通に食事が取れた。

まさか、あったかいものが食べれるとは思っていなかった。

そういえば、アイテムボックスに入れておくとあったかいままなのかな?

フトそんなことが俺の頭に浮かぶ。


暖かい食事、これはIHキッチンがじいちゃんの電気箱で使えるからだ。

これはありがたい。

そのうち、スーパーなどに提供しても・・いや、これはやめておいた方がいいな。

他の家では、魔法で火をおこしたりしているという。

問題ないだろう。


時間は19時を過ぎていた。

俺の家族は、お義母さんたちと一緒に2階へ移動。

ばあちゃんは食器の後片付けをしていた。

水道は無事みたいだな。

まぁ、いつ止まるかわからないが。


「ばあちゃん・・半日だったけど、本当にありがとう」

俺は正直にそう思った。

「どういたしまして」

ばあちゃんはそう言うと、お茶を机に置き、座る。

俺も一緒に頂いている。

「お前の会って来た、王様・・そんなにいい人だったのかい?」

ばあちゃんは覗き込むように俺を見た。

「うん。 そりゃもう・・」

「お前・・洗脳されてないよね?」


!!!


「ばあちゃん!!」

俺は一瞬カッとなったが、すぐに戻った。

ばあちゃんの言うことはもっともだ。

「ありがとう、ばあちゃん。 でも、大丈夫だよ。 そんなことはないから・・もし、おかしいと思ったら言ってくれ」

俺はそれだけを答える。

ばあちゃんの反応は、当然の反応だと思う。

俺が褒めちぎっていたからな。

じいちゃんはリビングでゴロンと横になっている。

いろいろ作っていたみたいだから、少し疲れたのかもな。


「そうそう、ばあちゃん。 優とね、明日レベル上げに行って来るよ。 半日くらいかかると思う」

「そうかい。 無理しないようにね・・」

そう会話を交わすと、俺は2階へ移動。

2階では、お義母さんが凛と遊んでくれていた。

凛の魔法を見ながら褒めまくっている。

嫁にテイマーの情報をご近所さんと共有したらどうかと言ってみた。

嫁もそれはいいかもということで、明日にでも知らせるということだ。


さて、優だな。

「優・・明日のレベル上げだが、俺が敵を弱らせるからとどめを頼む」

・・・

あれ?

さっきと違ってうれしそうじゃないな。

「おやじさん・・結局、レベルいくつになったの? 嘘はやめてくれよ」

なるほど・・そりゃ気になるよな。

優が真剣な顔できいてくる。


俺は迷ってしまった。

言っていいものやら。

しかし、嘘はつきたくない。

優に、人差し指でこっちに来てと合図をして、招き寄せた。

嫁たちはウルフ達と一緒にたわむれている。


「優・・お前とだけの秘密だ。 絶対、誰にも言うなよ。 ママにもだぞ!」

優は力強くうなずく。

「実はな・・レベル34になっている」

!!!

「な、なに・・」

優が急いで自分の口を塞ぐ。

言葉がでないようだ。

固まってしまった。

いつもなら、チート、チートというのに、実際にチートになったらダメだったみたいだ。

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