第86話 優、レベル上げに行こう!


俺も話したいことはいっぱいあるが、半日の経過をいろいろとまずは聞いてみた。

・・・

・・

なるほど、腹立たしさよりも不安の方が大きくなってきた。

ご近所さんが、レベル10前後になってきたという。

もう、ワーウルフ討伐もほとんど作業となりつつあるようだ。

後は、それぞれの家族のレベルを効率よく上げることが中心となってきているみたいだ。

なるほど、なるほど。

情報提供者の嫁などは、邪険にされることはないが、積極的に参加させてもらえないような雰囲気を作っているという。


優に至っては、初めはとても持ち上げてくれたが、そのうち学生にもしものことがあったらいけないとかで、ほとんど参加させてくれなくなったみたいだ。

風吹君と一緒に、ゴブリンやロンリーウルフの討伐ばかりだという。

・・・

結構しんどい思いをしたのだな、みんな。

たった半日なのに。

ご近所の連中なんて、もういいんじゃね?

俺にはそう思えてくる。


だが、みんなこれからどうするつもりなのだろう。

まぁレベルが上がれば人間を超えた感覚になる。

それは俺もわかる。

だが、そこで足下を見つめ直さなければ詰むだろう。

俺なんかが、あまり偉そうなことは言えないが。


俺は思う。

今までの社会ルールなんてどうでもいい・・とまではいかないが、人としての最低限のモラルだけは確保された社会でありたい。

それがあれば、どこで暮らしてもいい。

むしろ、こんな連中がいるような社会からは離れたい。

話を聞いていて、そう思えてくるようになった。

まぁ、それはそのうち解決していければいいだろう。


さて、こちらの報告もしなきゃ、というより強く伝えたい。

アニム王に会えたこと。

そして、何をしてきたのかということ。

途中の都市部の情報などもいろいろ伝えてみた。

・・・

・・

全員、信じられないといった感じだ。

そりゃそうだろう。

戦車を放り投げるオーガや人を石化させるバジリスクなんかもいる。

そして、それを一撃で仕留める王様。

まるでアニメかゲームの世界だ。

そして、今の地域の状況とも合わせてみると、俺の話が大げさすぎると思っているらしい。

まぁ、見て信じればいいが、死んだら終わりだ。

こんな状況だ。

情報は大きくとらえてちょうどいいくらいじゃないのか?

ただ、颯はゴーレムってテイムできるのかな? なんて前向きなことを言っていた。

ゴーレム、あまり出会いたくはないが。


あ!

思い出した。

じいちゃんに魔石とメイスを見せてみよう。

「じいちゃん、これ見てくれる?」

俺はそういって、アイテムボックスからバジリスクの魔石とトロウルのメイスと取り出した。


!!!!

みんなの注目を浴びた。

「「「「何? 今の?」」」」

・・・

「何にもないところから出たよ」

「テツ、何それ?」

「おやじさん!! それって、チートか!」

あ、そうか・・アイテムボックスね。

俺はアニム王のおかげでレベルが上がり、転職して運び屋になった時に取得できたスキルだと説明した。


「な、なに~?」

一番に飛びついてきたのは、優だった。

「転職って、レベル上がったのかよ、おやじさん!!」

俺は答えにくかった。

「うん、アニム王に手伝ってもらって・・経験値を稼がせてもらいました」

「うっわ! ずるいぞ~」

ごもっともです、優さん。

「ずるい~、パパずるい~」

凛、お前意味わかってないだろ。

颯は・・ゴーレムのことを考えているな。


嫁はお義母さんと何か話してるし、興味ないようだ。

ばあちゃんは、ニコニコして孫たちを見ている。

そんな状態の中、じいちゃんが声をかけてきた。

「テツ、これはワシには扱えないな。 持った瞬間に、何か違うって感じがあるぞ」

マジですか。

う~ん・・。

なるほど、レベル差だな。

「そうか、ありがとうじいちゃん。 まぁ、腐るものじゃないし俺がまた持ってるよ。 たぶん、じいちゃんのレベルが上がったら扱えるようになると思うから・・」

俺はそういうとアイテムボックスに魔石とメイスをしまった。

またしても、注目を浴びた。


消えた空間のところを凛が撫でていた。

さて、優に言わなきゃいけないことがあった。

レベルのことだ。

「優、明日の朝にでもレベル上げに行ってみるか?」

優の顔がパッと上がって目が生き生きと輝きだした。

「マジ? でも・・あ、そうか! 都市部へ行くんだね」

俺と優はニヤッと笑いあった。


後、この半日の間に、嫁と優はやや暇になってきたので、スーパーエイトに行ってきたみたいだ。

じいちゃんとばあちゃん以外、みんなで散歩がてら行ったようだ。

颯もウルフ、スライムと散歩だ。

スーパーエイトは営業できるようになっていたみたいで、電力は自家発電で行っているという。

ドラム缶に燃料もあるみたいで、1週間くらいは大丈夫のようだ。

店長さんはレベル6になったという。

優のことを覚えていたらしく、自分のレベルのことも教えてくれたとか。

職業もまさしく「商人」で、そのままじゃないか! と、思わず突っ込んだそうだ。


ご近所さんつながりで、みんなレベルが上がり移動範囲も広がって、俺らの家付近を中心に情報の共有化が広がっていってるみたいだな。

そういう安全面ではいいことだ。

都市部のような魔物が現れない限り、死ぬことも少なくなるだろう。

ただ、自分のレベル上げなどになると、みんな誰でも欲が出て来るのだろう。

俺だってそうだ。

俺の頭に少しの不安がよぎる。

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