第85話 ただいま~、そして報告


都市部には、やはりレベルの高い魔物が多い。

中心部へ行けば行くほど高くなるようだ。

だが、それもいつまでもないだろう。

人という単一魔素が薄まってくれば、いなくなるとアニム王が言っていたと思う。

災害クラスの魔物はほとんど出現しないはずだ。

なればこそ、存在している今はやはりチャンスだろう。

そう思うと、後で優と一緒に来ようと考えていた。

俺は足に力を入れ、帰路を急ぐ。


明石大橋を渡る。

朝、出会ったヒロキのチームのことなどは頭になかった。

そのうち記憶からも消えるだろう。

淡路島の移動は順調だった。

数分ほどで通過できた。

・・・

確か、今朝出てきたよな。

1週間はかからないと言ったが、3日どころか1日もかかってない。

半日だ!

この身体能力、アホだろう。

それに、レベルが信じられないくらいに上がり、優になんて言えばいいのか困ってしまう。


自宅前に到着。

家の玄関、いろいろな意味で開けるのが怖いな。

たった、半日なのに。

時間は17時05分頃だろう。

俺は思い切って玄関を開けた。

「ただいま~!」

家の奥の方で何やら声がする。

凛の声かな?

「・・パパ?」

「まさか・・おやじさん朝早く出て行ったんだろ?」

優の声もする。

俺は、ばあちゃんのリビングの方へ向かいながら、

「ただいま~」

と、もう1度言った。


!!

みんな驚いているようだ。

「あ、おかえり~。 早かったね」

ばあちゃん、普通だな。

「テツ、早かったね。 うわ、スラちゃんとウルフがおびえてるよ」

颯がヨシヨシと撫でていた。

「パパ、外から帰ったら手洗いとうがいでしょ」

凛から注意を受けた。

そうだった。

俺は言われるまま、手洗いとうがいをしてきた。


あれ?

嫁がいないぞ。

優に聞いてみると、討伐に参加しているみたいだ。

は?


「優は、参加してないのか?」

俺は何気なしに聞いてみた。

「子供には狩らせてもらえないんだよ。 それよりも早かったね。 1週間くらいかかるってばあちゃんから聞いてたけど・・」

優が少しムッとした顔をして答える。

俺はその一言でわかった。

なるほどな・・思っていた通りだな。

だが、心配するな。

俺がお前を英雄レベルにしてやる!!

「まぁ、いろいろとな。 それよりも優、レベル上げに・・」

そういうと、嫁が帰ってきた。

「ただいまぁ・・」

やけに疲れてる声だな。


嫁は俺を見ると、

「あれ? パパ、帰ってきてたの?」

・・・

え、それだけですか?

早すぎるとか、驚くとかそんな反応。

あるわけないですね、はい。


「うん、今帰ってきたところ。 何か疲れてる感じがするな・・」

俺が聞くと、嫁は面倒そうに答える。

「・・ふぅ・・こっちがこんなに疲れてるのに、パパは勝手に王様だか何だかに会いに行ってたんでしょ・・いい気なものね」

・・・

こ、こいつ!

俺は一瞬ピクッとなったが、すぐにやめた。


「こっちはねぇ、ご近所さんたちが強くなってきて、優のレベルも上げさせてもらえないのよ。 子供は危ないからとか、私も女の人だからとかで、なかなかねぇ・・」

嫁が愚痴る。

あれ?

俺、そのこと注意したよな?

言ったよね?

って、いつもこんな感じだったな。

俺の言うこと、まともに聞いてないんじゃないか、この嫁。

どうせ俺が共感してやってもすぐに忘れるだろうし。

まぁいい。


「そうか・・そりゃ、大変だったな。 優もよく辛抱したな」

俺はそれだけ言うと、ばあちゃんとじいちゃんに報告に行く。

嫁は、お義母さんに戦果を話していた。

「無事戻って何よりだね」

ばあちゃんがそういうと、じいちゃんも無言でうなずいてくれた。

ありがとう。


「で、会えたのかい。 その王様には?」

「うん。 とてもいい人だったよ」

俺はいろいろと報告をした。

・・・

・・

ばあちゃんは、そうかい、そうかいとうなずくだけだった。

だが、それが家に帰ってきたと感じさせてくれる。

ばあちゃんたちは、俺が無事帰ってきただけで十分のようだ。

嫁は違うようだが。

何にせよ、やっぱり家は落ち着くな。

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