どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ

第71話 お医者さん・・なのか？

俺はゆっくりと近寄ってみる。

「ヒッ！！」

驚かれてしまった。

身体を丸くしてうずくまっている。

「う・・人・・ですか？」

顔はよく見えないが、若い男の人の声のようだ。

俺は刀を納め声をかけた。

「大丈夫ですか？」

見ると、やはり若い感じがする。　

かなり疲れているようだ。

俺の言葉にホッとしたのか、涙を流していた。

「・・うぅうう・・・」

白衣を着ているが、お医者さんなのかな？

・・・・

・・・

お医者さんだったようだ。

聞けば、夜中の当直で交代する時間前に目が覚めたので、ゲームをしていたらしい。

その時にステータス画面に気づいたという。

澤田達也と名乗った。

澤田さんは、ステータス画面などを見ているうちに時間が来て、当直を交代。

異世界か？

そんなことを思っていると、救急搬送されてくる人がいる。

いつものように処置をしていた。

すると、運ばれてくる患者さんがどんどんと増えてくる。

処置していくうちに、頭の中で『経験値獲得しました』『レベルが上がりました』と鳴り響いたらしい。

いったい何が起きているのか？

寝ぼけているのかとも思ったが、現場の対応に追われてそれどころではない。

その原因を確認しようにも、あまりにも多くの人が運ばれてくる。

おかしいと思いつつも、処置しないわけにはいかない。

やっとトイレに行かせてもらった時に、ステータスをチェック。

まさか本当に異世界のようなことが起こっている。

だが、それをしっかりと確認する時間などはない。

パニックになるよりも、取りあえずは受け入れてみた。

そして、職業に回復職があったのでそれを選んでみたという。

異世界ものはよく知っていたので、本当に回復が使えるのかやってみると、確かに使える。

蘇生などは無理だが、傷も治るし回復もする。

これはまさに天職！

そう思って回復しまくったそうだ。

当然、ＭＰを使いすぎ倒れる寸前にもなったらしい。

回復した患者さんは病院から勝手に帰って行ったりもする。

だがそんなのに構っていられない。

待っている患者さんは山ほどいる。

そして、気が付けば病院の外（そと）に魔物が溢れていたという。

みんな大パニックになったそうだ。

もはや収集がつかない。

澤田さんもよくわからず、無我夢中で動いていたという。

魔物から逃げて、最後が屋上だったというわけだ。

回復系の自分に戦闘などできるはずもない。

夜もこの屋上で過ごしたみたいだ。

夜が明け、落ち着いたかなと思ったらオークが接近。

その時に俺が来たというわけだ。

何にせよ、運がよかったな。

俺は、淡路島の方から海伝いに来たと伝える。

また、海近くでは魔物との遭遇が少ないとも伝えた。

俺は先を急ぐので、気を付けてくださいねと一言。

決して冷たくないぞ！

澤田さんは様子を見て移動するという。

かなり疲れているようだが、俺を見て少し元気になった感じがする。

澤田さん、気をつけて。

レベルも８あるし、何とかなるだろう。

ならなければ・・それまでだな。

澤田さんと別れ、俺は高槻あたりからまた高速道路へと移動。

ひらパーが見えた。

名神高速へと移る。

途中、新名神に沿って移動。

家を出発して２時間くらいか。

もう名古屋のところまで来ているぞ。

凄い速さだな。

それよりも、ここまでは順調だったが・・やばいな。

ガーゴイル、オークはまだいい。

索敵しながら進んでいるといろんな魔物がいる。

オーガ：レベル２０、リザードマン：レベル２１って、ダメだろう。

俺のスキルで魔物には見つかりにくいようで助かっている。

高速を降りて、建物に隠れながら移動。

どうやら、魔物たちは索敵能力がそれほど高くないようだ。

ほとんど見つかることがない。

ただ、一気に動けないがのつらい。

ん？

あれは、マリオットホテルか？

そういえば、新婚旅行で泊まったが・・かなり壊れてるな。

！！

ガーゴイルか！

車の上で座っている。

ピピ・・。

レベル１５、１６。

２匹いる。

おっ、こっちにはオークか、レベル１７。

うわ、オークの後ろにオーガ、レベル２１。

見つかったら死ぬな。

こんなのがいたら、そりゃダメだろうな。

付近にいた人たちはおそらく全滅したんじゃないか？

俺は不安になった。

同時に地方に住んでいて良かったとも思った。