第70話 都市部はやっぱりひどいな


明石大橋がグングン遠ざかる。

ヒロキ達を倒して何か変化があっただろうか。

人を斬ったが魔物を斬るのと変わらない。

俺は意識して何も考えないようにしようと思ったわけではない。

また、変な感傷に浸ることもなかった。


いつも思っていたことだ。

アラフォーまで生きてきて、つくづく痛感している。

今までの社会システムは、正しいものが不利になる。

だが、その中で巻き込まれながら生きなければならない。


犯罪者に対しては、人権、人権と叫ぶ。

被害者にはその人権を略奪されたのに、誰も癒してくれるものもない。

刑罰も罪を償って・・などというが、どう償うというのだ。

はっきり言って処分してくれた方がいい。

悪人は好き放題、善人はルールの中で縛られる。

弁護士も言葉遊びじゃないか。

法の解釈の仕方でどうとでもなる。

悪・即・滅だろう。

昨日までは、それを実行できないようなシステムだった。

だからというわけではないが、あんな弱者をターゲットにしたようなヤンキーどもなど、どうでもいい。

・・・

余計なことを考えていたら、関西大学キャンパスが見えてきた。

かなりひどく壊れている。


もう俺の記憶からはヒロキ達ことなど薄れていっているようだった。

ただ、自分の行動には責任を持つ。

その行動が間違えていたのならば、人生のどこかで負債を返済する時がくる。

必ずだ。

それがどういった形で現れるかわからない。

だが、受け入れる覚悟が必要だ。

自分の行動に責任を持つとはそういうことだろう。

それは常に俺の中にあることだ。


さて、垂水JCTから布施畑方面を見るとガーゴイルが飛んでいた。

こちらは、ダメだな。

須磨方面、海の近くを通って来た。

吹田辺りだろうか・・壊滅と呼べるくらいに壊れていた。

高速を降り、淀川方向へゆっくりと向かってみる。

そういえば、ここは救命会病院があったな。

健(テツの弟)が入院した時にお世話になった病院だった。

あいつも家族を持ってから、めったに帰ってくることがなくなったからな。

大丈夫だろうか。


ん?

あれは・・。

ピ!

オーク:レベル16


俺は索敵を意識してみる。

周りには・・いないな。

病院の屋上で何やら叫んでいる。

俺は建物に隠れながらオークに近づいていく。

病院もめちゃくちゃだな。

オークはまだ屋上にいるようだ。

レベルが1つ上だが・・見に行ってみよう。

少し寄り道だ。


ササッと屋上まで上がる。

壁の影から観察をする。

気づかれてはいないようだ。

オークは何やら探しているみたいだ。

何やってるんだ?

しかし、こんな時に優のハンターなら、オークの弱点とか見えるんだろうな。

俺はそう思いつつも刀を抜く。

オーク以外、近くに敵はいない。


オークの後ろからそっと近づき、思いっきり突きを入れてみた。

「フン!」

ズブ!

刺さる・・よし!

そのまま連続で突きを繰り出した。


ドドドドド!!!!


オークがゆっくりと振り向いた。

!!

マジか! まだ動けるのか!

俺は内心焦りつつも、刀を下から斬り上げる。

ズバン!

オークの右手が飛ぶ。

刀をそのまま正面で構えてまた突きを繰り出した。


ドドドドド・・・!!!

オークの身体正面は、刀の穴だらけだ。

「こ、これでも・・だめなのか?」


ドーーーーーン!

オークはそのまま前に倒れ、しばらくして蒸発。

『経験値を獲得しました』

『レベルが上がりました』


ふう・・何とかやれたな。

最初の不意打ちが効いたようだ。

それにしても、なんでこんなところにオークがいたんだ?

おっとレベルを確認しないと。


テツ

レベル:16

種族 :人

HP :180/200 +10

MP :110/150 +10

力  :173     +15

防御 :145     +10

敏捷 :232     +15

技能 :138     +10

運  :66      +1

職業 :忍者8


固有スキル 

気配察知10

罠解除1

自動回復9

軽歩行7

忍術3

鑑定2


うん、確実に上がっているな。

これでまた優に怒られるかな?

俺はそんなことを思ってみた。


オークのいた後には赤い魔石が残っていた。

ステータス画面に吸い込ませる。

持っていてもよかったが、移動に邪魔になるだろうし自分よりもレベルが高かったからな。

でも、レベルが上がったし良かったよ。

結果オーライだ。

さて、行くか。

!!

屋上から飛び降りようとしたら、空調の室外機のところで何かが動いた気がした。

俺は即座に戦えるように身構える。

注意してその方向を見つめてみる。


ピ!

レベル8。

魔物・・じゃないようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る