第60話 ヒロキ:テツとの遭遇まで25時間前・・人の領域を超えたな


ヒロキはある仮説を立てていた。

こんなわけのわからない、ステータス画面なんかが見える世界になったんだ。

死体くらい消えても不思議じゃない。

だが、なぜ消えるのか。

経験値として変化しているんじゃないのかと。

つまり、物質の固体エネルギーが、俺の経験値としての数値エネルギーに変換されてるんじゃないかと考えていた。

あながち外れではない。

むしろ、正解に近い推察だ。


「う~ん・・わからへん。 経験値やから・・ちゃいますか~」

ユウジにはよくわからなかったので、適当に答えてみた。

ヒロキは少し驚いた。

まさか、ユウジが同じような答えを持っているとは思ってもいなかった。

「クックックック・・ユウジ、凄いなお前・・」

ユウジは背中に冷たいものを感じる。

すると、こちらへ向かって光が照らされた。

「ここで何をしとるんだ?」

警察官だ。

2人いる。


ヒロキは無言のまま家の中へ入って行った。

右手を見られたら弁解もできない。

「おい、ちょい待ちぃ! ここで猫が騒いどるからって通報があったんや。 おいこらぁ、ちょっ待て!!」

警察官はライトを照らしたまま近寄ってくる。

警棒を抜いたようだ。

「いや~、申し訳ないっすね。 俺らも猫の声がしたから、見に来ただけなんすよ」

ユウジが軽く頭に手を乗せてペコペコする。

・・・

警察官たちはお互いの顔を見合わせうなずく。

どうもうさんくさい。

応援を呼ぼうかとも考えたが、目の前の2人を逃がすわけにもいかない。

それに相手は2人だ。

こちらは剣道3段と2段。

棒を持っていたら負けるはずはないだろう。

警察官たちはそう考えていた。


特に中に入って行ったやつ・・右手に何か持っていたぞ。

警察官は一瞬だが見ていた。

確信はなかったが、あきらかに変な感じだ。

「おい、お前・・両手を頭の上にあげろ!」

警察官はそういうと警棒を構える。

「何でですか? 俺ら何もしてないっすよ~」

ユウジはそういうものの、両手を素直に上げた。

素直に従ったのが効果があったのか、警察官は少し警戒を緩めたようだ。

ユウジもわかっていた。

最初に抵抗するよりも、素直に従っておいた方がいい。

どうせ逃げるなら相手の警戒レベルを下げておくのに越したことはない。


一人の警察官がユウジを尋問する。

「俺はもう一人を見てくるわ。 こっちを頼むで」

そういうと剣道3段の警察官は中へと入って行った。


中に入ると変な違和感がある。 

妙に静かだ。

猫屋敷と聞いていた割には猫が1匹もいない。

最悪、猫の死体も覚悟したがそれすらも見当たらない。

ライトを照らして建物の中を確認していた。


!!

ん? 

胸に熱い感じがある・・何だ?

警察官には何が起こったのかわからない。

「クッ・・ハッ」

苦しい・・声が・・出せない。

そのまま首が掻き切られた。

バタフライナイフで心臓を刺され、そのまま首をやられたのだ。


『経験値を獲得しました』

『レベルが上がりました』


ヒロキの頭の中で天の声が響く。

ヒロキはその場でステータスを確認。

レベル5。

職業が住人から未設定へと変化している。

職業をタッチしてみた。

職業が選べるようだ。

戦士、魔法使い、盗賊。

3種類が表示されている。


ヒロキは迷わずに盗賊をタッチした。

まるで俺のためにあるような世界だな。

そう思わずにはいられなかった。

身体が少し軽くなったような感じがする。

ステータス画面を見ると、固有スキルというのがある。

忍び足1、暗視1と表示されていた。

忍び足ねぇ・・ヒロキは少し歩いてみた。

!!

音がしない・・これはいい!

しばらくすると、警察官は服を残して消えた。


ヒロキは上機嫌だった。

こんな暗い部屋なのによく見える。

固有スキルの恩恵なのだろう。

さっきまでは見えにくかったところがよく見える。

明かりがいらないようだ。

ヒロキは警察官の制服から拳銃を頂戴した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る