第59話 ヒロキ:テツとの遭遇まで26時間前・・「経験値獲得しました」って聞こえるぞ。


「ユウジ・・お前、受け入れたのか? 早いな・・」

ヒロキは少し驚いていた。

「そやけど、こうなってしもたもんはしゃーないっしょ。 俺のレベルは・・2っすか、なんやこれ、低っくいなぁ。 ありゃ、比較がでけへんからわからないっすね。 ヒロキはんはレベルなんぼだったんすか?」

「俺、レベル4ってなってるぞ」

ヒロキの返答にユウジは興味深そうに見つめる。

「ほんまっすか? 俺と2つも違いますね~。 それって、チートっていうっすよ」

ユウジの口調は軽い。


「で、ユウジ・・これって、どうしたらいいんだ?」

ヒロキはやや戸惑っていた。

「そうっすね~・・定番はレベル上げっすね」

「レベルを上げるのか? だが、どうやって・・」

「う~ん・・ゲームやと魔物を倒したりして経験値を集めてレベルを上げるんですが・・ここって地球っしょ、う~ん・・」

ユウジは両手を頭の後ろで組み、上を向いて考えているようだった。


ヒロキは理解し始めた。

「ユウジ・・というこは、自分以外の何かを倒せば経験値が手に入って、レベルが上がるんだな?」

「・・たぶん、そうやと思います。 ヒロキはん、さすがに理解早いっすね」

ユウジは感心していた。


ヒロキは自分が体感するもので経験値が得られるだろうと推測を立てた。

ユウジの話では魔物を倒すと経験値を得られるという。

生き物が対象なのか?

まずは目の前のコーヒーカップを割ってみる。


ガチャーン!

!!

すぐに店員が駆け寄ってきた。

「お客様、大丈夫ですか?」

「あ、すみません、手が滑ってしまって・・申し訳ない」

「いえ、お怪我がなくて何よりです」

店員はそういうと、失礼しますと割れたカップを片づけて机を拭いてくれた。


ユウジは少し驚いたようだった。

「・・ヒロキはん、何やってるんですか?」

「あぁ、自分以外の対象物なら経験値が手に入るのかと思ってな・・カップではダメみたいだな」

ヒロキは笑いながら言う。

ユウジは笑えなかった。

この人は思ったら即実行する。

いつものことだが、怖いとさえ思う反面さすがだなとも思う。

「ヒロキはん・・多分、生き物か何かやないとアカンと思いますよ。 それもある程度強うないと・・あ、でもスライムとかは強うないっすねぇ・・スライムいるのかな?」

ユウジがつぶやいている。

なるほど・・生き物か。

ヒロキはある場所が頭に浮かんだ。


時間はまだ真夜中だ。

あの家・・通称、猫屋敷。

空き家になってから野良猫が住み着いていた場所がある。

ヒロキは、そこへ行ってみようと考えた。

そして、即座に行動に移っていく。

思ったら実行したくなる。

迷いなどはない。


「ありがとうございました~!」


ヒロキはファミレスの会計を済ませて猫屋敷へ向かった。

ユウジも付いてくるという。

ユウジはヒロキがどうなるのか興味があった。

「ヒロキはん、大丈夫っすか? あの猫屋敷へ行かはるんでしょ。 猫、騒がないっすかねぇ」

ユウジには少し不安があった。

ヒロキなら何の迷いもなく猫を殺すんじゃないのか。

ユウジは、生き物をそんなに簡単にあやめられない。

だが、ヒロキはそういったタガが外れているのだろうか。

不安そうな目でヒロキを見ていた。

「あぁ、問題ないよ。 ユウジは家の前で人が来たら教えてくれ」

ヒロキは言う。

「了解っす・・」

後は会話もなく猫屋敷に向かう。

ユウジは段々と暗い階段を下りて行く感じがしていた。


猫屋敷に到着。

草の手入れもできてない荒れ放題の家だ。

窓も割れている。

幽霊でも出そうな雰囲気だが、ヒロキは迷わずに入って行く。

ユウジは入り口で待機。

すぐに猫の騒ぐ音が聞こえた。

ニャー、ニャー・・と言っていたのが、すぐに静かになった。


ヒロキが入り口に現れた。

右手はバタフライナイフとともに血まみれだった。

ユウジは無意識に1歩下がってしまった。

「・・ヒ、ロキはん、どうだったっすか・・」

・・・

ヒロキは無表情に近かった。

「あぁ、猫を最初1匹倒したら、経験値を獲得しましたって頭の中で声が聞こえたんだ。 後はそれの繰り返しだな。 でさぁ、猫なんだが・・死体が残らないんだ。 消えるんだよ・・」

ユウジは何を言ってるのかわからなかった。

「・・消えるって、死体がっすか?」

「あぁ、死んでしばらくしたら蒸発するんだ・・なんでだろうな?」

ヒロキが遠くを見ているような目で言う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る