第24話 世界各地で同じようなことが起こっているようだ
テツがステータス画面に気づく5時間くらい前。
そして、アニム王が転移してきて1時間くらい経過した頃。
◇◇
<北米ニューヨーク>
パトカーのサイレンが鳴りやむことのない街。
またもや銃での事件が発生したようだ。
赤色灯を回転させながらパトカーが疾走する。
「こちら6号車。 すぐに現場へ向かいます」
近くを巡回していたパトカーが応答した。
無線で連絡を受け、銃が発砲された場所へ向かう。
確かこの場所はタイムズスクエアの前だったよな・・そう思いつつ現場へ急ぐ。
無線で連絡を受けた警察官が車を加速しようとするが、景色が止まって見える。
アクセルを踏み込むもエンジン音だけが大きく聞こえる。
ブゥゥウウン!!
ん?
なんだ・・スリップ?
!!
パトカーを運転していた警察官は、急に変な浮遊感を感じた。
周りの景色がグングン下へと移動する。
みるみる上空へ運ばれているようだ。
警察官は運転席から目線をあちこちへ移動させる。
道路が遠ざかって行く。
ビルの屋上が目線の下へと移動する。
??
何が起こってるんだ?
わかるはずもない。
車の窓からどうにか、身体を少しのり出して辺りを見渡した。
!!!
完全に空中にいた。
それも街が小さく見えるほど高く。
な、なんだ?
警察官は驚きつつも辺りを見渡す。
そして、パトカーの上へと目線を移動して言葉を失った。
!!
羽の生えた、頭に角がある人とも悪魔とも見える灰色の生き物が車を持ち上げていた。
車よりも大きい。
「う、うわぁぁぁぁぁああ」
警察官は叫ぶと同時に、訓練された動きだろう。
ホルスターから拳銃を抜き、その灰色の生き物に向かって発砲した。
パン!
パン、パン、パン・・・カチ、カチ、カチ!
・・・
灰色の生き物は気にするでもなく、窓から出てきた男を見て興味を失ったようだ。
パッと車を放した。
そのまま車は重力に引かれて落下していく。
高さは、4~500メートルくらいはあっただろうか。
ヒュー・・・・ボン!
車は地上で炎を上げて爆発。
灰色の生き物はそれを見て喜んだようだ。
「ギェー、ギェー・・・」
灰色の生き物はガーゴイル。
レベル18。
ガーゴイルはまた地上へ向かい車を持ち上げては落とす。
遊んでいるようだった。
地上ではその異変に人々が気づき始めた。
パニックの発生だ。
人の塊が悲鳴とともに右へ左へと移動を始めた。
お昼時間の大都市に、あちこちで車が空から降ってくる。
地上に落ちては爆発する。
爆発は広がる一方だ。
人の悲鳴と爆発音が終わることなくこだまする。
ニューヨークでの発砲事件から10分経過。
ホワイトハウスに第一報が入った。
素早い対応だ。
大統領補佐官は、遠慮なく大統領へと連絡を入れる。
「・・何かね、補佐官。 今から昼食なのだがね」
大統領は会議の後、一人でコーヒーを飲んでいた。
1コールで電話に出た大統領は落ち着いて
「で、何が起こったのかね」
昼休みの時間、しかも携帯にかけてくるとは通常ではないだろう。
1コールの呼び出しに出るまでに理解していた。
「大統領、ニューヨークでテロが発生したようです」
補佐官は事実だけを簡潔に伝えた。
大統領はすぐさまコーヒーを置き、立ち上がる。
慌てずに、そして静かに指令室へと向かった。
しばらくして補佐官と合流し、情報を得る。
詳細はわからないが、大規模なテロ活動が行われているという。
「・・まさか大都市の中心部で・・事前に兆候はつかめなかったのかね」
大統領は補佐官に詰め寄る。
「わからなかったようです。 突然に行われたようでして・・」
補佐官は恐縮している。
大統領の頭の中には、次の補佐官の顔が浮かんでいた。
無駄なやり取りはしたくない。
部屋の中では皆が情報を集めるのに忙しかった。
随時、新しい情報が送られてくる。
1人のオペレーターが大統領のもとへ紙を持参した。
大統領と補佐官はそれを見ると、顔を見合わせ言葉を失った。
紙に写っていたのは、車を持ち上げているガーゴイルの姿があった。
「・・映画の撮影じゃないのか・・」
大統領はつぶやく。
そう思うしかないだろう。
しばらくすると各部署の電源が落ちていくのが観測される。
ホワイトハウスは自家発電システムが完備されているから機能するが、連絡を送ってくる場所がダウンし始めているようだ。
当然、入ってくる情報も限られてくる。
・・・・
「・・一体、何が起こっているのだ?」
そこには仁王立ちになった大統領の姿があった。
だが、さすがに大国の代表だけはある。
次の行動が早い。
「軍の出動を要請せよ」
それだけを言った。
トップたるもの、余計な言葉はいらない。
後は各指揮官が判断し行えばよい。
結果を待つだけだ。
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