第10話 俺って、強くなってきてるのか?



距離は・・400メートルくらいはあるだろうか。

ワーウルフが俺の時と同じように耳を立てて辺りを探っている。

その動きがピタッと止まった。

優の方を見ると、即座に移動に入る。

!!

この距離でわかるのか?

俺は急いで優に声をかける。

「優!! 見つかったぞ! 俺の近くに来い!!」


ワーウルフはすぐに来た。

だが、一定の距離で立ち止まる。

そして、俺の時と同じで俺たちを中心にゆっくりと円を描いている。

品定めでもしてるかのようだ。

いや、ゲームキャラのように同じ行動しかとれないのかもしれない。

この状況にリセットはない。

俺は自分に言い聞かせた。

そして、さっきとは違う。

こちらのレベルも上がっているし、ワーウルフ、お前と同じレベルだ。


少しにらみ合いが続いていたが、ワーウルフがグルル・・と唸って体勢を低くした。

俺は即座に優に叫ぶ。

「吠えるぞ! 耳を塞げ!!」


「ワァオオオオォオオオオオオオン!!!」


やはりビリビリと身体が震える。

ワーウルフを見ながら優に大丈夫かと声をかけたが返事がない。

急いで振り返る。 

優が硬直していた。

意識はあるようだが、声も出せないし動けないようだ。

ワーウルフは俺が後ろを振り向いたのを見て、やはり戸惑ったように見える。

なるほど・・ワーウルフの咆哮はスタン効果があるのだろう。

俺にはあまり効果がないようだが、何かのスキルの恩恵かもしれない。

だが、今はそんなことはどうでもいい。


倒す!


俺は優をチラっと見て、ワーウルフのところへ一気に加速。

俺の移動速度がかなり速い。

そのまま右手に握った包丁で、居合の刀を抜くように斬りかかる。

ワーウルフはバックステップし、直撃を避けるも包丁の先の部分がきれいに当たっていたようだ。

右胴体を長く傷つけることができた。

かなりのアドバンテージだろう。

俺はそのまま右足で地面を蹴りつける。

ワーウルフへ向けてグンッとさらに距離を詰めた。

そのまま包丁を突き出す。

ワーウルフの胴体をかすめるが、前足を出しながら噛みついてきた。

チッ!

なかなか直撃しないな。

ワーウルフの前足をかわしつつ、今度は下から上へ包丁を薙いだ。

!!

ざっくりと手ごたえがある。


俺は迷わずに突きの連撃を繰り出す

ドドドドドド・・・!!

こちらも必死だ。

「オラオラァ!」

はぁ、はぁ、はぁ・・ふぅ。

・・・

気が付けば、ワーウルフはその場でピクピクしていた。


動けないその姿を見下ろして、俺はそのまま止めをさす。

しばらくしてワーウルフは蒸発する。

『レベルが上がりました』

天の声が聞こえた。

ワーウルフの後には青い石が残っている。

石を拾うとすぐに優の方をみた。

スタンの効果がまだ続いているようだ。

俺は近寄り、優の背中などを軽く叩いてやると動けるようになった。

「ぷはぁ・・びっくりしたぁ。 いきなり動けなくなったし声も出なかったよ。 はぁ、はぁ・・」

優はかなり疲れている感じがする。


俺は優を見ながら言う。

「ワーウルフの咆哮は相手を麻痺させるような・・スタン効果があるみたいだな」

「でも、おやじさんは動いてたよな・・それもスキルかぁ・・チートやな、やっぱり」

優は少し悔しそうな感じだが、生き残ることができたし結果オーライだろう。

「優、レベル上がったんじゃないか? 家の連中も上がってるといいんだが・・経験値はきちんと割り振られているかな?」

俺は少し不安になりながらつぶやく。


そういえば、俺もレベル上がったよな。

と、その前に索敵だ。

・・・

よし、魔物はひっかからないな。

ステータスを確認しよう。


テツ

レベル:9

種族 :人

HP :85/110 +10

MP :40/65  +5

力  :83     +5

防御 :65     +5

敏捷 :107    +10

技能 :68     +5

運  :62     +1

職業 :盗賊10


固有スキル 

探索6

忍び足6

気配察知7

罠解除1

杖術5

体術5

自動回復4


あまり増えてないな。

そうか!

もしかして、ドロップした石を取り込ませてないからか?

全部、優に渡してしまったしな・・おっと、この青い石はもらっておこう。

スッとステータス画面に吸い込ませた。

ん?

盗賊レベルが10になっている。

ステータス画面に上位職への転職が可能と表示されていた。

そっと触れてみる。


「大盗賊」

「運び屋」

「忍者」

3つの職が表示されてる。

!!

忍者だと!

俺は驚きつつもワクワクしていた。

・・

お・・や・・

お・じさ・・

「おやじさん!」

優が呼んでいた。

「何回も呼んでるのに・・俺、レベル5になっているよ」

優がニヤッとしながら言う。

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