第8話 ちょっと余裕が・・これってダメだよな。



さて、軽く食事をしたら優と俺とで外へ出てみようかと考えている。

俺のレベルが今のところ高いから、俺がバンバン倒すと、その経験値がみんなに入る計算だ。

そうすればみんなすぐにレベルアップできるはずだ。

相変わらずばあちゃんだけは心配してくれる。

ありがとう母さん、心配してくれて。


さて、改めて考えてみる。

世界の常識、いやシステムが変わってしまったとしか思えない。

信じる信じないは勝手だが、今起きていることは事実だ。

肌で感じる感触、それはリアルだった。

ならば、疑うよりも行動だ。

そして、その中でできることを考えないといけないと思う。

「そういえば、パーティの経験値の割り振りってどうなるのだろう」

俺がブツブツつぶやいていると、ばあちゃんがラジオを持ってきた。

「電池が古いけど、使えると思うよ」

ばあちゃんがスイッチをオンにしてラジオをつける。


『・・といった具合に、建物の外には見たことのない動物があふれています。 くれぐれも外に出ないようにしてください。 繰り返します、今、建物の外では見たことのない動物があふれています。住民の皆さんは建物から出ないようにしてください・・・』


俺は、プチッとラジオを切った。

「え? どうして切るんだい」

ばあちゃんが不安そうな顔で俺を見る。

「いや、どうせ聞いても無駄だろうから・・それにこれで確定した。 やっぱり昨日とは変わってしまったんだ」

俺はそう言ったが、ばぁちゃんはやはりラジオはつけてままにしておこうという。

何か音がないと不安なのかもしれない。

余計、不安になるぞ。


パーティ編成は終わったが、経験値の割り振りとかの設定ができないところをみると、自動的に割り振られるのだろう。

そう思おう。

俺はみんなを見渡して言う。

「早速だが優、俺と一緒に外に出るぞ」

ばあちゃんが驚いたような顔をする。

「今、ラジオで外へ出るなって言ってたでしょ。 危ないよ」

「いや、それはわかってるよ、ばあちゃん。 でも、今のうちに強くなっておかなきゃ、きっと後で取り返しのつかないことになる。 今の状況、多分この中で俺が一番把握できていると思う」

俺ははっきりと言い切った。

ここでいつもなら嫁が何か文句を言ってくるはずだが、状況が状況だ。

思い浮かぶ言葉もないのだろう。


!!

「そうだ! ばあちゃん、これを見てくれ」

俺はそう言って軽く移動をしてみた。

言葉よりも見た方が早い。


!!!


俺の身体能力は考えれないくらい上がっている。

瞬間移動したように感じただろう。

全員声も出ないようだ。

衝撃だろうな。 

だが正解だったようだ。

リアルでこんな動きをする人間をみたことないはずだ。

俺は5歩ほど速く歩いただけだったのだが。


「これでわかっただろ。 レベルを上げるとこうなる。 今までの常識が変わってしまったんだ。 たった1日で」

「マジかよ・・」

「消えたよね?」

「・・・」

優や颯がつぶやくが、嫁たちは言葉が見当たらないようだ。


俺はお茶を一口飲んだ。

「取りあえず俺と優で外へ出るよ。 俺がいれば今のところ大体安全だと思う。 俺のスキルに半径500メートルくらいの敵を把握できるものがある。 だから、周りに何がいるのかわかる。 レベルが上がればみんなそんな能力ができると思うよ」

俺の話をみんな静かに聞いてくれている。

やはりさっき動いたのが良かったようだ。

「それに、すぐにレベル5以上になれると思う。 自分より上のレベルの経験値が入るんだから。 多分、レベル10くらいになると少しは安全だと思う。 何となくだけどそう思う」

俺は皆を見渡す。

おそらくワーウルフ以上のレベルになればいいんじゃないか。

そんな風に思う。


ラジオは外へ出るなの繰り返しだ。

魔物を狩らないとジリ貧だぞ。

というか、ステータス画面すらわからないか。

みんな何をしていいのかわからないのだろうな。

とりあえず、低レベルの魔物がいる間に狩れるだけ狩ろうと思う。


「じゃ優、行こう。 じいちゃん、こっちは頼みます」

じいちゃんはゆっくりとうなずいてくれた。

俺は玄関に置いておいた棒を持つ。

優は出刃包丁だ。

じいちゃんは少し耳が遠いが、寡黙かもくな人だと改めて思う。

それが安心感につながるな。


そっと玄関を開けて、外に出てみる。

時間は7時5分になっていた。

もう完全に朝だ。

サイレンも聞こえない。

車が走ってるのが見える。

大丈夫か?

人のことはまぁいい。

さて、索敵してみる。

・・

なるほど、俺から300メートルくらいのところにロンリーウルフが引っかかる。

レベルは3。

さっきのパターン通りだと、ワーウルフを中心にゴブリン25体、ロンリーウルフ5体ほどの部隊で動いているんじゃないかと想像する。


レベル3か。

優たちのレベルでは戦えなかったな。

しかし、魔物って連続して出てくるんだな。

どうやって発生してるんだ?

そう思いつつも、優に魔物がいることを伝える。

「優、300メートルくらい離れたところにロンリーウルフという魔物がいる。 レベル3だ」

俺がそう言うと、優の顔が少し緊張したような表情になる。

「レベル3・・僕よりも上だ。 勝てないよ」

優が不安そうな顔で俺を見る。

「あ、そうだ、優。 この棒を持ってろ。 包丁は俺が持つよ。 いきなり魔物を刺せといっても、刺せないだろう」

優は少し考えていたようだが素直に交換してきた。

俺は何か変な余裕が出てきた感じがしていた。


「優、レベルが上っていうけど、俺レベル8だぞ」

俺がニヤッとして言葉を出すと一気に優の顔が明るくなった。

「俺がギリギリまでやって、とどめを優にやってもらおうと思うけど、大丈夫そうか?」

優は返事をせずに引きつったような顔をしている。

そりゃ、そうだよな。

昨日まで普通に中学校へ行っていたんだ。

いきなり魔物を狩るなんてできないだろう。

「優、無理しなくていいからな。 まぁ、俺が倒しても経験値はパーティに入るだろうし・・たぶん」

俺の言葉に少し緊張が解けたようだ。


さて、近づいてみるか。

30メートルくらいまで近づくと、ロンリーウルフに気づかれた。

??

そうか、優は忍び足のスキルなんか持ってないからな。

ロンリーウルフが加速しながら近づいてくる。

優を見つけると速攻で襲い掛かってきた。

優は固まったままだ。

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