第6話 そりゃ、受け入れれるわきゃないよな
家族を起こそう。
時間は6時15分。
「おーい、朝だぞ・・ってか、大変なことが起こってるぞ」
子どもたちの目覚めはいい。
「・・パパ? おはよう」
凛(小1:娘)が一番に挨拶をする。
颯(小4:次男)もスッと起き上がった。
優(中3:長男)は自分の部屋で寝ている。
嫁はもぞもぞしながらこちらを見る。
「・・え? 何? 何時?」
面倒臭そうに目を開けて、枕元の携帯をチェック。
「・・え? まだ6時じゃない。 ったく、何なのよ・・」
ブツブツ言いながらまた布団を
俺はその場で嫁を蹴飛ばしてやろうかと思ったが、とりあえず声を掛けて回る。
「大変なことが起こっている。 とりあえず起きてきてくれ」
俺は先にリビングで待っていた。
そうだ!
みんなが起きてくるまでに、さっきのワーウルフの青い石をステータス画面に取り込ませよう。
ステータス画面を見る。
HP、MPは自動回復だろうか、少しずつ回復してきている。
MPって、魔法は使ってないはずだが減っているな。
スキルに使っているのかな?
ステータス画面に青い石を近づけてみる。
スッと画面に吸い込まれるようにして消えた。
・・・
特に変化はない。
残念・・と思ってるうちにみんなが起きてきた。
「起きてきたか」
みんながぞろぞろ入って来る方を向いて俺が言う。
「おやじさん、大変なことって地震でも起きたのか?」
優が最初に起きてきた。
「そんな大変な地震だったら、寝てないだろ」
俺は即座に突っ込んだ。
長男の優は、俺のことをおやじさんと呼ぶ。
さて、どうやって現状を伝えるか。
説明してもわからないだろう。
俺は少し悩んだが、決めた。
まずは論より証拠。
「みんなステータスオープンと言ってみろ」
俺はみんなに言ってみた。
「は? いきなり何言ってんの? 痛すぎるだろ」
優・・嫁に似てきたな。
ただ、俺の雰囲気が冗談を言うような感じではなかったのだろう。
みんな素直に従ってくれた。
嫁は、え? 何? という感じで聞き直してくる。
サッサとしろ!
優と颯は同じように驚いていた。
優:「うわ! なにこれ?」
颯:「うん、変な画面が見える・・あ、名前がある」
優:「レベルもあるな」
颯:「兄ちゃんレベルは?」
興味深々で会話をしていた。
何か楽しそうだ。
そして、一気に目が覚めたようだ。
凛もすぐに慣れたらしい。
「わたしもみえる。 なにこれ~」
嫁は親と同じ反応だ。
「うわ、なにこれ? びっくりした。 なにこれ・・」
そうつぶやきながらウロウロしている。
そりゃ、そうなるよな。
さて、どこから説明したものか・・っていうか、俺もよくわかっていない。
「・・何というか、夢じゃなければ、世界が変わったとしかいいようがない」
俺はそう言って続ける。
「これは、ラノベや異世界ものでよくあるステータス画面みたいだ」
みんなが俺に注目している。
「簡単に言えば、みんなが同じ夢を見ているか、ゲームのような世界になったかどちらかだな。 まぁ、ほぼ100%の確率で後者だと思うが」
一度みんなを見渡して続ける。
「俺もよくわからんが、とにかく自分の状態がその画面に現れる。 そして、外には魔物がいる」
みんな一瞬、ビクッとしたようだ。
「魔物?」
颯がつぶやく。
「そう、魔物だ。 なんで知っているかというと、俺が少し外の様子をみてきたからだ。 そして、とにかく外へ行くと死ぬ可能性がある」
それだけは言っておかねばならない。
俺は話を続ける。
「じいちゃんとはあちゃんにも言ったが、雨戸を閉めてもらって外へ出ないようにしてもらっている」
何が起こってるか理解できないだろうな。
俺だってそうだ。
「テツ、VRゲームなのかな?」
颯が少し目をキラキラさせながら
次男の颯は俺のことをテツと呼ぶ。
「ゲームじゃないな・・っていうか、VRゲームだったら顔につける装置がいるだろう。 とにかく、今俺が考えれることを言うよ」
一呼吸おいて俺が思っていることを言ってみた。
「自然界の条件が変わったとしか言いようがない。 死ねば終わりのゲームのような世界になったようだ。 それも知らない間にどこかのタイミングでだ。 無論、学校とかはないだろう。 外へ出れば死ぬかもしれない。 でも、この状況を受け入れないと始まらない。 まずは、みんなが死なないようにしたい」
みんな放心状態のようだ。
そりゃそうだろう。
わかるはずがないし、理解できるはずもない。
だが、現実に起きている。
とにかく手探りながらも動き出さないと始まらない。
「着替えたら、みんなばぁちゃんのところへ行って、これからのことを話し合おう」
俺はみんなを見渡して言う。
嫁は何が何だかわからないといった感じだが、とりあえずみんな着替えに行ったようだ。
俺は内心、少し余裕ができていた。
先程の戦闘をくぐり抜けたおかげだろうか。
この状況が少しうれしくなってくる感覚がある。
皆が着替えてくる間に俺は少し考えてみた。
世界が変わってしまった。
自分の状態をレベル表示するシステムが存在している。
世界中で起きているのだろうか?
わからない。
わからないことはとりあえず放置だ。
だが、現状に対応しないといけない。
レベルによる世界か・・ある意味、努力すれば成長を感じられる、公平なシステムだよな?
ただ、レベルがゲームのようなシステムだとすると、それは悪人でも力を持つことを意味する。
そして、悪人こそそういった能力に順応しやすいだろう。
とはいえ、まずはこの状況がどこまで発生してるかだが。
全地球規模で起こっているのなら、もうかなりの人数がいなくなったんじゃないか?
適応できないだろう・・いや、わからない。
・・・
そんなことを考えていたら、呼ぶ声が聞こえてくる。
「・・パ・・パ、パパ!」
「・・お、おぉ、何だ?」
俺は頭をあげて凛を見る。
「いや、おやじさん! さっきからみんなで呼んでたよ」
優に注意を受ける。
「そ、そうか、悪かった。 じゃあ、下へ行こうか」
集中し過ぎていたようだ。
みんなで階段を降りて行く。
じいちゃんとばあちゃん、子供たちは食卓へ座り、嫁は横のソファーへ腰を下ろす。
朝日も昇ってきたのか、雨戸を閉めていても台所の窓などから光が入ってきている。
結構明るい。
俺は立ったままで話し出す。
ばあちゃんがお茶を
「どう話していいかわからないが、簡単に言えばゲームの世界のような感じになっていると思う」
俺もどう話していいのかわからない。
「おやじさん、何をいいたいのかわからんが・・」
優からの突っ込みだ。
そりゃもっともです、俺だってわからん。
「・・そうだな、俺にもよくわからん。 だが、外に出てみたら人でないものが歩いていた。 そんでもって近寄ってみたら襲ってきた。 まぁ、俺がやっつけたが、そうしたらレベルが上がった。 ステータス画面を見ると自分の状態が変化していた。 とにかくほんとにゲームみたいになっていた」
と、起きたことを箇条書きのように俺は言ってみた。
「おやじさん、外へ出たのかよ」
優が聞いてくる。
「うん・・で、だ。 何がいいたいのかというと、とにかくみんなが死なないようにしたい。 それにはレベルを上げて強くなる。 レベルを上げれば生き延びる確率が上がる・・と思う」
俺はそう言ってみる。
「思うって・・」
優がつぶやく。
ばぁちゃんが「レベルってなんだい」と言う。
そこからか・・俺は自分の頭を撫でる。
「ゲームでいうところの強さだな」
俺がそう言うと、ばあちゃんが真剣な顔で言う。
「ゲームかい?」
「そう、それが現実になった感じだな」
「そうかい。 じゃあ警察とかに連絡しなくていいのかい?」
ばぁちゃん、あのね・・。
「いや母さん、警察とかはたぶん役に立たないと思う。 昨日とは全く違う世界になっているから」
俺は困った感じで説明する。
受け入れられるはずもないだろうし、RPGゲームなんてやったこともないだろう。
「さっき外でサイレンが鳴ってたりしてたけど、今は静かになっている。 もしかしたら、今からもっとサイレンが鳴りっぱなしになるかもしれないし、鳴らないかもしれない」
「どういうことだい?」
ばあちゃんが不安そうにこちらを見る。
「警察の力とかは、たぶん・・役に立たないんじゃないかと思う。 相手が人間じゃないからね」
俺の説明にばあちゃんはうなっていた。
「人間じゃない? う~ん・・」
ばあちゃんは同年代の人よりも柔軟な思考を持っているのは間違いない。
でも、いきなりだからな。
さて、話題を切りかえよう。
「まぁ、普通はわけわからんよな。 でも、みんなステータス画面を開いて確認してみて。 そんでもってこれからのことを決めよう。 ちなみに、外の魔物はLv2~8はあったぞ」
俺がそう言うと、みんながそれぞれステータス画面を見ている。
長男(14):
次男(9):
長女(6):
嫁(35) :
じぃじ(71):
ばぁば(71):
自分以外のステータス画面は直接は見えない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます