第5話 ゲームのような世界だな



家の外に出て1時間ほどが経過。

かなり疲れたような気がする。

まさか、これほど暴れまわることになるとは思わなかった。

ただあのロンリーウルフを倒そうと思っただけだったのだが。

何にせよ、生き延びれた。

よかった、本当に良かった。

家に帰ろう。


いや、油断禁物だ。

まずは周囲を索敵しないと。

俺は頭の中でマップのようなものを感じてみる・・魔物の気配はない。

今のところ自分を中心に500メートルくらいの範囲を感じれるようだ。

そして、ステータスチェック。


テツ

レベル:8

種族 :人

HP :65/100 +10

MP :30/60  +10

力  :78     +10

防御 :60     +5

敏捷 :97     +10

技能 :63     +5

運  :61     +1

職業 :盗賊9


固有スキル 

探索5

忍び足5

気配察知6

罠解除1

杖術5

体術4

自動回復3


運って、なかなか上がらないんだな。

そういえば、遠くでパトカーや救急車のサイレンの音が聞こえる。

ここと同じようなことが起きているのだろうか。


無事、家の前まで到着。

家の扉をそっと開け中に入り、カギをかけて2階のリビングに戻る。

・・・

まだ誰も起きていない。

こちらは日常か。


手洗い、うがいをする。

リビングへ戻り、冷蔵庫を開けてペットボトルに入ってる水を滝飲みする。

ゴクゴク・・ふぅ、おいしい。

俺はフト考えてみた。

冷蔵庫の中身もそのうちダメになるだろう。

電源の確保・・って、クーラーホックスなんかに入れなきゃダメかな?

ま、後で考えよう。


俺の家は2世帯で住んでいる。

1階には俺の親、2階に俺の家族が住んでいる。

俺は一息つき、1階へ降りて行ってみる。

この時間なら親は起きている。

さて、今起こったことを説明しても、こんなラノベの状況など信じてもらえないだろう。

理解できないんじゃないか。

70歳も過ぎてるし・・歳は関係ないか。


母親が台所で朝の片づけをしていた。

「おはようさん」

俺が先に挨拶をする。

「おはよう。さっき、犬の大きな叫び声が聞こえたよ」

母は返事をしながら何事かと思ったようだが、怖いので外を見るのはやめたようだ。


ワーウルフの叫び声だな。

俺はそう思いながら母に話す。

「母さん、あのさ・・今、外がとても危険なことになっているみたいなんだ」

洗いものの手を休めてこちらを見てきた。

「はぁ? 危険なことってなんだい」

母は何を言っているんだという顔で俺を見る。

どう説明したものか。

・・・

そうだ!

論より証拠。

「母さん、ステータスオープンって言ってみて」

俺がそういうと、母はやや面倒くさそうに言葉を口にした。

パッと母の前に画面が現れたようだ。

!!

「うわぁ! な、何だいこれ?」

両手をあげて母親が一歩後ろへ下がった。

そりゃ驚くだろうな。


「目がおかしくなったんだろうか。 後で眼科へ行かなきゃ・・」

「いやいや母さん、そうじゃないんだ」

言ってもわかってもらえないかもしれないけど、言うしかない。

「どうやら、今までの世界の基準が変わってしまったみたいなんだ」

「???」

そうだろうな。

というか、俺の説明が悪いな。


こいつアホじゃないのかとか、狂ったんじゃないかって思うよな。

「母さん、変な画面が見えるだろ。 それって母さんの状態を見せてるんだよ。 スマホの画面みたいなものだな。 う~ん、なんていうか・・ゲームのような世界になったみたいなんだけど・・」

???

母親はキョトンとしている。 

当たり前か。

「とにかく、外には出ないように。 それと雨戸を閉めたほうがいい。 猛獣があふれているから」

俺はとりあえずそう言ってみる。

「猛獣?」

母は少し放心状態だったが、猛獣の言葉でハッとしたようだ。


「さっき犬の大きな声がしたって言ってただろ。 大きな犬がいっぱいいる感じなんだ」

俺はそう言った方が理解しやすいと思った。

「え? どこの犬だい? 犬がはなれたのかい? 警察に電話した方がいいんじゃないかい?」

母は俺の方を見て不安そうな感じだ。

「・・・・」

う~ん・・どう説明しよう。 

俺は少し考えてみる。

「いや、何かいろんな猛獣がウロウロしているみたいなんだ。 とにかく雨戸は閉めておいた方がいいよ。 それに電気が使えないだろ?」

「そういえば、そうだね。 湯を沸かすのだってガスだからねぇ・・」

母は確認しながら言う。


余裕かよ!


「母さん、とにかく雨戸を閉めよう。 危ないから」

「雨戸閉めたら暗くなるだろうに・・」

そりゃもっともだ。

「でもな母さん、やっぱり閉めておいた方がいいと思うよ」

俺は言葉を重ねる。

怪訝けげんそうな顔をされたが、仕方ない。

「父さんもそうだけど、外に散歩なんてしないでね。 命にかかわるようなことが外で起こっているんだ。 とにかく雨戸を早く閉めて」

俺はそれしか言えなかった。


父さんには朝の散歩はやめてもらった。

しかし、雨戸を閉めるとさすがに暗い。

そういえば、物置で太陽発電のLEDライトがあったような。

ま、後だな。

真っ暗というわけじゃないし。

母親は納得していないようだが、とりあえず、みんなが起きたら話し合わなきゃいけない。

「ちょっと上に行ってくるよ。 みんなが起きたらまた来るから。 あ、それと母さんの目は病気じゃないから、俺も見えているし」

最後の俺の言葉の意味などわかるはずもないだろうな。

俺は2階のリビングへ向かう。

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