第4話 家に帰りたい
ワーウルフは鉄塔の下をゆっくりと回りながら、たまに立ち止まってこちらを見上げている。
こいつ、ジャンプもしない・・登れないのか?
俺はそう思うと同時に少しホッとした。
だが、油断はできない。
しかし、余裕が持てた。
これが助かった。
ステータス確認だ。
テツ
レベル:7
種族 :人
HP :65/90 +10
MP :30/50 +5
力 :68 +5
防御 :55 +5
敏捷 :87 +10
技能 :58 +5
運 :60 +1
職業 :盗賊7
固有スキル
探索4
忍び足4
気配察知4
罠解除1
杖術3
体術2
自動回復2
時間は5時45分。
あのワーウルフ、下でジッとしているな。
動こうともしない。
俺が降りるまで待っている気か?
どこまでジャンプできるんだ?
それよりも他に魔物はいない・・よな。
ピッ!
ワーウルフの後ろに魔物はいない。
索敵にはひっかからなかった。
少しホッとする。
さて、こいつ魔法とか使わないよな?
俺の頭の中にごちゃごちゃといろんな不安が浮かぶ。
しかし考えても仕方ないし、逃げられそうもない。
・・・
よし、決めた!!
とりあえずゴブリンの時に拾ったナイフを投げてみよう。
ビシュ!
軽く避けられた。
刺激しただけだったようだ。
ワーウルフはこちらを見上げて状態を低くした。
何か威圧感が増してきたような感じがする。
グルルル・・・
低く唸っている。
俺は直感的にやばい! と感じた。
別に意図したわけではないが、急いで両手で耳を塞ぐ!
直後、ワーウルフが吠えた。
「ワォウォオオオオオオォオオオオオオオン!」
俺の身体がビリビリとする。
咆哮というやつだな。
耳を塞いでいて正解だった。
俺はそう思うと同時にワーウルフを見る。
口の周りをペロッと舐めていた。
こいつ、俺を完全な獲物として見ているな。
ムカつく。
う~ん・・ここでジッとしていても仕方ない。
よし!
俺は覚悟を決める。
俺が移動しようとすると、ワーウルフが少し驚いたような表情になった。
表情がわかるわけではないが、上半身を
何だ?
まぁいい。
俺は鉄塔をゆっくりと降りてゆきながら、ワーウルフの反応をみる。
大丈夫そうだ。
そして、ある程度の高さからジャンプ。
先程走ったり、鉄塔を登ったりしていて、俺の身体能力が今までとはまるで違うと感じていた。
スキルを信じてワーウルフから少し離れたところへ着地。
!!
マジか?
着地してわかった。
今までの常識では考えられない。
まさにゲームキャラのような感じだ。
ある程度の衝撃は感じるが、この高さなのに全然痛くない。
人間の能力を超えてるぞ。
ワーウルフはこちらを
俺も相手を
下手に動けない。
しかし、動かないことにはどうしようもない。
ゴブリンの持っていたナイフ、残り4本だな。
俺は頭の中で計算してみる。
よし!
1本のナイフをワーウルフめがけて、思いっきり投げてみた。
ビュン!
おぉ、もの凄い速さだ。
だが、
傷をつけることすらできない。
もう1本投げると同時に俺は前にでた。
ダッ!
ワーウルフがナイフを
ドン!!
首のあたりにヒット。
続けざま連続で4撃、突きを入れてみた。
ドドドド!
3つヒット。
ガルルル・・・。
ワーウルフは怒っているようだ。
当たり前か。
だが、ダメージがあるのかどうかわからない。
ワーウルフの爪が俺の前を横切る。
うおぉ!
速い!
しかも重そうだ。
俺はバックステップをして、1本のナイフを投げた。
ワーウルフの前足の付け根部分に当たったようだ。
残り1本だな。
俺がそう考えるが早いか、ワーウルフが突進し噛みついてくる。
唸りながら歯をむき出して噛みついてくるのはさすがに迫力がある。
俺は左に1歩踏み出して避け、すぐさまその顔面に向けて棒を突き出す。
ドン!
口の部分に当たっただけだったが、ワーウルフは距離を取った。
口が苦手か?
ガルル・・。
低くうなりながら俺と一定の距離を保ちゆっくり円を描く。
奴の間合いなんだろうな。
そう思いつつ俺も呼吸を整えていく。
レベルが1つ違う個体だ。
本当に大丈夫だったのか。
しかし、他に選択肢はなかったしな。
ワーウルフに刺さったナイフは抜けていない。
俺がそんなことを思っていると、ワーウルフの態勢が少し低くなった。
次の瞬間、一気にこちらに向かってくる。
同時に前足を袈裟切り出しながら噛みついてきた。
「うぉ!!」
俺は避けるのに精いっぱいだ。
なるほど、ナイフが刺さってる前足に重心がかかったようだ。
踏ん張れていない。
チャンス!!
その瞬間に俺はワーウルフの胴体めがけて棒で突きを入れた。
ドドドド・・・。
「おりゃぁ!!」
何発突き入れたかわからないが、少しくらいはダメージがあるだろう。
ギャウン!
ワーウルフが犬のような鳴き声を上げる。
その声が妙にムカつく。
なに痛がってんだ!
こっちは死にそうなんだぞ!
そう思ったら、もう一歩踏み込んで、開いている口に向かって思いっきり手首を捻(ひね)りながら棒を突き入れた。
「こんのぉ!!」
ドゴ!
少し斜めだが、口の中に棒が入った。
結構奥の方まで入ったようだ。
俺も興奮していて無我夢中だ。
ワーウルフが苦しそうに前足で棒を引き抜こうともがく。
犬に抜けるはずもない。
ここが決め所だろう。
俺は棒から手を離し、ワーウルフの胴体を蹴り上げ、拳で殴る。
滅多打ちだ。
そして棒を引き抜き、なおも突きまくる。
ドドドド・・・。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・」
どれくらい突いただろうか。
ワーウルフがその場で口を開けて横たわっている。
見ると、ピクピクしていた。
まだ生きているのか。
俺は一気にジャンプして胴体と首の間あたりを両足で踏み抜いた。
「うらぁ!!」
グチャ!
足の裏に粘土を踏みつぶしたような嫌な感じがする。
ぜぇ、ぜぇ・・ゴホ、ゴホ・・。
ワーウルフは動かなくなった。
しばらくするとやはり消滅した。
青く光る石が残る。
今までのとは少し違う。
握り拳くらいの大きさはあるだろう。
とりあえずポケットに収納。
天の声が聞こえた。
『レベルが上がりました』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます