第1話 操作する者
朝6時、外から可愛い小鳥の鳴き声が聞こえる。気持ちのいい朝だ。
まずは携帯の電源を入れる。たくさん通知が来ていてうんざりするけど、その中に待ち望んでいる連絡がないか毎日探してしまう。
「あっ、メール来てる!」
1年前から続けている、ある無料ゲームアプリ。ゲーム自体は正直、単純なんだけど、参加者が少なくて、かつ古参ユーザーの私は無双できるから楽しくて毎日やってしまう。
『今日も1日頑張りましょう☆お仕事している間にランク上げして抜いちゃいますから☆ウソウソww』
そして、おまけ程度にこのゲームにはメール機能が付いているんだけど、とあるユーザーさんとここ最近メールしている。そのユーザーさんは、私と同じようにこのゲームを最初からずっと続けている変わった人なんだけど、熾烈なランク上げ競争をしているうちにいつのまにか愛着が湧いて、私の方からメールをしてしまったのだ。
「ふふっ、返信しとこ。こちらこそ、望むところです。よい1日を、っと」
送信を確認してから湯沸かし器のスイッチを入れる。何だか今日も良い気分で過ごせそうだな。お気に入りのマグカップにココアの粉を入れつつそんな幸せな朝を満喫していた。
同じ時刻、同様に携帯の画面を見つつ、朝を迎える者がいた。
「バカめ、朝からこんなアプリを開いているとは。俺レベルに終わってるやつだな」
何を隠そう、この男が先ほどのメールの受信者である。返信の文面をニヤリと眺めながら、せっせと歯を磨く姿はやはり変人の気風を感じさせる。
男はじっくりと歯を磨いた後、今後に送るメールの文章を推敲しつつ、また少し笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます