第12話 新学期早々の突然のラブレター!?
夏休みを終えて、木の葉っぱが代わり映えする季節。いつもの道を歩き、学校に向かうときのこと。
昇降口の玄関に入り、靴を脱いで下駄箱の引き戸を開けると、そこには何やら手紙が入っている。
手紙……?
そんな疑問を持つ中、手紙の封筒を開けて中を取り出すと
『拝啓 一年A組の柳木 龍君、今日の昼放課、屋上まで来てください —』
との手紙の内容が書かれている。
これはどういうことだろうと疑問を抱え、手紙とともに教室まで足を運ぶ。そして、教室の扉を開けて中に入ると
「おう!柳木か!」
そこには国光君の姿が現れる。
「ん?……柳木の持っている手紙は一体何だ?」
「この手紙は、下駄箱の中に置かれてあったよ」
「もしかして……それはラブレターなのか?」
「よく分からないけど、昼放課に屋上に来るように書いてある」
字はかなり綺麗に書かれている。
「それにしてもよくそんな手紙が下駄箱の中に置いてあるんだな」
「そうだね」
しかも、手紙の送り主が匿名である。
「その手紙は一体誰から送られたんだ?」
「筆跡を見たところ、女の子の可能性があると思う」
「やっぱり、ラブレターの線があるのか?」
これがもし、僕の正体を知るための手紙だとしたら、かなり慎重にならなければならない。
「とりあえず、手紙に書いてある通りに屋上まで行ってみるよ」
「まぁ、その方がいいと思うな、どのみち行ってみないと分からないからな」
「うん…」
僕はこの手紙を持って自分のカバンにしまい、一時間目の授業の準備をする。
そうして迎えた学校の授業後の昼放課。
手紙に書いてあったように屋上へ向かう。
ここの校舎は、一般校と違って広々としていて、場所が分からなくなるときがある。
歩き続けること十分が経ち、屋上までたどり着き、扉を開けると
「姫菜さん……?」
そこには、彼女が屋上のフェンスに手をかけて待っている。
今、屋上には、僕と姫菜さんしかいない。
その声に気づいた彼女は僕に気づいて振り向く。
「あ!来た!」
姫菜さんが僕の手が届く目の前まで来る。
「ちゃんと手紙読んでくれたんだね」
「どうして僕を呼んだの?」
「実はね、柳木君に頼みたいことがあって……」
彼女の頼みたいこととは一体……?
「私の恋人になってくれない?」
「……それはどういうこと?」
「私が将来好きな人ができたときのための予行練習っていうわけ……だからその練習相手になってもらいたくて頼んだんだけど、いいかな?」
「僕が練習相手に?」
「ダメ?」
彼女が上目遣いでこちらを見てくると、やたら断りづらい。
「それに柳木君はまだ好きな人がいないんでしょ、だから柳木君にとっても好きな人ができたときのためになるんじゃないかな?」
確かに言われてみればその通りだが、何か意図してきているのは気のせいなのだろうか?
「でもひいなさんにとって、僕じゃ事足りないんじゃないかな?」
「どうして?」
「周りからしたら、僕は外見だって地味だし、性格も内気だから、他の人だったら僕よりも練習相手になると思うよ」
彼女は、一度自分の目蓋を閉じて
「それでも私は、柳木君を選ぶよ」
彼女に真剣に眼差しで見つめられて、彼は少し戸惑う。こんなことになるのは、彼にとっては想定外の事だろう。何せ、彼女から自分に近づいてくるとは思わなかったからだ。
「ならそこまでして僕にこだわる理由を聞かせてもらえないかな?」
彼女が僕に笑顔を見せて
「ひ・み・つ」
なぜかそこだけは彼女が口を開いてくれなかった。
「やっぱりこの話は無かったことにしてくれるとありがたいんだけど」
「それはできません」
「どうしても?」
「うん」
そして、彼女は彼の手を取り。
「これは一体?」
「どうしてもというなら、恋人になってくれるまでこの手は離さないでおくね」
彼女の手から逃れようと試みるが、力が入っているのか、なかなかほどけない。
「降参する?」
彼女の押しに負けた彼は諦め。
「降参します」
「うん、よろしい」
こうして僕たちは(仮の)恋人関係となった。
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