第4話 高校生活
小学生の頃、家に引っ越してから、新しい生活が始まり、高校生になるまで俳優やモデルの仕事と勉強を両立してきた。
中学生になると、モデルの仕事を通じて、世間に対する知名度が上がる。それもあって、映画監督からオファーをもらった。
彼が出る映画作品は音楽をテーマにした「君に届ける音」というラブストーリーに出演していたそう。
彼には、この映画でピアノを弾くことになった。そして、ピアノの最高難易度のショパンの曲を一年間練習する日々が続いた。
実際、彼の知名度がうなぎ上りに上がったのはこの映画に出演したのがきっかけだ。
映画の公開日となれば、お客さんが大勢舞い込んで、映画館の席が埋まるぐらいとなる。映画の興行収入も数百億円にまでのぼり詰めた。
これを機に彼は全国に名が知れ渡る超有名人となった。
そんな彼の日常は激変し、街中で素顔を晒け出すと、必ず一般人の人から声がかかるようになる。
学校でもかなりの大騒ぎで彼の教室まで押し寄せて来る人が、廊下が埋まるぐらいの大行列になる。
彼はだんだん街でも学校でも普通に生活ができなくなっていった。ゆくゆく高校に上がっても、同じようなことが起きると思った彼は、とあるショッピングモールで変装道具を揃えることにした。
その後は、専属のヘヤメイクなどに頼んで調整を行ない準備を完全に整える。
ようやく高校生活が始まる頃になったとき、そこで彼は普通に学校生活を送るために素顔を晒さず、本気の変装をした。
こうして、一躍の超有名人となった彼は、土曜日の朝から待ち合わせ場所まで足を運ぶ。
「よし、時間通りだな、では、出発するぞ」
「はい」
東京駅のところで待ち合わせた僕達は、新幹線に乗って京都まで目指した。
学校が始まって三週間目のこと。
授業の放課後は、一人で読書をしている。僕の周りにいる人達は、会話でかなりにぎわっているようだ。
ふと、ぼっちで過ごす僕の視界の脇には、甘栗色をした髪のメガネをかけたショートの男の子がこちらまで尋ねて来た。
「お取り込み中、悪いな、今何を読んでいるか聞いていいか?」
彼が僕に話しかけてきた。
「うん……今読んでいる小説はハーマン・メルヴィンが書いた『白鯨』って言う小説だよ」
「おう?聞いたことがないな……」
僕が読んでいる小説は基本的に文学の小説だ。
「なぁ、表紙とか見せてくれねえか?」
彼に自分の小説を手渡した。
「ほう、これはあれだな、文学好きの人が読みそうな代物だな」
彼は不思議そうに中のページを開いて、少し読んでみる。
「うーん……何かあまり頭に入ってこないな」
「少し、複雑な表現も入っているから、読み慣れていない人にとっては、読みづらいかな」
「確かにそうだな、普段読んでいる本は、全般的にライトノベル小説だからな」
今の高校生の世代なら、読んでいてもおかしくない。
「そういえば、名前を聞いていなかったな……名前は何ていうんだ?」
「僕の名前は柳木 龍、放課後はいつもこのように過ごしているけど、仲良くしてくれると嬉しい」
「おう!よろしくな」
彼は笑顔で応じた。
「君の名前も聞いていいかな?」
「そうだったな……俺の名前は
「うん、こちらこそよろしく」
そして、彼は僕に尋ねてきて
「もしよかったら、学校の授業後に二人で本屋に行かねえか?」
「本屋に僕と二人で?」
「そうだ、本を読んでいるんだったら、読んでいる者同士ちょうどいいと思ってな」
—数時間後—
学校の授業が終わり、二人で最寄りの駅まで向かい、電車に乗って、近くの書店に向かうとのこと。
「ここの電車ってよく使うのか?」
「家が反対だからあまり使うことはないけど」
「まあ、俺も本屋に行く時以外は、あまり使わないからな…」
しばらく電車に揺らされること15分が経ち、駅の改札口を出ると
「ようやく着いたな」
「うん」
この町は東京の近くにあり、たくさんのビルが並び立つ。
二人は歩き進めて、書店の前まで到着して、中に入る。
「おっ!今日は、かなりの新刊が出揃っているな」
店頭には、ライトノベルの新刊が並べてある。
「とりあえず、俺はラノベのコーナーに回るから、好きなところを回ってけ」
彼とは、別行動になり、僕は文学コーナーに立ち回る。
本の棚を見ると、今月の旬の本がピックアップされている。その中から、目を凝らし厳選して一冊選んで本を片手に持つ。
選び終わった彼は、彼の元まで足を運ぶ。
「本は選び終わったのか?」
「うん……それにしても、国光君の両手、かなりすごいね」
彼の両手には、堂々と本十冊積まれている。
「俺は、気になった本があったらこのくらいは買うぜ」
少し、表情を歪ませるが、彼が僕に何かを差し出した。
「とりあえずお前にこの本を渡しておくな」
「それはさすがに悪いよ……」
「ここまで付き合ってもらったからそのお礼だ。もし、いらないなら捨てるなり焼くなり煮るなりしてくれ」
彼がせっかく買ってもらった本だから、捨てるのはもったいないので、彼のご好意に甘えることにした。その後は自分達の家に帰っていった。
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