第2話 遭遇
ー一週目の平日を終え迎えた土曜日の朝ー
新しい学校生活が始まって、休日に入り、まだ慣れていないか体の方に疲れが溜まっている。
今日はいつもより朝早く起きて、家から出る準備を着々と進めている。
そんな最中、彼の携帯に一本の電話がかかる。
「もしもし……おはようございます」
「もう準備は、できたか?」
「はい、もうすぐ家を出るところです」
「そうか、今日はいろいろとやることがあるから忙しくなるぞ」
そして電話を切った後は、家を出て、最寄りの駅に向かう。
時を遡り、小学校六年生の頃。
僕が従来住んでいた東北地方にある山形県の都会の町に家がある。学校から家までは徒歩で30分のところだ。
そこは、田舎と比べれば、比較的に人口が多く、街中はにぎやかに包まれる。
そうして六月になる時は、六年生の最初で最後の修学旅行がある。その修学旅行は二泊三日で、場所は東京になる。
一日目は、国会議事堂や浅草などを観光する。二日目は、各班に分かれて、東京を散策し、僕達は東京スカイツリーに行くことにした。
そして、僕達がそこに向かう途中、トイレ休憩を取ることにした。みんながトイレに行っている間に、僕は自販機の前で待つ。
そんな中、ふと、僕の視界の端に見知らない女性が一人でこちらに向かってくるようだ。
「こんにちは、君は今ここで何をしているのかな?」
彼女から突然話しかけられた僕は、少し戸惑いつつも今の状況を丁寧に伝える。
「……なるほど、君は修学旅行で東京に来ているというわけか」
そして、彼女は僕の前に姿を現し何をするのか?そんな疑問を持つ中、彼女が僕に名刺を差し出して
「東宝エンターテイメントでマネージャーをしている
とのことだった。
「どうして、僕をスカウトしに来たのですか?」
「君は、かなりルックスがいいから、それを見込んでわざわざ足を運んできたというわけだ」
事情は理解したが、ルックスがいいかどうかまでは自覚していない。このまま、スカウトに応じていいのだろうかと思い、一度家族に相談することにする。
「僕をスカウトしてくれるのは、すごくありがたいですけど、僕一人では決められないので、一度家族と相談してもいいですか?」
「そこは、君の好きにしたらいい、最終的に決めるのは、君だからな」
「ありがとうございます」
「名刺の下に電話番号が書いてあるから、そこにかけたらいい」
彼女がこの場を立ち去る頃には、トイレ休憩が終わり、再び東京スカイツリーまで目指した。
修学旅行が終わって、家に帰り、自宅のドアを開けると、そこには、お母さんが待ち構えていた。
「おかえり、修学旅行は楽しかった?」
「すごく楽しかったよ」
「それは良かった」
そして、すぐさま僕に抱きつき、しばらく心を落ち着かせている。
「ご飯の準備はできたから、荷物を下ろしてきてね」
お母さんに言われた通り、リュックとスーツケースを自分の部屋に置き、手洗いうがいしたら席に着くようにした。
テーブルの上に並べられた料理は、いろんな種類があって豊富だ。普段は一汁三菜でごく普通の料理だった。
「今日は張り切って作ったから、いっぱい食べて」
でも、これじゃあきっと最後まで食べきれないだろう。そんな中、ちょうどお父さんがリビングに来た。
「おかえりなさい、りゅう」
「ただいま、お父さん」
お父さんとは仕事でなかなか会えなかったため、久しぶりに会うことになる。
「修学旅行は、どうだった?」
「うん、楽しかったよ」
お母さんは、キッチンで使った道具を片付けて、僕達がいる席着く。
「全員揃ったところで、みんなで食べましょう」
ここでようやく食事をすることになり、ひとまず落ち着いたところで、彼が気を改めてお父さん達に告げる。
「一応僕から話しておきたいことがあるんだけどいいかな?」
お父さんとお母さんが僕に視線を預けたのを確認してから、話しを続ける。
「実は、修学旅行中マネージャー声がかかったんだけど」
「その声がかかったっていうのはどういうことかしら?」
それを聞いた彼は、ポケットに仕舞い込んだ名刺をお母さんに見せた。
「え!声がかかったっていうのは芸能事務所からの人だったの!」
一応、彼が声がかかったのは大手芸能事務所のことで、ここから多くの俳優やモデルを輩出しているとのことだ。実際、僕に声がかかったのは、その俳優やモデルのことだったのだ。
「僕は、ここで頑張ってみようと思うんだけど、どうかな?」
「うん、それは全然応援するわ」
ちょうど何もやってこなかった自分にとってはいい機会だと思い、何か変われるきっかけになれていいかなという淡い想いを抱く。
「それなら日曜日は時間が空いているから、お父さんと一緒に行こう」
「うん」
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