超有名人高校生は普通の学校生活を送るために本気で変装をするようです
赤坂白
高校生から始める変装生活〜一年生編〜
第1話 入学式
とある高校の入学式のこと。
「一同着席、新入生代表 柳木 龍」
この日の春の日差しが自分の体を暖かく包み込もうとして外に立つと、空気が耳の中になだれ込み静かにこだまする。
今日は学校で大事な式がある。
寒い高校受験を乗り越えて、新年度を迎え期待を胸に意気揚々と訪れる中、彼は今年の新入生代表である。
入学試験で一位の座を取り、この体育館の中央にある赤いカーペットを歩き、壇上に上がって、新入生全員の前で挨拶をする。
「一同礼」
それに合わせて彼も新入生全員と一緒にお辞儀をする。そして、新入生代表として答辞に書かれている文章を読み上げた。その後は、壇上から降りて自分の席に戻る。
入学式が終わり、体育館の中で先生の説明を受けて、しばらく時間が経つ頃には、自分が一年間通う新しい教室に向かう。
そんな彼の入学式での姿はというと、服装は制服で黒髪のシンプルショートに伊達メガネをかけて、おまけにマスクまで着用。こうしてみると陰キャラの格好をしている。つまり変装をしている状態だ。
変装を解いた彼の姿は、茶髪でナチュラルなショートヘアーで顔が整っている超絶イケメンである。
そして、超人気モデル・俳優の超有名人だ。
彼は学校の過ごし方にこだわりを持ち、自分をあまり主張せず、存在感を薄くして、静かに過ごしていく。確かにその方が変装をしていくには都合がいい。
そうして、教室まで向かいながら学校の廊下を歩く。
そして、廊下の窓の脇から見えるのは満開に咲いている桜がある。
茫然と外の景色を眺めながら教室まで足を運ぶ。
教室の中に入り、あたりを見渡せば同じ制服を着た人達が所々で複数の人と固まってわいわいとにぎわっている。
それを傍目に席を着き、次の時間まで本を読みながら席で待つ。
しばらく時間が経つと、教卓の前に新しい先生が姿を表す。
「今日から、君達の担任を務めることになった山田洋介だ——」
この時間は先生の自己紹介から始まり、教卓に置かれている書類を前の席から配っていった。
休み時間に入る頃には、彼はその間にトイレへ向かう。
そして、トイレの向こうまで歩き続けると、突如階段の曲がり角で人影が見え、相手と正面でぶつかり後ろに倒れた。
「きゃ……!」
女の子の声に気づいた彼は咄嗟に彼女の元に歩み寄る。
「大丈夫ですか?」
彼女が立ち上がり、ニコッと明るい笑顔を向けて
「大丈夫だよ」
と彼に伝えた。
「ちゃんと前を見ていなくてごめんね」
「気にしなくていいよ」
ふと彼女の顔を見るとそこには昔馴染みの女の子の顔にそっくりだった。そして、透き通るようなピンクのセミロングに、色白の艶々肌を纏い、胸も大きい。
「私の名前は
彼女が彼の前に手を差し伸し、彼はその手を握った。
「うん、よろしく」
二人は笑顔で見つめ合い。
「あなたの名前も聞かせてもいいかな?」
「あっ、うん、僕の名前は
それを聞いた途端に彼女の表情は訝しそうな表情をする。
「ど、どうしたの?」
「うーん、見た目は違うみたい」
「えっと…」
「あっ、ごめんねもうすぐチャイムが鳴るみたいだから教室に戻るね」
彼女は自分の教室に戻って行った。
ーその翌日ー
朝早くに起床し、洗面所に向かって、変装ができているかどうかを確認する。やはり、自分の変装は抜かりなく施さなければ、返って不安になる。
変装の準備を終えたあとは、朝食を取り学校に行く。
彼は家族に仕送りをしてもらいつつ一人暮らしをしている。
家は埼玉県のマンションの部屋を借り、ここから学校までの道のりは、電車を利用しながら三十分かかる。
通学中に僕と同じ制服を着ている人はあまり見かけない。
学校に着いて、席に座る頃には、本を両手に持って読書をする。
そして朝の朝会が終わり、一時間目の授業が始まる。この時間は先生の案内のもとここの学校の中の教室や他のところを見て回る。
三時間目の授業後の放課に差し掛かったときは、教室を出て他の教室に向かう。その途中、後ろから女の子の声が聞こえた。声がした方に振り向くと
「私に気づいたみたいでよかった、あなたに一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
彼女の方に耳を傾けて
「もしかして、—りゅうくん—なの?」
「え……?」
もしかして昨日のことが引きずったせいで…
「もし、あなたが本当にそうなのか確認していい?」
ここは、彼女に変装していることがバレないためにも一役買う。
「それは恐らく人違いじゃないかな?その人は同姓同名だと思うけど……」
「う〜ん……確かに言われてみれば雰囲気がだいぶ違うね……」
申し訳ないけど、ここでバレるわけにもいかない。
「もうそろそろ移動教室の時間だから、僕はこれで失礼するよ」
「そうだね、じゃあまたね」
それぞれの教室に足を運び、彼はひとまず呼吸を落ち着かせる。
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