第14話
マンションに戻ると由香里にレミーでの事を話した。最後まで黙って聞いていたが、疑いの眼差しをしている。
「でも、それが全部本当ならとんでもない事ね、でもヤクザの親分にまで気に入られるとは思いもしなかったわ、とりあえずあなたと私が安全ならそれでいいわ。今度呼ばれたら私も連れて行ってちょうだい」
翌日の昼も俺の携帯に竜児から着信があった。
『俊輔、レミーにいる。今日は会わせたい奴も連れてきた出てきてくれ』
無理やりだが有無を言わせない雰囲気だ。
「わかったよ」
電話を切ると出掛ける準備をした。由香里も付いて来たいと言ったが完全に安全と言う保証はないので留守番をさせておいた。
店に入ると奥のボックス席から竜児が手を振っている、横には上野が座っている。俺は何度も見てるが、上野からしたら初対面だ。
「上野じゃないか怪我は治ったのか?」
「あんたが緋村と名乗っていた荒木さんか、初めましてだな。怪我は良くなって来てる」
「電話ではよく話したが、実際会うのは初めてだな、まあ俺は初めから顔は知っていたがな。で竜児、俺を上野に会わすために呼び出したのか?」
俺が竜児と呼び捨てにしたことで上野が焦っているようだ、察したのか竜児がなだめている。
「上野、いいんだ俺も俊輔も名前で呼び合っている、気にするな」
「しかし」
「うるせぇ、俺がいいと言ってるんだ」
竜児は親分の顔付きになっている。
「わかりました、すいません」
「俊輔すまんな、この三人なら利害が一致すると思ってな」
マスターが俺の前にパフェを持って来た。竜児と上野はスパゲティーを食べていた。
「荒木さん、樋口一派をやれるかい? 拳銃を持ち出そうとしているんだが」
「何丁だ」
「一丁だけだ」
「その拳銃は無くなっても構わないか?」
それには竜児が答える。
「どうなっても構わない、壊しても海に捨ててもいい」
「だったら上野、仕事を一つ頼まれてくれないか? 簡単な事だ」
「何でも言ってくれ、出来る限り手伝おう」
俺は計画を話した。
「そんな簡単な事でいいのか?」
「ああ、それだけでいい」
「わかった、組長もいいですね?」
「構わんよ、拳銃を持ってたらサツがうるさいしな、ちょうどいい機会だ」
「その後は俺が樋口達を片付ける、いいな? 後で恨むなよ」
「こっちから頼んだことだ、恨んだりはせんよ」
上野にも俺の携帯番号を教えておいた。
「何かあればこっちに掛けてくれ、飯中は取らないからな。樋口は暫く泳がせておこう、吉田はどっち側なんだ? この前の話じゃ一応こちら側らしいが」
「吉田は暫く様子見でしょ? 組長」
「ああ、そうしよう」
「竜児、念の為に言っておくが、俺は仲間になったわけじゃないからな、たまたま利害が一致して一時的に同盟を組んだだけだ」
「俊輔わかってるって、そう熱くなるなよ」
「とりあえず今日はここまでだ」
パフェの残りを平らげ、マスターに金を払うとマンションに戻った。
「何をそんなにカリカリしてるの?」
そう言われて初めて自分がイライラしていることに気が付いた。多分ヤクザと一時的にも協力関係にいることが腹立たしいのだ。別に竜児も上野も嫌いではないがヤクザって事が嫌なのだ。
竜児に電話を掛ける。
「竜児か?」
『ああ、そうだどうした?』
「さっきはカリカリしてて悪かったな」
『そんな事か、気にするな。俺達みたいな人間と同盟を組むことに腹立たしく思うのは仕方のないことだ、俺達は慣れている』
「そうか、わかったよ」
『上野はもう動いている』
「ありがとよ、じゃあまたな」
電話を切ると由香里が話し出す。
「事情は大体わかったわ、一時的に協力関係になるくらいいいじゃない。でもあなたがヤクザになることは駄目よ」
「ああ、わかった」
由香里は納得したかのように頷いた。
二日間何も起きなかった、このまま終わりじゃないかと思えるほど静かだったが、夜に上野から連絡が入った。
『荒木さん、頼まれていた仕事は終わった』
「そうかい、ありがとよ」
『樋口のグループの動きがおかしい、注意してくれ』
「大丈夫だと思う」
『樋口の手下がまとめて動きそうだ、これくらいしかわからなかった』
「十分だ」
『殺られないでくれよ』
電話が切れた。
樋口の手下がまとめて動くとなれば、三人だ、柔道一人にボクサーが二人、樋口は付いて来るのだろうか? わからないが、樋口のところのナンバーツーは倒したが、あの程度の強さでも、三人がかりだと少々キツい、何せ全員がナイフの扱いに長けている。
タバコを一本吸うとベッドに入った。
翌日、午前中に竜児から連絡が入った。
『俊輔、樋口が拳銃を持ち出したみたいだ』
「そうか」
『上野から聞いているとは思うが、樋口のグループが動き始めた』
「ああ、聞いている」
『手下三人の奴らは、俊輔の準備運動程度だろうが、樋口は強い用心してくれ』
「わかった、いつ動きそうだ?」
『今日か明日には動くはずだ』
「わかった、ありがとよ」
電話が切れた。
昼飯が終わると安藤の携帯が鳴った、飯田と表示されている。
「飯田、何の用だ」
『松本の兄貴を殺ったのは許せねぇ、これは樋口の兄貴も同じ考えだ、お前をぶっ殺す』
「相手をしてやろう、二時間後に松本を倒した港に来い、何なら三人まとめて相手してやるぞ」
『わかった、ナイフで切り刻んでやる』
電話が切れた。
「あなた、あんな挑発して大丈夫なの?」
「大丈夫だ、小細工が出来ないように今から行ってくる」
「気を付けて」
車で港まで行き、目立たない場所に車を隠し、松本をやっつけた場所へ行く、少し離れたコンテナの陰に身を隠す。
約束の一時間前に車が一台やって来た、三人の男が下りて来て、二人が別々の場所に身を隠す、早めに来て正解だった。
三十分経ってから、車の前にいる男の前に歩いて行った。
「お前が飯田か?」
「そうだ、樋口グループを甘く見ない方がいい、上田のところとは格が違うからな」
飯田は鼻梁が潰れている、ボクサーだろうと当たりをつける、いきなり襲ってきた。
ジャブからのアッパーを軽く躱し、逆にアッパーを入れ、ふらついたところでボディに渾身の右フックを打ち付ける、肋が数本数本折れたようだ、飯田は吐瀉物を吐いて倒れたが、ふらふらのまま立ち上がり、ナイフを出した、膝に前蹴りを食らわすと、膝が逆に折れ倒れた。
「隠れている二人も出てこい」
左右のコンテナの陰から二人が出てくる。
「俺たち二人がが隠れている事を知っていたのか?」
「バレバレだ」
二人は始めからナイフを出し、襲いかかって来た。
一人目は俺のハイキックが頭に直撃し、あっけなく気絶した、最後の一人が震え始めてナイフを捨てた。
「見逃してくれ、俺は命令だったから来ただけなんだ」
「武闘派のメンバーの誇りはないのか?」
「殺されるよりマシだ」
男の顔面に腰のひねりを入れた、一撃を食らわせた、男が倒れた。
本当にあっけない奴らだ、三人を一箇所に引きずり集め、両手足を縛り健を切断する。
悲鳴を挙げたが、両目も潰しておいた、これでもう廃人だ、追い込んで更に気を狂わせる必要もない、簡単過ぎてあくびが出た。
車まで戻り、マンションに戻った。
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