第6話
家に帰ると由香里が夕飯を作っているところだった。俺を見るなり飛んできた。
「あなた、血が付いてるわ。怪我したの?」
よく見ると手にさっきの男の血が付いている、目を潰した時に付いたのかもしれない。
「俺はかすり傷一つない、相手の血が付いただけだ」
洗面所に行き手を洗い血を落とした。リビングに戻りテレビを付けたがニュースはまだ流れてこない。
「晩ご飯の支度が出来たわ、こっちに座ってちょうだい、疲れて帰ってくる事はわかってたからお肉にしたわ」
「ありがとう、やっぱり俺は戦う事の方が性に合ってる」
「何人相手にしたの?」
「たった一人だ、準備運動にしかならなかったがこれは宣戦布告の合図になるだろうな、とりあえずは後三人を遊んでやってから考える」
いただきますと言って肉に食らいつくガーリックライスも美味い。
「ニュースになるかしら?」
「どうだろう、まだ発見されていないのかもしれない」
「あなたは暴れまわった方が生き生きとしてるわ」
「頭を使わなくて済むからな」
食べ終えるとリビングに移った、テレビを付けてみる夕方のニュース番組が始まっていた、今日の俺のやったことはチンピラ同士の争い扱いだった、失明して手首から先が壊死している事だけで詳しくは語られなかったがそれで十分だ。安藤という名前らしい、名前を本人から聞いていなかったのを思い出し苦笑した。
俺はテレビを消し由香里に喋るなと合図をし、安藤の携帯で上野に掛けた。
『誰だ? 安藤の携帯を持っているという事はお前が安藤をやったんだな?』
淡々と落ち着き話しているが怒りを感じ取ることが出来た。声も若干震えている、俺に恐怖感を持っていることに間違いない。
「ああ、俺がその男を痛めつけた、安藤から何か聞いたか?」
『全部聞いた、お前が前の島村組を潰したことや村田祐一の事もな』
「祐一は俺が匿っている探すだけ無駄だ、ついでに上野お前にはもっと酷い目にあってもらう覚悟しておけ、祐一から手を引くなら見逃してやるがな、金なら村田夫妻からむしり取れまだ一千万近く持っている」
『緋村とか言ったな。そうしよう、だが下っ端と言えどうちの組員に手を出した礼はさせてもらう』
「ほう、茂や江口のようになりたいと言う事だな、遠慮なくさせて貰おうじゃないか」
『俺を甘く見ない方がいい、後悔することになるぞ』
やはり恐怖のせいか声は震えている。
「それは俺のセリフだ、今日のは宣戦布告と言う事にしておこう」
電話を切った。
「由香里、電話は終わったぞ」
「まだ続くみたいね」
「大丈夫だ、奴らは俺にビビっている」
「その上野って人が手を引けば事件は解決なの?」
「そうなれば手っ取り早いがそう安々と終わらせてくれるかが問題だ」
「明日はどうするの?」
「祐一を探してる連中を一人ずつ潰していくだけだ」
由香里と話していると落ち着く、段々と眠くなり始めていた。
「眠いのなら先に寝てもいいわよ」
「ありがとう、そうさせてもらうよ」
やはり体が鈍っているのだろうか? 少し暴れただけで眠くなるとは思わなかった。ベッドに潜り込むとすぐに眠りに落ちる。
アラームが鳴るまで熟睡していた様だ。疲れは残っていない、いい傾向だ。
「あなた、よっぽど疲れていたみたいね」
「こんなに寝たのは久しぶりだ、かなり気分がいい」
リビングで豆乳を飲みながら朝食を待つ。肉の焼ける匂いに誘われてキッチンのテーブルに付いた。
出された飯とステーキに特製ダレを混ぜ無心で食べる。肉や刺し身は飽きる事がない。完食するがまだ食べたりない、それを察したのか由香里は半分残っていたステーキをこちらに渡してくれた、これも平らげた。
「ありがとう、お陰で食欲は満たされたよ」
「私はお腹いっぱいだったからいいのよ」
「今日はすぐに出掛ける、帰りは早いか遅いかわからないから待たなくていいぞ」
「わかったわ」
着替えを済ませると車に乗り込み、昨日の男の駐車場へ向かった。
車はない気付かずに運転したのか、レッカー移動したのかわからない、それを見て島村組の事務所へ向かった。
事務所前に昨日のワンボックスカーが停まっていたがエンジンルームから黒煙が上がっていた。エンジンオイルとラジエーターの水を抜いたのだここまで走って来たということはもうエンジンも焼き付いて廃車だろう。
残りの三人が表であたふたしている。暫くするとレッカー移動されていった。別の車を用意したのか三人が乗り込み車を走らせる、俺も後ろを付いていく。村田夫妻の家に向かっている様だ。村田夫妻のマンションに着くと男達はマンションに入っていった。
男達の車にまた小細工をし、俺は階段を使い追いかける、階段の陰から様子を窺う。
「村田出てこい、お前らのせいで仲間が再起不能になったじゃねえか。それにお前らまだ一千万程持ってるらしいじゃないか、それでチャラにしてやるから出てこい」
と何度も大声で呼びかけている。
小一時間程待つと村田が薄くドアを開け、通帳と印鑑らしきものを手渡した。
「これでいいだろう、もう来ないでくれ」
憔悴しきった声で夫の隆が言う。
「初めから大人しくこれを渡してたらこんな目に合わないんだ、これから気を付けろよ」
男達がエレベーターで降りて行くのを確認し俺も階段で下に降り男達の車の前で待ち伏せをした。
「おい、俺の車に触るんじゃねえ」
「やっと村田夫妻の借金はチャラになったのか?」
「何でお前が知っている」
「俺は緋村と言う者だ」
男達に緊張の糸が走る。
「ここは人目に付きやすい、こっちへこい」
男達を路地裏に連れ込んだ。
「お前が安藤をあんな目に合わせたのか? こっちは三人いるんだぞ勝てるとでも思っているのか?」
三人ともナイフを出して来たが扱い慣れていないようだ、三人が襲ってくる。
軽くステップで躱しながら一人ずつ確実に倒していく、時間にして約三分全員気を失っている、三人の両手首をしっかり縛り足も縛る。落ちたナイフを拾い手足の腱を切っていく、順に気が付いた様だ、うめいている。
「俺達が何したって言うんだ、貸した金を取り返しただけだ」
「俺はあの夫婦は知ったこっちゃない、お前らが祐一を探したのが原因でこう言う状態になっている」
「もう借金も返してもらったし祐一には手出ししない、約束するから助けてくれ」
「残念だが俺の顔を見たからには放っておけない、恨むなら村田夫妻と上野を恨め」
三人の目をナイフで潰していく、悲鳴を上げたが止めなかった。
一人だけ拷問することにした、顎に軽いパンチを打っていくと一時間ほどで失禁し涙を流し始めた。
「お前らは上野の直属の部下か?」
「そうだ」
「上野以外の三人の幹部はこの件に関与しているのか?」
「そこまでは聞いてないからわからない」
「上野は高利貸ししかしてないのか?」
「そうだ」
「他の幹部たちは何をして資金を集めているんだ?」
「覚せい剤の売買をしていると聞いている、詳しくはよくわからない」
「話は終わりだ一人だけ廃人になってもらおうか」
「もう手足も動かないし目も潰れた、これ以上何をするんだ? 止めてくれ助けてくれ」
またパンチを打っていく一時間半ほどで血の涙を流し鼻血が出てきた。心が潰れた証拠だ、疲れたので他の二人は放っておいた。全員失禁している。
「上野に会えたら言っておけ、村田夫妻はどうなっても構わんが、祐一に危害を加えようとしたらこうなるとな、じゃあな」
車まで戻り、ルームミラーで返り血を浴びてないかを確認しマンションに戻った。
「あら、早かったのね」
「ああ、だが三人相手にして疲れた、夕飯は特製スタミナ丼を頼む、少し休ませてくれ」
豆乳を一気に飲み干すとソファーに横になった。
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