第2話 これが日常

 教室の扉を開けると、先程まで賑やかだった声が水を打ったようにピタリと止み、クラスメイトたちの視線がこちらに注がれる。


 が、それは一瞬のことであり、教室はたちまち賑やかな声に包まれる。

 

 目線を下げ、口をきゅっと閉じ、自分の席に向かう。


「……え」


 思わず声を漏らした。

机には虫の死骸やゴミが盛られ、刃物か何かで悪口が彫られており、椅子には接着剤の上に画鋲が散らばっていた。いつもは油性ペンで悪口を書かれる程度だが、今日のは酷い。


 愕然としていると、背後からコツンと紙屑が頭に投げられた。


 「くっさ〜。誰か消臭スプレーとか持ってない? この粗大ゴミの匂い耐えらんないんだけど」

 

 声の主であり、毎日このようなことをしてくるいじめの主犯格の貴瀬柚莉愛がそう言うと、クラスメイトが待ってましたと言わんばかりに、私に向けて消臭スプレーをかけた。


 私はコイツ、いや、コイツらからいじめを受けている。


 原因は突飛なものだった。 

いじめの主犯格である貴瀬柚莉愛は、横暴で自分の思い通りにならないと気のすまない性格だった為、当時正義感の強かった私が気に食わなかったのだろう。私がクラス話し合いの場などで意見を押したりすると、貴瀬柚莉愛は私以外のクラスメイトを自分の意見に賛成させるように強要した。


 クラスメイトはみんな私の手下。

そう思わせる為か、翌日から私に対するいじめが始まったのだ。


 「やだ……やめっ……」


 私の声は、誰にも届く事はなかった。

耐えきれなくなり、教室を飛び出した。


  

 


 

 

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