第1話 理想と現実

 また朝が来てしまった。

次の日になるな、朝は来るな、とどれだけ願おうとも、残酷にも月は沈み日は昇ることを繰り返す。


 本来ならこんな朝を迎えるはずではなかった。

眠たい目を擦りながらあくびをし、カーテンを開けて大きく伸びをする。

そんなルーティーンをしているはずだった。

 

 しかし現実は、そんな朝を迎えることを許してはくれなかった。

カーテンも開けずに薄暗い部屋で制服に着替える。

 

 ふと、全身鏡に視線を移すと、そこには笑顔の消えた私、菊月梨沙が居た。


 身支度を済ませ、朝食も食べずに玄関へと足を進める。


 両親は朝早くから夜遅くまで共働きの為、一緒に生活をすることはほとんど無い。


 ドアノブを捻る音が小さく響く。

 

「行ってきます」


 誰も居ない家に向かって言い、私は今日も、独りで地獄へと向かう。

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