絆
やっと人がやってきたが、女官たちは遠巻きに見ている。
と、蒼褪めた顔で走ってきたオルガが穴に入ってきて、エレンの体にのしかかっている土を退ける手伝い始めた。
三人で土を退けると、オルガがエレン抱きかかえ、背後から両腕を回してお腹に当て、上に向かって突き上げてはじめた――ハイムリッヒ法――。
エレンが少し息を強く吸った。
するとオルガはエレンを背負った。
「ジジ様、早くエレンさんの治療を!」
エレンは女官である、治療は神殿内の女官だけの区域、『奥』で行わなければならないのだが、今日は女医がいない……女官を外には出せないし……
しかしジジは決断した。
「神殿の外にあるシビルの医院に運び込みなさい、衛兵には私が直にいいます」
ジジの命令で衛兵が護衛につき、エレンを男には抱えさせられないので、なんとオルガがエレンを背負って医院まで運び込んだのだ。
アグネスもジジから、エレンに付き添うことを命じられた。
かなり危険な状態であったが、オルガの応急処置が生命を引き止めたようだ。
「……ここは……」
「中央神殿外の医院よ」
「しかし……私は女官……大体、なぜアグネスが……懲罰が……」
「大丈夫よ、ジジ様の許可を得ているわ、それにオルガが貴女の応急処置をしてくれたのよ。」
「それで助かったとお医者様が云っていたわ、それにね、オルガはここまで貴女を背負ってきたのよ」
「……オルガは……」
「いまお医者様や事務長さんと話しているわ」
そこへオルガがやってきて、
「アグネスさん、エレンさんは大丈夫だそうよ、だから早く手を治療してください」
「アグネス……手をどうかしたの?」
「アグネスはね、貴女を助けるために素手で土をかき分けたのよ、血だらけになりながらね」
「貴女が気づくまでと、ここで頑張るっていって聞かないのよ、ほら、この手を見なさい」
オルガがアグネスの手を掴んで、エレンに見せます。
アグネスの小さい手は、血だらけの状態である。
エレンが嗚咽しながら……
「アグネス……オルガさんも……ありがとう……本当にありがとう……私、一生恩にきるわ……」
と搾り出すように言った。
「エレン、私は友だちよ……これからもずっと友だちよ……ねぇ、オルガさんも友だちになってくれるわよね……」
アグネスがその様に言いますと、エレンが、
「オルガさん、これから私やアグネスと、仲良くしてくれない……一生のお願い!」
エレンはいまだ涙目です。
「私からもお願いするわ、だからオルガでいいわ、それにアグネスも早く手を見てもらって」
エラムの暦で、十日ばかりエレンは入院していた。
そして女官ということで、病室の周りには衛兵が立っており、オルガもアグネスも、エレンの病室に缶詰となった。
三人は色々語り合った、それこそ包み隠さず
以来、三人はいつも一緒にいることが多くなった。
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