酔いどれ女の企み


 出港準備が整ったので、ギルベルトはイシュタルに晩餐に呼ばれた。

 何でも麗しき女騎士団長のエレンと、奉仕の魔女団隊長のアグネスと一緒だそうだ。


「ほう、ギルベルト司令官もやはり女か……初めて見るぞ、お前のドレス姿……」

 カエサルが感心したように云います。


「俺も女だったと思い知ったのさ、何としても今夜は、イシュタル様の閨の相手と目論んでいる」

「お前がそんなにいれこむのだ、女王はよほど美しいのだろうな」


「惚れたんだ……なら行動あるのみ!」

「まぁ好きにするさ、俺はアテネを見たことがあるが、イシュタル様の寵妃は、綺麗なのが揃っているぞ……」

「しかし、お前なら有資格者だろうな、抱かれたら陸に上がるのか?」


「まさか、俺は海の女さ」

「アンピトリテ――海神ポセイドンの妻、海の女王――というわけか、水晶の戦車を引くのか――アンピトリテの戦車、イルカが引くといわれている――」


「カエサル、案外に博学だな」

「ふん、さっさと女王の前で、足を広げてこい!上手くやれよ」


 その夜の晩餐会、後の二人は途方もない美人……でもモジモジしているばかり。

 ギルベルトは違った、なんせこの手の事では経験が違う。


 先手必勝とばかりに、告白タイムになだれ込もうとすると、イシュタルが、

「ギルベルトさん、いつもの男装ではないのですか?それにしてもお綺麗ですね」

 などと云われ、軽くいなされた。


 調子の狂ったギルベルト、軍用アルコール?をグビグビ飲んでしまった。

「明日、出港ですよ」と、たしなめられてまう。


 これはいけない……

 ホロ酔いの力を借りて、ギルベルトは勝負にでた。


「イシュタル様、今日は仕方ないですが、いつか酔い潰れるまで、お付き合いください」

「いいですよ、酔いつぶして差し上げましょう」


「イシュタル様が先につぶれたら、私を側室にしてくれますか?」

「私は強いですよ、その約束、受けてあげます」


 やった♪、約束は必ず守られるのがイシュタル様、上手くいったぞ!

 ギルベルトはへべれけだが、そのかいあってか、さすがのイシュタルも少し酔ったようで、ついに告白タイムに持ち込んだのです。


 ギルベルトの舌はなめらかになり、

「私としては、イシュタル様にお気にいられるように、一世一代のドレスアップをしてきたつもり……」

「そんなに私が気にいったのですか?」

 と、イシュタルに云わせることに成功した。


「愛しているといったら困りますか?」


 イシュタルは驚いた顔をしたが、黙ってギルベルトを引き寄せキスをした。

 ここぞとばかり、ギルベルトはディープなキスをする。


「すこし困りますね、でもありがとう」

 と、イシュタルがいった。

 そして、指輪を取り出し、ギルベルトにくれ、次の言葉を添えた……


「私からの信頼の証です、もし貴女が私を酔いつぶせたら、薬指にしてください」

 これにはギルベルトも、小娘のように頬を染めてしまった。


「私からの信頼の証です、もし貴女が私を酔いつぶせたら、薬指にしてください。」

 これにはギルベルトも、小娘のように頬を染めてしまった。

 ギルベルトは指輪を眺め思った、必ずこれを薬指にと……


「野郎ども出港だ、手柄をあげろ!サボったらぶっ殺すぞ!」

 とにかくヤル気満々のギルベルトは、勇躍してキリーを出港して行った。


    FIN


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