解放
「「ありがとうございました」」
そう言って頭を下げた後、私に込み上げてきたのは勝利の喜びではなく、ようやく重荷がなくなったという感覚だけでした。
終わった。やっと。
優勝したという感覚は、あまりありませんでした。今でもありません。実感が湧きません。本当に私は優勝したのでしょうか。実は夢だったのではないかと今でも思います。
「おめでとう」
ただ、それよりも。そう言ってくれる人がいたことが嬉しかった。自分の今までのWSが肯定されたかのようで。やってよかったと思いました。
落ち着いたあと、彼らにご飯に行こうと誘われましたが、時間がおしているのでやむなく断りました。本当に、私はここまでやると思っていなかったのです。時間がなくなるとは、思っていなかった。
一人で帰りました。
電車に揺られながら、すこし考え事をしていました。
私は、何かに勝たされた。最後の最後までお膳立てをされ、私はそれにのっかっただけだった。じゃあ、何故。私は勝たされたのだろう。
(嫌だ! ここまで来たんだ! ここで負けるのは――嫌だッッ!!!)
私の心からの、叫び。負け続けて負け慣れた人間が、それでも最後に言えた――本音。
(なんだ、まだお前にも残ってるじゃないか――心が)
この時、私はレポートを書こうと思いました。負け続けた人間が、その日、一日だけ主人公になれたかのような、そんな物語を。
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