第68話 異色のチーム会議

カズマ:「ではこれからチーム会議を始める。」


ドグマ:「オイ、カズマ。ちゃんと説明しろ。」


カズマ:「わかってるよオッサン。」




カズマはエヘンと咳払いをして続けた。




カズマ:「え~知ってる奴もいると思うがシュウがシューティングスター城から戻った。」


ドグマ:「もう皆知ってるだろ?」


カズマ:「まあ一度捕まって拷問を受けて重症だ。」


ドグマ:「それも知ってるよ。」


カズマ:「ただシュウのおかげでシューティングスター城の見取り図を手に入れる事が出来た。この二点の事から作戦の変更をする。」




カズマはモニターにシューティングスター城の見取り図を映し出した。




カズマ:「まず組み立て砦だがこいつの建設と防衛はサンライト城の一般兵で行う。で、手薄になるサンライト城の方はスイートウォーター城の援軍で防衛する。」




カズマは大型の透明マントを取り出しドグマに手渡す。




カズマ:「砦の仕切りはドグマ隊長に任せる。」


ドグマ:「オウ!任せておけ!」


カズマ:「それからサンライト城の方はマナ先生にお願いする。」


マナ:「わわわ私ですか?」


カズマ:「ああ、サンライト城の住民とスイートウォーター城の援軍がうまいこと共存できるように頼む。」


マナ:「わわわわかりました。」


カズマ:「で、シューティングスター城の潜入は俺、王女、メイ、トライの四人で行う。」




このカズマの提案にドグマが猛反対した。




ドグマ:「オマエいくらなんでもそれはないだろ!?」


カズマ:「やっぱり反対すると思ったよオッサン。」


ドグマ:「王女を守るっていう重大な事を敵だった奴に任せろっていうのか?」


カズマ:「オッサンの気持ちはわかるが人材不足なんだ。アンタ程優秀な奴がいれば砦はそいつに任せたいんだが・・・」


マリ:「確かにトライの戦闘能力はドグマ並みにあるのだろうが体は大丈夫なのか?」


カズマ:「トライ、オマエマリを守れるか?」




カズマが尋ねるとトライは真剣な顔で話し始める。




トライ:「僕は皆の敵だったけど今は違う。今までお父さんの言う事を聞いてきたけどモンスターにされた人達を助けたい。」




ドグマが何か言いかけるがカズマが無言でそれを制する。




トライ:「カズマとマリとメイがお城に潜入して機械を止めるらしいけど三人だけじゃ危険だ。僕が一緒に行って三人を守る。」


メイ:「あたしは大丈夫アル!」


カズマ:「俺も大丈夫だ。それよりお前体はどうなんだ?」


トライ:「痛かったけどカズマがうってくれた注射が効いてるから大丈夫。」


カズマ:「まあ鎮痛剤は一度うてば半日は持つから潜入の前にうてばいい。」


マリ:「だが無理しているのは変わりないんだぞ?」


トライ:「僕は大丈夫。命を懸けてマリを守るよ。」




この言葉にマリが顔を赤らめる。


カズマが冷やかすように口笛を吹く。




カズマ:「ヒュー言うじゃねぇかトライ」


メイ:「トライめっちゃカッコいい!」


ドグマ:「茶化すなカズマ!俺は納得できん!」


カズマ:「トライ・・・このドグマ隊長はマリが生まれた時からずっと彼女を守って来た人でな。」


トライ:「そうなの?」


カズマ:「まあいわゆるマリの護衛隊長というか親代わりというか・・・とにかく今までマリの事をずっと守って来たんだ。」




ドグマがフンとカズマから視線をそらす。




カズマ:「そのドグマ隊長がオマエをマリの護衛にするのは反対している。どうする?」




トライは椅子から立ち上がりドグマの所まで近寄った。


その場で土下座をしてドグマにお願いをする。




トライ:「あなたの代わりにマリを守らせて下さい、ドグマ隊長!」




ドグマは立ち上がりトライに向かって怒鳴った。




ドグマ:「立て!小僧!」




ドグマの怒声を受けてトライはゆっくりと立ち上がった。


ドグマは立ち上がったトライの顔面に右の拳を叩きつけた。




がッ!




トライは真正面からドグマの拳を受ける。


顔を殴られてもよろめきもしないトライ。


申し訳なさそうにドグマを見つめるトライ。


そんなトライを見て悔しそうなドグマはもう一発拳をトライの胸のあたりに放つ。




ドゴッ!




先ほどよりも強いパンチだったが今度もトライはびくともしない。




ドグマ:「畜生!」




ドグマは乱暴に椅子に座り腕組みをした。


トライの方を見ずにドグマは自分の思いを語りはじめる。




ドグマ:「俺はな・・・この国に生まれてから、ただただひたすらにこの国を守って来た。」




ドグマの腕に力が入り震えている。




ドグマ:「国王がご存命の時は国王を守り、マリ様が生まれてからはマリ様をずっとお守りしてきた。」




皆は神妙にドグマの言葉を聞いている。




ドグマ:「僭越ながらマリ様の成長を我が子のように思いつつ見守って来た。だがカズマ!お前が来てその状況も変わった!」


カズマ:「え?俺?」


ドグマ:「そうだ!貴様は俺が我が子の様に見守って来たマリ様をさらっていったのだ。」


カズマ:「スイマセン・・・」


ドグマ:「そしてお前と同じ顔の男がまたお願いしてきた!マリ様を守りたいと!」


カズマ:「まあクローンだからな・・・」


ドグマ:「そいつは俺が全力で殴ってもびくともしないくらい強靭だ!忌々しい!」


カズマ:「いや・・・鎧つけてるからなんだけど・・・」




ドグマはカズマのツッコミに気付かない程興奮している。




ドグマ:「トライ!」




急にドグマに呼ばれトライはビクッと驚いた。




トライ:「ハイ!」


ドグマ:「お前約束しろ!何があってもマリ様をまもると!」


トライ:「ハイ!約束します!」


ドグマ:「それから作戦中カズマの命令は絶対だ!わかったな!」


トライ:「わかりました!」




ドグマはトライを睨みつけそれからカズマの方を向いた。




ドグマ:「カズマ!お前マリ様に何かあったらぶち殺すからな!」


カズマ:「オウ!任せとけ!」


メイ:「あたしもマーマ守るよ!オッサン!」




なかなか興奮がおさまらないドグマを見てマリが優しい言葉をかける。




マリ:「ドグマ・・・お前にはいつも助けられてきた。今の私があるのはお前のお陰だ。ありがとう。私が一番信頼するお前にサンライト城の兵達を守ってほしい。お前だけが頼りなんだ。お願いします。」




そう言ってマリはドグマに頭を下げる。


それでドグマの気も大分晴れたようだ。




ドグマ:「頭を上げてください。マリ様。取り乱しましたがもう大丈夫です。私は私の任務を遂行いたします。」


マリ:「ありがとう。お互い生きてまた一緒に笑い合おう。」


ドグマ:「ハッ!ありがたきお言葉。」




ドグマは一礼し涙ぐんだ。


マリはそんなドグマに優しく微笑んだ。




カズマ:「じゃあ作戦は明日の深夜決行する!皆準備に取りかかってくれ。」




その時マナにある不安がよぎった。




『サンライト城が攻撃されたら・・・』

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