第63話 ドグマの思い

カズマとドグマはシュウの治療をマナに託し、再びコンピュータールームへ急いだ。


シュウが命を懸けて届けてくれたシューティングスター城の攻略地図。


それを無駄にしない為にも直ちに行動する。


それがシュウの何よりの願いだろう。


カズマはコンピュータールームへ着くと、シュウの作成した地図をスキャンした。


スキャンされた地図の映像がモニターに大きく映し出される。




カズマ:「ここが城門・・・城の出入り口はここか・・・」


ドグマ:「出入口は一つだけか?」


カズマ:「いや・・・シュウのやつ排水溝やら排気ダクトなんかも調べてやがる。」


ドグマ:「流石だな。」


カズマ:「城に入ってからも食料搬送用のエレベーターで侵入して天守までいける。」


ドグマ:「目標はなんだ?アレクか?」


カズマ:「いや・・・アレクの前にコンピュータールームだ。どこだ・・・」




カズマは各階の見取り図を一つ一つチェックする。


あった・・・天守の下の階。


そこには二重丸がうってある。




カズマ:「よし!コイツがあれば潜入は問題ない。あとはバリアを作っておくか・・・」


ドグマ:「バリア?なんだそれは。」


カズマ:「なんというか・・・マナの結界があるだろ?あれを人工的に作ったものだな。」


ドグマ:「そんなものも作れるのか?」


カズマ:「多分作れるよ。マナの結界を見て思いついたんだ。」


ドグマ:「そいつはシューティングスター城のコンピューターを護る為に使うのか?」


カズマ:「ああ、潜入してすぐにぶっ壊したいところだがまずモンスターにされた人間を元にもどそなきゃな。」


ドグマ:「コンピューターよりもまずアレクをぶっ倒す方が早いんじゃないか?」


カズマ:「いや・・・こうめいって奴にもお仕置きが必要だな。」


ドグマ:「ああ、トライの父親か。」




カズマはシューティングスター城の見取り図を何枚かプリントアウトする。


その後バリア作成のコマンドを入力する。




カズマ:「よし!あとは砦の組み立てとスイートウォーター城との連携だな。」


ドグマ:「砦の組み立ては15分あればできる。問題ない。」


カズマ:「スイートウォーター城への連絡は王女担当か?」


ドグマ:「そうだ。段取りは伝えてあるはずだ。」


カズマ:「予定変更だ。彼らにはサンライト城を守ってもらおう。」




カズマの言葉にドグマが驚く。




ドグマ:「なんだって!?」


カズマ:「出張砦までスイートウォーター城の援軍がくるのを待ってらんないよ。サンライト城に援軍で入ってもらおう。」


ドグマ:「うちの一般兵は持ちこたえられるかね?」


カズマ:「ああ、砦にもバリアを使う。」


ドグマ:「そうか!結界があれば相当な時間持ちこたえることができる。」


カズマ:「問題は電源だな・・・シューティングスター城はコンピューターの電源が利用できるがこっちは発電機がいるな。」




そうつぶやくとカズマはバリアと発電機を作成する追加のコマンドを入力した。




カズマ:「こいつの使い方を教えなきゃな・・・オッサン頼みがある。」


ドグマ:「なんだ?」


カズマ:「オッサンは砦の仕切りを頼む。」




ドグマはカズマの依頼に猛然と反発した。




ドグマ:「なんだと!?俺は嫌だ!シュウをあんな目に合わせた奴に一発喰らわしたい!」


カズマ:「ああ、気持ちはわかるがこれは命令だ。従えないなら全てから外れてもらう。」




ドグマはカズマの胸ぐらを掴み詰め寄った。




ドグマ:「貴様!なぜだ!」


カズマ:「この作戦は手早くスムーズに行わなきゃ成功しない。今からバリアの使い方を託せるのはオッサンしかいないんだ。」


ドグマ:「・・・」




ドグマは無言でカズマを睨みつける。




カズマ:「全ての状況が変わったんだよオッサン。シュウがいたらアイツに任せる仕事だった。」




ドグマはハッとしてカズマを掴む手を離した。




カズマ:「頼む・・・オッサン。」




カズマはドグマに深々と頭を下げた。


ドグマはフーと深呼吸して自分の頭を冷やした。




ドグマ:「わかったよ司令官殿。オマエの命令は軍事上絶対だ。従うよ。」


カズマ:「助かるよ。」


ドグマ:「だが一つ聞きたい事がある。」


カズマ:「なんだ?」


ドグマ:「オマエ、今後マリ様をどうするつもりだ?」




ドグマの指摘にカズマは言葉がでなかった。




ドグマ:「オマエはこの世界を救ったら旧世界へ戻るのだったな?マリ様をどうするつもりだ?」




カズマに詰め寄るドグマ。


カズマは少し沈黙した後答えた。




カズマ:「まだ返事をもらってないんだが、マリは旧世界へ連れて行く。」


ドグマ:「そうなのか!?」


カズマ:「ああ、メイも一緒だがな。」




ドグマはカズマの両肩を掴んで言った。




ドグマ:「俺はマリ様が生まれた時から護衛してきた・・・国王様がマリ様を俺に託してくだされたこともあるが・・・」




そう言ってからドグマは涙目で訴える。




ドグマ:「それ以上にマリ様は俺にとって希望の光だった!太陽だったのだ!」


カズマ:「・・・」


ドグマ:「そのマリ様を守る作戦には参加できず、世界が救われた後にマリ様はいなくなってしまう!これがどんなに悔しい事かわかるか!?」




ドグマの気持ちが痛いほど伝わってきた。


だがカズマは何も言わない。


ドグマはカズマを放した後、後ろを向き、涙を腕で拭った。




ドグマ:「約束しろ!カズマ!何があってもマリ様を守ると!」


カズマ:「ああ、約束する。」




ドグマは大きく鼻をすすりカズマに向き直った。




ドグマ:「ガハハ!ヨシ!じゃあ早速バリアと発電機の使い方を教えろ!」




ちょうどいいタイミングでピーと音がなり、バリア装置二台と発電機が完成した。


カズマは機械の使い方をひととおりドグマに実践して説明をはじめた。




『すなねぇ・・・オッサン・・・』




カズマは心の中でドグマに謝罪した。

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