第62話 シュウの帰還

カズマとドグマが寺院へ着くと5人の僧侶がシュウの治療をしていた。


そのうちの一人がカズマとドグマの二人に気付いた。




僧侶:「ドグマ様!マナ様はまだ来ませんか?」


ドグマ:「今呼んでいる!どういう状況だ!」


僧侶:「とても危険な状態です!今止血している所です。」




カズマとドグマがシュウを覗き込むと凄惨な光景が目に飛び込んだ。


シュウは血まみれで片腕を失っていた。


両目と鼻、耳、口から血が流れている。


よく見ると手と足の爪が全てはがされている。




カズマ:「拷問か・・・」


ドグマ:「なんてことしやがる!」




ドグマは怒りのあまり壁を力いっぱい殴った。


カズマはやや震えながらシュウの耳もとに顔を近づける。




カズマ:「シュウ・・・聞こえるか?」




一瞬シュウの体がピクッと反応する。


口が開き何か語ろうとする。




カズマ:「しゃべらなくていい!今マナが来るから安心しろ。それだけだ。」




なおも何かを伝えようとするシュウ。


残された右手で尻を指さす。


カズマはハッと表情を変え、一人の僧侶をつかまえる。




カズマ:「オイ!ワセリンはあるか?」


僧侶:「はい、その棚の一番上にあるビンです。」




カズマはワセリンを取り出し手に塗り付ける。


そしてシュウの体を横にして膝をおりまげさせた。




カズマ:「少しガマンしてくれ・・・」




カズマはシュウにそう言うとワセリンを塗った指をシュウの尻の穴に突っ込んだ。


ビクビクと体を痙攣させるシュウ。


カズマは指を一本づつシュウの尻の穴に突っ込み中を探る。




『あった!』




カズマはシュウの尻から筒を取り出す。


途端にシュウは痙攣を止め、動かなくなった。


完全に気を失ったようだ。




ドグマ:「カズマ、そいつは何だ?」




そう言いながらカズマに近づくドグマ。


カズマの怒りの表情に気付いてドグマは言葉を失った。


その時マナが寺院へ到着した。




マナ:「ごめんなさい・・・遅くなりました・・・」




ハァハァと息をきらしてシュウの元へ駆け寄るマナ。


シュウの様子を見ると顔が真っ青になる。




マナ:「こんな・・・ひどい・・・」




マナは震える手でシュウの胸と頭の上に手をかざす。


シュウの表情が心なしか穏やかになった。


みるみると傷がふさがり流血が止まる。


マナの両目から涙がボロボロと零れ落ちる。




マナ:「シュウ様・・・死なないで・・・」




カズマはシュウから取り出した筒を洗い、中を開けた。


中からはシューティングスター城とその周辺の地図が描かれていた。


外部からの侵入経路の場所とたどり方が細かに書いてある。


シュウが自分の命を懸けて全うした使命。


命令したのはカズマだ。


危険はお互い承知していた。


だが現実のものとなった今、激しい後悔がカズマを襲う。


その時シュウの言葉がカズマの頭に思い浮かんだ。




『気休めはいいっすよ司令官どの。戦争で人情を出しちゃ勝てねぇべ。』




カズマ:「だよな・・・すまねぇ相棒・・・」




そうつぶやくとカズマは寺院を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る