第59話 処遇
暗殺者を返り討ちにしたものの、衛兵一人が死亡したという情報は瞬く間にサンライト城に広まった。
死亡した衛兵の名はマイク。
家族は両親だけで、両親はサンライト城下に住んでいた。
カズマとドグマは両親にマイクの遺体を届け、マイクの死を詫びた上で彼の武勇を称えた。
マイクの両親は泣いて悲しんだが、『息子を誇りに思う。勇者様自らご足労ありがとうございました。』とカズマの手を強く握り感謝してくれた。
マイクを殺害したトライの処分についてカズマが述べるとマイクの両親は恩赦を願い出た。
元々農耕民族で『羊の民』と評されていたJシェルターの民には処刑というものに馴染みがなかったのだ。
カズマはマイクの両親にトライの処刑を保留すると告げ、マイクの葬儀をさせてほしいと願い出た。
しかしマイクの両親は身内だけで密葬することを希望したのでおとなしく引き下がるしかなかった。
深々とお辞儀をした後、カズマとドグマはマイクの両親の家を出て、サンライト城に戻った。
サンライト城に戻る道中カズマとドグマはトライをどう扱うか悩んでいた。
ドグマ:「カズマよ・・・オマエの弟どうする?」
カズマ:「また腹に喰らわすぞ?オッサン・・・」
ドグマ:「本当に処刑するつもりか?」
カズマ:「さあな・・・アンタはどうしたい?」
ドグマ:「う~ん・・・実は処刑っていうのは俺たちのコミュニティでやった事ねぇんだよ。」
カズマ:「そうなのか?」
ドグマ:「ああ、犯罪そのものがうちでは滅多になくってなぁ。それも大体は外部から来た奴らがする悪さでな。」
カズマは眉間にしわをよせながらドグマの話を聞いている。
ドグマ:「そんな些細な悪さも大体マリ様の恩赦で許されているんだよ。」
カズマ:「衛兵達は殺気だってたがそれについてどう思う?」
ドグマ:「トライの強さのせいだな・・・ありゃバケモンだ。」
カズマ:「・・・」
ドグマ:「鎖でガチガチに縛った上に大の大人6人で押さえ付けていたのを吹き飛ばしたんだ。敵として生かしておけば手が付けられんだろう。」
カズマ:「オッサンは恩赦派か?アイツはコントロールできるかどうかわからんぞ・」
ドグマ:「俺はアイツの素性を知っちまったからなぁ・・・」
カズマ:「同情してんのか?」
ドグマ:「アイツはオマエさんのクローンでBシェルターのクソ野郎に人体実験されてたんだろ?」
カズマ:「ああ・・・」
ドグマ:「オマケにマナの見立てじゃいつ死んでもおかしくないほどボロボロの状態なんだろ?」
カズマ:「そうみたいだな・・・」
ドグマ:「変な話だが、もしアイツがオマエだったらって考えちまうのさ。」
カズマ:「・・・」
カズマの反応が鈍いのでドグマは気まずくなった。
ドグマ:「悪い・・・今のは忘れてくれ・・・」
カズマ:「いや・・・いいんだ・・・ありがとう・・・」
ドグマ:「お前に礼を言われると気持ち悪い!」
カズマ:「正直に言うとトライの扱いをどうしたらいいか悩んでいる。」
ドグマ:「アイツは処刑しなくてもいずれ死ぬんだろ?だったら結界の中に監禁していればいいんじゃないか?」
カズマ:「そうだな・・・」
『あとはマリがどう出るか・・・』
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