第27話 初陣

カズマはモンスター軍が来るまでのタイムスケジュールを決めていた。




6:00 マリとの訓練


8:00 メイと朝食


8:30 メイと訓練所で組手


10:00 闘技場の視察


12:00 メイと昼食


12:30 チーム「阿修羅」の訓練及び会議


14:00 闘技場の視察


18:00 メイと夕食


18:30 メイの勉強


20:00 コンピュータールームで雑務(鎧の作成、監視カメラの映像確認など)


22:00 就寝




このタイムスケジュールで二週間を過ぎる頃には一般人全てに鎧を支給し、闘技場の訓練に力を注いだ事で国内の軍事防衛力は格段にあがっていた。


チーム訓練にはVRゴーグルを使用してのバーチャル戦闘訓練を行い、チームの連携プレイを作り上げた。


オーク、ゴブリン、トロール、リザードマン、ゾンビのデータをゲーム内で忠実に再現し、対抗策も考えられた。


シュウとドグマは剣と槍による防衛よりもHighpressuregunの訓練を進めた方がいいと提案した。


武器に慣れていない一般人は操作を誤らない限りHighpressuregunを使用した方がモンスターに対抗できるという理由からであった。


カズマもこれには同意見だったので、Highpressuregunを増産し、全ての男性に支給して訓練する事に決めた。


全てが順調に進む中予想より早くモンスター軍が襲来した。




朝の4時。


サンライト城の城門にオークとゴブリンの軍団が迫っていた。




ゲド:「この時間ならば皆寝ているだろう。」




ゲドはヒッヒッヒとずる賢く笑った。


サンライト城の城門が見えてきた。




ゲド:「さあ、お前ら!城門が見えてきたぞ!まずあそこに突進するのだ!」




ゲドがそういうとオークとゴブリン達は一斉に城門へ向かった。


そこに城門の上からいくつもの光が当てられる。


城門からの光でゲド達は目がくらんだ。


城門の上に何者かが立っている。


ゲドは薄目でその人物を見て叫んだ。




ゲド:「だ‥誰だキサマ。」




拡声器の声が響く。




カズマ:「はーい、モンスターの皆さんお疲れ様~。私この度サンライト城に現れました勇者様です。以後お見知りおきを~。」


ゲド:「勇者だと?フン、そんな奴このモンスター達の相手になるかな?」


カズマ:「そうですね~降参すると言ったらどうしますか~?」


ゲド:「我々に降伏は許されん!死あるのみだ!いけオマエ達!」




ゲドがモンスター達に命令するとモンスター達は叫び声をあげて再び城門に向かう。


そこへギューンギューンとHighpressuregunが発射される。


二、三秒後モンスター達が内部から爆発していく。




ゲド:「ななな何ぃ!?」


カズマ:「じゃあ俺たちもお前らに降伏は許さん。全員射撃よーい。」




カズマが片手をあげて構える。




カズマ:「うて~!」




カズマの合図と共に城門の上に登っているサンライト城の兵達がHighpressuregunを撃ちまくる。


ギューン・・・グシャッ!ギューン・・・グシャッ!とモンスター達は次々と粉々になっていく。


ようやく城門にたどり着いても真上から撃たれて破裂していくモンスター達。


五分もしないうちにモンスター軍は残り2,30体まで減っていた。




ゲド:「キ・・・キサマ何をした!?魔法か?」


カズマ:「うーん、ちょっと違うけど・・・ま、それでいいか。」


ゲド:「卑怯だぞ!正々堂々と戦え!」




その言葉を聞いてカズマの目が鋭くなった。




カズマ:「正々堂々だと?よく言うぜ。皆が寝静まっている頃にモンスターの軍勢で奇襲する奴の正々堂々って何だ?」




そう言うとカズマは城門から外へ飛び降りた。




カズマ:「いいぜ、剣で正々堂々やってやるよ。チーム阿修羅が相手になるぜ。」




城門が開き、メイ、シュウ、マリ、ドグマが出てくる。


カズマの所に来ると陣形をとる。




ゲド:「はははは~バカめ~潰してくれる!いけ!お前ら!」


カズマ:「おせぇよ!行くぜ!皆!」




カズマの合図と共にチーム阿修羅はモンスター達に突進した。


メイがまず突進してゴブリンに拳の連打を浴びせる。


ナックルガードを装着した拳はゴブリン達を吹き飛ばしていく。


その横を並走してシュウが刀を鋭く振り回す。


オークが何体か切り刻まれバラバラになった。


その背後からゴブリンがとびかかっていく。


カズマとマリはすかさずゴブリンを斬りつけメイとシュウをフォローした。


ドグマは雄たけびをあげて横によけたモンスター達を槍で横殴りにする。


ドグマの一撃でモンスター5体が吹き飛び砕け散っていた。


そうして全てのモンスターが殲滅され、ゲドは尻もちをついて震えていた。


ゲドに迫り見下ろすカズマ。




ゲド:「ごごごごめんなさい。い命だけは・・・」




カズマはニッコリとほほ笑んだ。




カズマ:「やだね。」


ゲド:「そんな~あなた勇者様でしょ?全世界を救う勇者様でしょ?だったら助けてくださいよ。ねっ?ねっ?ねっ?」




カズマは再び鋭い目で睨みつける。




カズマ:「Aシェルターの人間をウイルスに感染させて逃がしたな?感染した人間は全て殺してしまった・・・オマエ責任とってくれるか?」


ゲド:「わ・・私は知らない・・・多分アレク様の指示だ。」


カズマ:「アレク?そいつが覇王とか名乗ってる奴か?」


ゲド:「そそそそうだ・・いやそうです。この攻撃もアレク様の指示なんです。だから命だけは・・・」




カズマは少し考えてからゲドに馬を与えた。




ゲド:「逃がしてくれるんですか?」


カズマ:「ああ、Bシェルターに帰ってアレクに伝言を頼む。」


ゲド:「わっかりました~。で?なんてお伝えしますか?」




カズマはゾンビの牙を取り出し、ゲドの足に傷をつけた。




カズマ:「必ず会いに行くから待っていろと伝えな!」




そう言うとカズマは馬の尻を叩いた。


ゲドは十分離れると高らかに笑った。




ゲド:「ヒャハハ~覚えてろよ!必ずアレク様がオマエを殺すからな!」




ゲドをあえて逃がした事をドグマは驚いている。




ドグマ:「カズマ!いいのか?」


カズマ:「いいんだよオッサン。あいつにはゾンビウイルスを注入した。Bシェルターに着いた後ゾンビ化しているだろう。」


ドグマ:「そ、そうなのか?」


カズマ:「ああ、この牙でアイツの足に傷をつけた。」




カズマはニヤリと笑った。




ドグマ:「オマエ・・・恐ろしい奴だな・・・」


カズマ:「それより、チーム阿修羅いいコンビネーションだよ。」


ドグマ:「ああ、初陣は完全勝利だったな。」


シュウ:「いんや、指揮官があれだと当然だべ。次はこうはいがねぇだ。」


カズマ:「まあ、確かに色々上手く行き過ぎだがこれはこれでいいんだよ。完全勝利は士気があがる。」




そういうとカズマは城門の兵達に叫んだ。




カズマ:「よくやった皆!皆のお陰で完全勝利できたぜ!今夜は城で宴だ!酒や食事は全て用意するから皆参加してくれ!」




カズマが拡声器で叫ぶと、城の兵達は湧き上がった。


あわててドグマが止めようとする。




ドグマ:「バカ!カズマ、オマエまた勝手な事を・・・」


カズマ:「今日ぐらいいいじゃねぇか。また明日からモンスターの攻撃に備えて訓練するんだ。アイツらの頑張りを労いたいんだよ。」


ドグマ:「それはいいがマリ様の許可をとれと言ってるんだ!」


カズマ:「あ・・・」




カズマはゆっくりとマリを見た。


マリは腕を組んで微笑んでいるがカズマを見るその目は笑っていない。




カズマ:「あ、あの~マリちゃん?」


マリ:「勇者様、何度言ったらわかってくださるのかな?城は貴方の所有物ではないし、500人分の食料と酒を振る舞うという事がどういう事かおわかりですか?城にはそんな余裕はありませんぞ?いかがなさるおつもりですか?」




マリの口調は丁寧すぎて怖かった。




カズマ:「ああ、それなら大丈夫。資源プラントに腐るほど食料と酒が備蓄してある。そいつらを食べてほしいんだ。」


ドグマ:「何ぃ!?貴様なぜそれを早く言わん!」




マリの代わりにドグマがカズマに詰め寄る。




カズマ:「備蓄している食料には限りがあってな。しかも一度備蓄庫から出すと保存がきかない。備蓄庫は4つあるが一つに500人分の食料と酒があるんだ。こんなの宴会とかお祝いでしか使えねぇだろ?」




マリは相変わらず微笑んでいる。


丁寧な口調でカズマに話し始める。




マリ:「そうですか、流石勇者様。その備蓄していた食料を宴に使用するのですね。一度に500人分の食料を準備した後の調理方法もご自分でお考えのようですね。ならばお言葉に甘えて私達は勝利の宴に参加させていただきます。宴の準備は全て勇者様にお任せします。その事も全てお考えでしょうから・・・」


カズマ:「え?ちょちょっと?マリちゃん?」


マリ:「我々には到底できない事をなさるとは流石です。うーん流石。」




ウンウン頷きながらカズマに背を向けて他のシュウ、メイ、ドグマを連れて城門の中へ向かうマリ。


あわてておいすがるカズマ。




カズマ:「マリちゃん!やっぱり怒ってるだろ?」


マリ:「怒ってなどおりませぬ。我らはもうひと眠りいたします。宴を楽しみにしております勇者様。」




マリはカズマに一礼して馬に乗り城へ帰って行った。


呆然としているカズマに一同がカズマコールを送る。




カズマ:「俺一人で?マジかよ・・・」

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