第20話 難民

シュウの農園は割とサンライト城から近い所にあった。


シュウの畑ではトマトのような野菜が栽培されていた。


シュウは首にタオルを巻いて、畑の様子を見て回っていた。


ドグマはシュウに声をかけた。




ドグマ:「シュウ!今いいか?話がある。」


シュウ:「ドグマ隊長。いいっすよ、ちょうど今時間あるっす。」




シュウはカズマ、ドグマの二人を自宅に案内した。




シュウ:「ハイ、お茶ですだ。」


ドグマ:「ああ、ありがとうシュウ。」


カズマ:「いただくよ。」


シュウ:「どうぞ。で?今日は何の用件だすか?」


ドグマ:「シュウ、スマンがお前の力を貸してくれないか?」




カズマはズズズと無言でお茶をすすっている。




シュウ:「ドグマ隊長、オラは昔傭兵やってますた。そこで散々戦争やってきたんです。オラは黙って農家してぇっス。」


ドグマ:「こちらが戦争を嫌がっていても向こうは攻めてくるんだぞ。黙って殺されてもいいのか?」


シュウ:「隊長そうじゃねぇっスよ。戦争しても勝つ方は皆殺しまではしねぇっス。死ぬのは戦争に参加した人間だけで、上の人達の段取りで戦争は終わります。結局最初から戦争参加しなけりゃ誰も死なねぇっス。」


ドグマ:「今まではそうだったかもしれんが今回は違うぞ!今度の敵はモンスターだ。モンスターに命乞いは通じないぞ!」




そこへ守衛の一人がドグマを呼ぶ声が聞こえた。




ドグマ:「なんだ?外か?」




ドグマ達がシュウの家から出ると、守衛の一人がドグマを探していた。




守衛A:「あ、ドグマ隊長一大事です。」


ドグマ:「どうした、落ち着け!」


守衛A:「ハッ、実はたった今Aシェルターの難民が城門に来ています。至急城門まで来てください。」


ドグマ:「難民くらい受け入れればよかろう。王女様の許可はあるはず。」


守衛A:「違うんです。難民はモンスター化して城門を破ろうとしているんです。守衛達は混乱状態です。隊長のご指示をください。」


ドグマ:「何?わかったすぐ行く。カズマ、オマエも来てくれ。」


カズマ:「いいよ。シュウ、アンタも来るんだ。」


シュウ:「え?オラは・・・」


カズマ:「戦わなくていいからちょっと今回の敵を見てくれ。そして感想を聞きたい。」




カズマ達はまず城へ戻り、馬に乗って城門まで急いだ。


城壁を強化したとはいえ、モンスターに対してどれだけ耐久力があるかはわからない。


直ちに対応しないとモンスターの侵入を許しかねない状況だった。


幸いにもカズマ達が門に到達した時には城門は破られてはいなかった。


城門の中に数名Aシェルターの難民が避難していたが、外には逃げ遅れた難民もいた。


見張り台に登り、城門の外側を見るとそこは凄惨な光景が広がっていた。


ゾンビ化した人間が逃げ遅れた難民を襲い、肉を喰らっていた。


襲われた人間は悲鳴をあげ助けを呼んでいる。




カズマ:「オッサン、Highpressuregunを貸せ!」


ドグマ:「ああ、これだ。」




ドグマがカズマにHighpressuregunを渡すとカズマはゾンビの一体に照準を合わせた。


引き金を引くとギューンと音がして、二、三秒後にゾンビが内部から破裂する。


他のゾンビにもHighpressuregunでの攻撃を続け、ようやく全てのゾンビを殲滅する。


城門の外は粉々に飛び散ったゾンビと逃げ遅れた難民達の死体が横たわり、真っ赤な血に染まっていた。




ドグマ:「酷いな・・・」




ドグマがあまりにも悲惨な現場から目をそらす。


その時城門の内側に逃げ延びた難民の一人がもだえ苦しみはじめた。


ゴキゴキゴキと音をたてて肌がどす黒く変わっていく。




カズマ:「そいつから離れろ!シュウ!」




難民のケガの手当てをしようとしていたシュウにゾンビが襲い掛かる。


シュウは人間のゾンビ化を目の当たりにして固まっていた。


ギューンと音がしてゾンビの動きがとまる。


それから二、三秒後にゾンビが内側から破裂する。


シュウは恐怖で息が乱れていた


震えがとまらず立ち尽くしていた。




ドグマ:「外の奴もゾンビ化するぞ!」




城門の外で襲われ死亡した難民達の体がゴキゴキゴキという音とともにどす黒く変化する。


ヨロヨロと立ち上がり、城門にすがりこじ開けようとする。


カズマはHighpressuregunで第二陣を殲滅する。




カズマ:「フー、これで一段落だが・・・」




カズマはAシェルターの難民達に目をやった。




カズマ:「オイオッサン、Aシェルターの難民全員の手足を拘束して個別に牢屋に入れてくれ。大至急だ。」


ドグマ:「あ、ああ、おい衛兵。手錠と足錠をそいつらにつけろ。個別に牢屋に隔離だ。」




カズマはHighpressuregunをドグマに返し、まだ震えているシュウに近づいた。




カズマ:「オイ、シュウ。シュウ!」




大声で呼ばれたシュウはようやく正気を取り戻し、カズマの目を見た。




カズマ:「見たか?今度の敵はあいつらだ。話し合いが通じる相手か?上だけで話つける前に皆殺しにされちまう戦いなんだよ。うまく逃げ延びても一度やつらに噛まれたらあんな風にゾンビになって仲間を襲う。やつらを見た感想を聞かせてくれ。」


シュウ:「あんな・・・化け物・・・あれは人間じゃない・・・」


カズマ:「そうだな・・・だがあいつらは元々人間だったんだ。それを改造しちまった奴らがいる。」


シュウ:「早く止めないと・・・オラに何ができます?」


カズマ:「俺と一緒に奴らの本拠をつぶす。そして改造された奴らを元に戻すんだ。」

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