第21話 マリの訓練
次の日カズマが朝6時きっかりに訓練場に行くとマリは既に来ていた。
強化ゴムの武具を装着し、刀を腰に備えて正座していた。
カズマ:「やけに早いな。やる気マンマンじゃないか。」
マリ:「そそそんな事ない・・・き貴様が遅いのだ・・・」
『相変わらずわけがわからんな・・・』
そう言いながらカズマも鎧を装着する。
そして用意していた木刀を二本取り出し、一本をマリに手渡した。
カズマ:「今日はこいつを使う。腰の刀は置いてくれ。」
カズマがそう言うとマリはいそいそと刀を外し、端の方に置く。
カズマ:「中央に来て構えてくれ。」
マリが木刀を中段で構えるとカズマも中段で構えた。
カズマ:「さあいつでもかかってきな。」
マリは少し深く息を吸い込み気合とともにカズマに打ち込んだ。
マリ:「ヤアー!」
カズマの頭に振り下ろされたマリの一太刀目はなんなく木刀で受け止められる。
マリは一歩下がり再び中段で構えてじりじりとカズマに近づく。
マリ:「ヤアー」
再びマリが叫び今度は二度三度と木刀を打ち込む。
カズマはそれらを全て受け止め押し返す。
マリの息が乱れる。
カズマ:「OK,一旦休みだ。」
マリ:「ハァハァ・・・まだ大丈夫だ・・・」
カズマ:「いや、ちょっと聞きたい事がある。アンタに剣を教えたのは誰だ?」
マリ:「誰に教えられたものでもない。父上の剣術を見よう見まねで覚えた。」
カズマ:「なるほど・・・我流か・・・」
カズマは少し考え、マリの剣術の評価をはじめた。
カズマ:「アンタの剣術はオヤジさんのマネのようだが、アンタとは相性があまり良くないみたいだ。オヤジさんの剣術は豪快な力押しのタイプだ。筋肉ムキムキの男じゃないと数回の攻撃で疲れてしまう。マリちゃんの筋肉だともっとコンパクトにしなやかな動きをした方がいい。力みすぎずにスピード重視で・・・こう!」
カズマは木刀で大きめの×の字をヒュンヒュンと音を立ててすばやく描く。
マリも同じように木刀を振り回す。
カズマ:「まだ力がはいりすぎかな?腕に力を込めず鞭のように振り回す感じで。」
マリ:「こうか?」
今度はヒュンヒュンと音がした。
カズマ:「そう!今度はそれでかかってきてくれ。」
カズマは間合いをとり中段で構える。
マリも中段で構え、息をととのえカズマに木刀を向ける。
ダッシュとともに木刀を振り上げ右に左に大きめの×を描く。
カズマはあとずさりながら悉く木刀で受け流す。
カンカンカンカン・・・・
木刀が打ち付ける音が訓練場に響き渡る。
カズマがこらえきれず後ろに倒れてしまった。
カズマ:「いててて・・・参った。」
息をきらしながらマリは倒れているカズマに木刀を鼻につきつけた。
マリ:「もう一番だ。防戦一方なのは気遣いか?」
カズマ:「ばれたかw。よしもう一丁。」
今度はすさまじいスピードで打ち合いが始まった。
マリとカズマは互角に渡り合っている。
つばぜり合いになり顔が近づく。
カズマ:「やるじゃないか」
カズマにそう言われるとマリは顔を赤らめてサッと後ろに身をひく。
カズマ:「どうした?」
マリ:「いや・・・なんでもない。」
マリは深呼吸をして再びカズマに突進する。
またカンカンカンカンと木刀の打合いが何度か続き、カズマの一撃がマリの左肩に叩き込まれる。
マリ:「痛くない・・・この鎧のお陰か・・・」
そう言って肩を押さえるマリ。
カズマ:「ああ、そうだな。今日はこの辺にしておこうか。」
カズマがマリに背を向けようとした瞬間。
マリ:「あっ、ちょっと・・・」
マリはカズマを引き止めようとしたがやめた。
カズマ:「ん?なんだい?」
マリ:「いや、ありがとう稽古をつけてくれて。」
ややトーンの落ちた声でマリはカズマに礼を言う。
カズマ:「明日も同じ時間にここに来てくれ。昼にはチームでの戦い方の訓練するから。それまでさっき教えた素振りを二時間自主訓練してくれ。」
マリ:「明日も訓練してくれるのか?」
マリは嬉しそうにカズマに聞いた。
カズマ:「ああ、他の連中にも訓練しなきゃならないからあまり時間取れないけどね。もし俺が遅れてくるようなら先に自主訓練しててくれ。」
マリ:「わ・わかった!や・約束だぞ!」
マリの顔がまた真っ赤になっている。
『なんだ?キャラ変わったか?』
マリの反応に変化を感じながらもカズマはあえてスルーした。
カズマ:「おお、約束約束~」
そっけない返事でカズマが訓練所を出ていくとマリは深呼吸を何度かして呟いた。
マリ:「どうしたんだ・・・一体・・・」
マリは自分らしくない自分を吹き飛ばすかのように素振りをはじめた。
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