第18話 第一回チーム会議

マナの情報処理能力や事務能力は優秀だった。


カズマが計画したことを指示された以上にくみ取りそれを適材適所に段取りしていた。


何よりカズマの入室の様子を見て、未知の言語を読解したことにカズマは脱帽していた。




『こりゃ本当の天才だな。これでかなり気分的には楽になったぜ。』




マナが使える事でカズマの負担はかなり減ったが、まだまだ悩みは多かった。


カズマには敵の本拠地の占拠という難題が立ちはだかっていたのである。


何しろわずかな期間でモンスターを撃退し、DNA改造設備を破壊しなければならないのだ。


人員も訓練期間も足りなかった。


その為、一般兵は城と自分達の防御に専念させ、選抜チームによる特攻を行うという作戦を考えていた。


そのチームに不可欠である回復メンバーはカズマにとって悩みの種だったがこれも解決した。


マナが制限なく白魔法が使えるならばこれ以上の人材はいない。


カズマはコンピュータールームに円卓と椅子を用意し、第一回目のチーム会議を始めた。




カズマ:「では第一回目のチーム会議を始める。今日はチーム名の発表とそれぞれの役割分担をする。」




誰の指示を受けるまでもなくマナが書記をする。


カズマはそれに気づきニヤリとした。




カズマ:「まずチーム名だが『阿修羅』はどうだ?阿修羅とは闘いの神でこれからの俺たちの任務にピッタリの名前だ。」


ドグマ:「俺たちの任務とは具体的になんだ?」


カズマ:「敵地へ侵入して本拠をぶっ叩く」


マナ:「まさに阿修羅ですね・・・」


ドグマ:「オイオイオイ、無茶いうぜ・・・」


カズマ:「単純に言ったら確かに無茶だな。だが一人一人がチームで自分の役割をキチンと果たすことができれば不可能じゃないんだ。」


メイ:「私は何するアル?」


カズマ:「メイは俺と先頭で突っ込み、マリちゃんはそのサポートだ。


マナは万が一の時の回復。全員の防御はオッサンの仕事だ。」


メイ:「やたっ、パーパと一緒♪」


ドグマ:「俺だけで全員の防御をするのは厳しいな。」


カズマ:「攻撃がもう一人いれば俺が防御に回れるんだがな。」


ドグマ:「シュウは誘わないのか?」


カズマ:「断られたよ。まあ仕方ないさ。


オッサンがHighpressuregunを使えるようになれば防御もかなり楽になるはずだよ。頼りにしてまっせ。」


ドグマ:「フン・・・また調子のいい事言いおって。」


メイ:「パーパ、ワタシ暇だよ。遊んでよ~。」


カズマ:「よーしじゃあしりとりだ。池そうだマナ!オマエこの国の奴で攻撃で使える奴知らないか?」


マナ:「私の知る限りではドグマさんとシュウさんですね。体力測定でも飛びぬけている人は見当たりませんでした。」


メイ:「ケンカ」


カズマ:「やっぱな・・・他の国の人材スカウトする事はできるか?か・・カズマ」


マナ:「わかりません。でもAシェルターの生き残りの中に希望者がいるかもしれませんね。」


ドグマ:「我が国と外交しているシェルターもいくつかあるが使える奴がいるかは疑問だ。」


メイ:「あ!マーマ!」


カズマ:「Aシェルターの生き残りっていっても負けた奴らだろ?参加希望されても足手まといだぜ。ん?マーマ?」




嬉しそうに叫ぶメイに一同は凍り付いた。


チラリと後ろを振り返るとそこにはマリが立っていた。




マリ:「私も会議に参加させろ・・・」




不機嫌そうに立っているマリ。


マナがあわてて席を用意する。


マリが席につくとシーンと場が静まった。


誰も話す者がない中メイが口を開く。




メイ:「マーマまだ機嫌悪い。パーパとケンカ中?」




それを無視してマリがマナに質問する。




マリ:「マナこれまでの状況を説明してくれ。」


マナ:「えとえとえと・・・Bシェルターとの戦争におけるカズマ様の戦略ですが、まず一つ目として一般兵は城及び自分達の防衛にあたる。二つ目として特殊チームの編成を行い、敵の本拠への特攻を行う。このチーム名が「阿修羅」チームメンバーは現在カズマ様、マリ様、ドグマさん、メイさん、私の5人です。攻撃、サポート、防御の役割を各自に分担するようですが、人員が不足しています。」




スラスラとメモを読み上げるマナにまたドグマはポカンと驚いていた。




マナ:「特殊チームの不足人員を他国やAシェルターからスカウトする案もありますが、あまり期待できないようです。そしてカズマ様とメイ様のしりとりはメイ様の『マーマ』で終っています。」


カズマ:「あ、そうだったな。ま、まくら。」


メイ:「ら~?『ら』は難しいよパーパ。」


マリ:「カズマ、シュウはどうした?」


カズマ:「断られたよ。戦争したくありません。人殺したくありませんだと。頑張れメイ、『ら』なんか一杯あるから考えろ。」


マリ:「アイツは元々他国の傭兵だったが、戦争に嫌気がさしてこの国の農民として暮らし始めたからな。」


カズマ:「他の国から誰かスカウトできないか?マリちゃん。」


メイ:「ら~ら~ら~」


マリ:「一番近くの国とは親交があるから聞いてみる。他の国には外交文書を送った。同盟が成立する可能性は低いな。」


ドグマ:「カズマ!前から思っていたがそのマリ『ちゃん』はやめろ!無礼だ!」


カズマ:「なんだよ今更・・・別にいいだろ?マリちゃん。」


メイ:「裸族!」


マリ:「ドグマ、この男はこういう奴だ。放っておけ。そんなことよりもう一度シュウに声をかけてみてはどうだ?」


カズマ:「倉!ダメもとで誘ってみるか。」


メイ:「パーパずるい~また『ら』だよ~」


カズマ:「負けをみとめるか?負けたら城の周り10週な。」


メイ:「ら~ら~ら~」


マリ:「あとカズマ、私の武具はどうした?」


カズマ:「あ、忘れてた!・・・ってんなわけねぇだろ。防具はここにあるよ。武器は刀を用意した。」


マリ:「一般人に支給した刀を見たが何か仕掛けがありそうだな?」


メイ:「ら~ら~ら~・・・う~」


カズマ;「ああ、柄の部分にボタンがあり、そこを押すと刀身をレーザーカッターが覆うようになってる。」


マリ:「レーザーカッター?」


カズマ;「簡単にいうと光の刃だな。どんなものでも真っ二つだ。」


マリ:「そうか、それを貸せ。オマエで試し切りしてやる。」


メイ;「ラーメン!」


カズマ:「ハイ、『ん』がついたから負け~。」


メイ:「ちぇ~」




ぶつぶつ言いながらメイはコンピュータールームを出ていく。




カズマ:「強化ゴムの鎧をつけていたらレーザーカッターは無効だよ。残念でした~」


マリ:「チッ!」


カズマ:「あと何か聞きたい事、言いたい事ないか?なんでも聞くぞ。可能な限りな。」




カズマが皆に聞くとドグマとマナが挙手した。




カズマ:「じゃあまずオッサン」


ドグマ:「Highpressuregunをくれ。あと使い方を実践させてほしい。」


カズマ:「よし会議終わったら闘技場いくぞ。次マナ。」


マナ:「あ、あ、あの、私も防具ほしいです。」


カズマ:「あ、オマエのは完璧に忘れてたw今から作るからちょっと待ってな。身長、胸囲のデータはあるか?」


マナ:「は、はい、もう用意してあります。これです。」


カズマ:「さすがマナちゃん、仕事が早いねぇ。」




そういうとカズマはコンピューターにマナのデータを打ち込んだ。




カズマ:「インプット完了っと。よし!5分後にできるから待っててな。そうだ打合せしたいことがあるから防具できたら一緒に闘技場来てくれ。じゃあ後は終了でいいな?では解散!」


マリ:「ちょっと待て!」




皆が立ち上がろうとした時マリが待ったをかけた。




カズマ:「なんだ?何か聞きたい事あるのか?いいぜ、言ってみ。」


マリ:「カズマ・・・わ・・・私にも訓練をしろ・・・」


カズマ:「は?訓練?」


マリ:「そそそそうだ、訓練だ!ほ、他の人間に見られないようにだぞ。」




マリはこれ以上ないくらい動揺して顔が真っ赤に染まっている。




マリ:「ド・・ドグマ、マナこの事は誰にも言うな!」


マナ:「ハ・・・ハイ、マリ様。」


ドグマ:「マリ様、訓練なら僭越ながら私ドグマがお教えいたします。」


カズマ:「あ~いいよオッサン。オッサンは明日から忙しい。俺が教えて差し上げるよ。」


マリ:「ああああの娘・・・メイもううううるさいから・・・」


カズマ:「ああ、ちゃんと一対一で訓練するように段取りするよ。メイが自主訓練している時間でいいだろ?」


マリ:「よよよよかろう、じゃじゃあじゅじゅ準備してくる・・・」




マリが立ち上がろうとするのをカズマが制する。




カズマ:「ちょっと待った。これからオッサンの訓練がある。その後はマナと打合せだ。悪いけど今日はもう時間なさそうだから明日な。」




カズマがそっけなく言うとマリは険しい顔で立ち上がりスタスタとコンピュータールームを出ていく。




カズマ:「あ、明日朝6時に訓練所に来てくれ。武具装備してきてな~。」




カズマがマリに大声で呼びかけたが返事はなかった。




カズマ:「なんだよ・・・わけわかんねぇよ・・・」


ドグマ:「マリ様がどんどん壊れていく・・・おいたわしやマリ様・・・」


カズマ:「あ?」

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