第17話 マナ

一階の大広間に来ると二人はドグマと会った。




ドグマ:「オイ、カズマちょっと待て!」


カズマ:「なんだ?オッサン。何か用か?」


ドグマ:「なんとかガンをひとつ俺にもくれ!」


カズマ:「オッサンには槍あげただろ?あれじゃ不満か?」


ドグマ:「隊長としては全ての武器を把握しておきたいのだ。マニュアルだけではよくわからん。実際に使ってみたい。」


カズマ:「おおーさすが勉強熱心ですな。いいよついてきな。」




カズマはドグマも連れてエレベーターに向かった。




カズマ:「俺もオッサンにまたお願いがある。」


ドグマ:「何だ?」


カズマ:「回復魔法の一番の使い手を俺のチームに入れたい。紹介してくれ。」


ドグマ:「ああ、僧侶で一番は間違いなくマナだ。」


カズマ:「何?マナってあのマナか?なんかいつもアタフタ駆け回ってるマナか?」


ドグマ:「あのマナだ。」


カズマ:「アイツか~」




カズマは不安な表情をしている。




ドグマ:「信じられんだろうがアイツの白魔法は飛び抜けている。傷の治癒、解毒、疲労回復。体力の制限なしにそれを使えるのはマナだけだ。」


カズマ:「人は見かけによらないもんだな・・・」


ドグマ:「マナは白魔法の他にも召喚魔法を使える。僧侶の間ではちょっとした教祖様扱いなんだよ。」


カズマ:「意外だ・・・想像できん。」


ドグマ:「ただアイツは性格上あまり目立つのを避けたいらしい。王女様を差し置いて民の人気をとるのが嫌なんだろう。あの才能を使えば国の医療は不要となるがそれも嫌らしい。アイツが全て治してしまうと医学が廃れてしまうからだ。そんな事を言っていたよ。」


カズマ:「じゃあマナをチームに入れるか。」




そうしているうちにエレベーターの近くまでくるとマナが部屋から出てくるのが見えた。




カズマ:「お、噂をすれば・・・オイ、マナ!」




大きな声で呼ばれたマナはビクッと反応した。




マナ:「はいぃぃ!」


カズマ:「オマエ俺のチームに参加しろ。今から『開かずの間』でミーティングだ。来い!」


マナ:「え?え?え?」


カズマ:「考えるな!感じろ!そしてついて来い!」




カズマはエレベーターに乗り込むとマナを手招きする。


マナはわけもわからずエレベーターに乗り込んだ。


エレベーターが下降している間メイがマナを珍しそうにジロジロと見ている。


メイに凝視されてマナは委縮していた。




カズマ:「メイ、コイツはマナ。さっき話してたケガや病気はなんでも治せる教祖様だよ。ご挨拶なさい。」




カズマはこの後交わされる珍妙な会話を想像して薄笑いを浮かべていた。


メイはカズマの背中から降りて、カズマの背後に隠れる。


チラっとマナをのぞき込み挨拶をした。




メイ:「はじめました、ワタシメイアル・・・いやメイです。どぞよろしく。」




おずおずと手を差し伸べマナに握手を求める。




マナ:「あ、あ、こちらこそはじめました?わ、わたしマナアル・・・いやマナです?どぞよろしく。」




なぜかカタコトの口調になるマナ。


ツッコミどころ満載のボケにカズマは必至で笑いをこらえている。


握手をかわす二人。


その後マナはドグマの背後にメイと同じように隠れる。


とうとうカズマは笑いをこらえきれずに大爆笑した。




カズマ:「ガハハハハ、オマエ最高だよ!」




マナはきょとんとしている。


メイはふくれっ面でカズマに抗議する。




メイ:「パーパ、アイツワタシ馬鹿にしてるか?」


カズマ:「いやメイ、あれはオマエにつられてるだけだ。深い意味はない。」


メイ:「ふーん、アイツ変だな・・・」




『オマエもな』




カズマはそう思いながら爆笑していた。


エレベーターが最下層について4人はコンピュータールームへ向かう。


ほどなくすると電子扉にたどり着き、カズマはタッチパネルに触れた。


そこでマナがカズマに質問をした。




マナ:「そういえばカズマ様。なぜそのIDというのにカズマ様の名前が使われているんですか?」


カズマ:「マナちゃんそれはだな・・・」




と理由を言いかけてカズマは言葉をきった。




『ID?今IDって言ったか?それに俺の名前・・・もしかしてコイツ・・・』




カズマ:「マナちゃん。この字が読めるようになったのか?」


マナ:「ハイ、お陰様で『予言の書』の読解も進んでいます。」




ふと見るとマナは手帳のようなものを持っている。




カズマ:「マナそれはなんだ?」


マナ:「あ、これは私の日程表です。私今日の予定を書いておかないと忘れてしまうんで。」




カズマは城に現れてから今日までの事を思い起こしていた。


勇者到来が民に知れるスピード、体力測定の段取りの良さ、メイの引っ越しの手配、武具とマニュアルの配布。


全てがスムースに進んでいる。


計画の立案者はカズマだがそれがここまで実行できているのは誰かがサポートしていたからだ。


カズマもようやくそれに気づき始めていた。




『マナなのか?』




カズマ:「マナ今日の予定は?」


マナ:「えーとカズマ様とリー様、メイ様の食事の用意と明日の闘技場解放の手配。闘技場管理者との打ち合わせとHighpressuregunの標的作成の進行状況の確認。あと入場受付と医療人員を僧侶の人間にお願いしにいきます。それから・・・」




ドグマがポカンと口を開けて驚いている。


マナは皆が静まっている事に不安になった。




マナ:「え?え?私何かおかしな事言いました?」


カズマ:「いやマナ、オマエは天才だ。」




ガッハッハとカズマは上機嫌で笑った。


マナはわけがわからず困惑していた。

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