第16話 訓練

メイの説教タイムが終わった後、リーとメイはそれぞれ部屋を与えられ、城内のルールや施設を案内された。


カズマはその間に完成していた500人分の武具を支給するために闘技場へ男達を集めた。


武具は強化ゴムの鎧、兜、手袋、ブーツの防具一式とそれぞれの特性に合わせた武器一つという組み合わせだった。


力のある者には槍が、俊敏性に長けている者には刀。


身体能力がやや劣る者にはHighpressuregunを与えていたが、訓練用に威力を弱めておいた。


武具を支給する際「個人別訓練マニュアル」も一緒に配布し、一日二時間個人で訓練する事を義務づけた。


訓練する場として闘技場を二十四時間開放し、時間がわかるように大きな時計も設置された。


男達の中にはカズマの個人レッスンを望む者が多かった為、一日4時間程度闘技場を視察する事をカズマは約束した。


カズマ不在の時代わりに指導できる人間はドグマしかいなかったので、カズマはドグマに「訓練マニュアル」を全て叩き込んだ。


ここまでの間マリは全て立ち合い、カズマの言動を見張っていた。


意外な事にマリは一切口出ししなかった。


訓練の義務付けや闘技場の解放などは明らかに王国のルールにはなかった事である。


カズマもそれは承知していたので、ここにマリが異論を挟まなかったのが気になっていた。




カズマ:「じゃあ訓練は明日6時から開始する。闘技場の解放も明日からだ。今日は自分達の装備とマニュアルを確認してくれ。特にHighpressuregunを使う者は使い方をよく読んでくれ。コイツは危険だから闘技場でしか使えないようにしてある。何か分からない事がある場合は城の守衛に伝えてくれ。ドグマ隊長が対応する。では解散!」




カズマが解散を告げると男たちは支給品を抱えて帰宅していった。


何名かが残りドグマを質問攻めにしている隙にマリとカズマも闘技場を抜けて城に戻っていった。


その途中でカズマは尋ねた。




カズマ:「いいのか?」


マリ:「何がだ?」


カズマ:「訓練はこの国のルールと反する所があるんじゃないか?」


マリ:「訓練を実施する事とその指揮は貴様が行う事は了承したはず。そういう契約をしたであろう。」


カズマ:「じゃあ何でそんなに不機嫌な顔なんだよ?言いたい事があるんじゃないか?」


マリ:「うるさい!私は元々こういう顔なんだ!」




マリが何に対してイラついているのかカズマはわからなかった。




『なんだ?面倒くせぇ女だな・・・まいっか。放っとこ。』




カズマはマリと分かれて自室へ向かおうとした。


その時メイがカズマに後ろから抱きついた。




メイ:「パーパ、見っけ。」


カズマ:「お、メイか。どうだ?お城は」


メイ:「うん。お城広いけどつまんない。パーパ遊ぼ。」


カズマ:「ダメだこれからオマエは訓練だ。」


メイ:「いいよ、パーパと訓練♪」




カズマはメイを背負って城の訓練所に向かう。


その姿はまるで親子だった。




メイ:「パーパまたマーマとケンカしたか?」


カズマ:「オマエ見てたのか?ケンカじゃねぇよ。あっちが何か怒ってんだよ。」


メイ:「パーパ、マーマと遊んであげてる?マーマ寂しいんじゃない?」


カズマ:「あ~メイ、オマエ色々間違ってる。」


メイ:「何が違うの?」


カズマ:「大人は難しいんだよ・・・」




そんな他愛のない会話をしているうちに訓練所に着いた。


カズマは強化ゴムを装備し、メイには道着を渡し着替えさせた。




カズマ:「メイ、オマエの腕力は普通の人間には出せない程大きいものだ。しかしまだその使い方が単純だ。オマエには徒手空拳・・・素手による闘い方を教える。」


メイ:「うん、パーパ」


カズマ:「それから訓練の時はパーパと呼ばず先生と呼べ。返事も『うん』ではなく『はい』だ。」


メイ:「はい、先生。」


カズマ:「よしじゃあ基本からやる。」




カズマがメイに教えているのは『空手』


挙足による打撃技を特徴とする武道・格闘技である。


『空手』の型をひととおり教え、毎日時間の許す限り自主訓練をするように指示した。




メイ:「ワタシ一人もうやだよ。パーパ一緒にいてよ。」


カズマ:「まあ二時間ぶっ通しで訓練したし今日はこれくらいにするか。」


メイ:「やった。パーパ遊ぼ。」


カズマ:「ダメだ、まだやる事がある。」


メイ:「えーそれいつ終わるアルか?」


カズマ:「まだまだだな。そうだ、オマエも一緒について来い。」


メイ:「うん。」




メイは道着を着替え、またカズマの背中にしがみついた。


メイを背負ってカズマはコンピュータールームへ向かった。

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