第12話 リー

酒場でカズマとドグマが食事をした後、メイは体調が悪いと店を早退した。


メイがお店を出てきた所でカズマとドグマが合流し、メイは自宅へと案内する。




カズマ:「今日の早退分の報酬はこのオッサンが払うよ。」


ドグマ:「オイ!カズマ勝手な事言うな!」


カズマ:「ガハハ、冗談だよ。」


メイ:「別に今日のはいい。それよりさっき言ってた条件は守れよ。」




カズマの冗談にもメイは冷静だった。




カズマ:「ああ、傭兵になってくれるなら君とお爺さんはお城の中で暮らしていいよ。食料も三食支給させる。それでいいな?オッサン。」


ドグマ:「王女様が許可するならばな・・・」




実際マリが許可したわけではないが、『慈悲深いマリちゃんなら絶対許可してくれるぞ』とカズマはドグマを丸め込んでいた。


メイの住処は酒場から割と近い所にあった。


およそ一キロの距離を歩いている間もカズマはメイの観察をしている。


庵につくと中では白髪の老人が瞑想をしていた。




メイ:「ただいまじーじ。」




じーじと呼ばれた老人は目を開き怪訝そうな顔をした。




リー:「おかえり、メイ。やけに早いね。おや?その方たちは誰だい?」




カズマは一歩前に出て礼儀正しく一礼した。




カズマ:「はじめまして。僕はカズマといいます。こちらはドグマ。サンライト城の守衛隊長です。覚えておられますか?」


リー:「お城の・・・?ああ、入国の際はお世話になりました。」


ドグマ:「お久しぶりです。カズマ、この方はメイの祖父のリーさんだ。」


メイ:「じーじ、お城にすめるよ。」




大人同士の長い挨拶を吹き飛ばすメイの一言に場の空気が凍り付く。


静寂を破るようにリーが尋ねる。




リー:「おやおや、今日は驚く事ばかりだ・・・。メイ、オマエはちょっと外してくれ。私はこの方たちと大事なお話をする。」


メイ:「でもじーじ聞いて、ワタシ・・・」


リー:「待つんだメイ。」




リーは優しいが有無を言わさぬ口調でメイをたしなめた。


メイは不服そうにほおをふくらませて外に出ていった。




リー:「申し訳ない。まだ子供なので・・・」


カズマ:「いや、こちらこそ突然申し訳ありません。」




ドグマはカズマの礼儀正しい受け答えに驚いていた。


ドグマと話すカズマとはまるで別人だった。




リー:「それでどういうご用件でしょう?」


カズマ:「これから戦争が起こります。僕の部隊にメイさんが加入する事を許可してください。」




リーはやや落胆した様子だった。




リー:「カズマさん・・・あなたもあの子の力を利用しようとする方ですか?戦争に子供を巻き込むのはいかがなものでしょう?」


カズマ:「リーさん、酒場で用心棒まがいの事をするよりも健全だと僕は思います。失礼ですがメイさんは学校に行った事はありますか?」


リー:「痛いところをつきますな。お恥ずかしい話ですが、メイはまともな教育を受けた事がありません。あの子は人間から恐れられ、巨人からは見下され、どんなグループの輪にも参加を許されなかった。学校に通う事も認められなかったのです。」


カズマ:「僕にメイさんを教育させてください。軍隊は闘い方だけでなく礼儀やルール、語学やさまざまな知識を教えています。彼女には色んな可能性がありますが、今は学び、可能性を広げる時期です。」


リー:「あなたはメイを教育できる程の器なのですか?メイが自分より弱い者の教えを受けるとは思えないのですが・・・」


カズマ:「わかりました。僕の実力を見せましょう。」


リー:「ほう、どうやって?」


カズマ:「メイさんと戦います。彼女に指一本ふれられずに倒しますよ。」

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