第11話 メイ
サンライト城の体力測定と面談が全て終了すると、カズマはドグマと共に城下町へ繰り出した。
ドグマが紹介しようとしている女性の名はメイ。
町の酒場でウエイトレスをしていた。
カズマとドグマが酒場についた頃には夜になっていて、まず二人はそこで食事をとることにした。
カズマ:「どいつだ?オッサン。」
ドグマ:「あの娘っ子だ。」
ドグマはやや小柄の赤いショートヘアーの娘を指さした。
彼女は素早い動きでてきぱきと客の注文を受けている。
カズマ:「こっちに呼べるか?」
ドグマ:「呼んでみるか。メイ!注文を頼む!」
ドグマが大声で呼ぶとメイという少女は素早く二人のテーブルまでやってきた。
メイ:「いらしゃいませ~、ごちゅもんは何しますか?」
ドグマ:「俺はビールと唐揚げ定食を頼む。カズマ、オマエは何にする?」
カズマ:「そうだな・・・君のおすすめは?メイちゃん。」
カズマが優しく話しかけたがメイの表情は緩まなかった。
他の客に接するのと同様に冷静な表情をしている。
ニコニコと満面の笑顔でいるカズマに対してぶっきらぼうに答える。
メイ:「ワタシ、この店の食べ物食べた事ないからわからないね。」
カズマ:「そうか。じゃあ俺も唐揚げ定食を頼む。」
メイ:「お客様はおのみものはヨロシイですか?」
カズマ:「ああ、俺はこのお茶をくれ。」
メイ:「かしこまりめした。しょしょおまちくださり。」
注文を受けた後メイは厨房へ伝票をまわす。
その様子をジーっと見ているカズマ。
カズマ:「あの子外人と言ってたがヤマト大陸の外から来たのか?」
ドグマ:「ああ、そうだ。元はこの大陸の西にある大きな大陸に住んでいたそうだ。」
カズマ:「なぜここへ?」
ドグマ:「西の大陸は草木も生えない死の荒野が広がっていて、食料もろくにない所らしい。メイはそこのシェルターで祖父と暮らしていたが、故郷に見切りをつけて三年前にヤマト大陸に移住してきた。」
カズマ:「あの子のどのへんがおすすめなんだ?見たところ14、5の若い子だが、俺の好みとは違う。」
ドグマ:「アホ!俺はそういう意味で言ったんじゃない!」
カズマ:「わぁかってるよ!冗談だよ、頭かてぇな。」
カズマはメイの動きを見つめ続けている。
メイはその視線に気づいていたが、気づかないフリをしているようだ。
表情がややこわばっている。
カズマ:「動きは素早くてスマートだ。最小限の動きで客と客の間を動き回っている。あとかなり神経質なタイプだな。店の中の客全てに警戒してて、一人一人の動きを把握してやがる。」
ドグマ:「そうなのか?」
カズマ:「ああ、俺が観察しているのも気づいてやがる。相当イライラしているな・・・お、ビールが来たぞオッサン。」
ドグマ:「オッサンいうな。オマエは飲まんのか?」
カズマ:「ええ、只今勇者様のお仕事中なもので・・・」
カズマのおちゃらけた言い方にドグマは顔を少ししかめた。
メイがお盆にビールとお茶を乗せてテーブルにやってきた。
ビールをドグマの前に置く。
お茶をカズマの前にドン!と置く。
メイ:「オマタセイタシマシタ・・・」
メイの冷たい視線にもカズマはニコニコと笑顔を返す。
カズマ:「ありがとう」
カズマの挨拶にもフンとそっけない素振りで、仕事に戻るメイ。
ドグマ:「オイ、カズマ。オマエ嫌われたんじゃないのか?」
カズマ:「まだお互いを知らないだけさ。まあ探り合いってとこだな。」
カズマは相変わらずメイを観察し続ける。
カズマ:「さあ教えてくれ。あの子のどのへんが俺好みなんだ?」
ドグマ:「ああ、メイは・・・」
とドグマが話そうとした瞬間パリーンとグラスの割れる音がした。
客A:「テメェやんのか、コラ!」
客B:「アン?上等だよ、かかって来いや!」
遠くの席で酔っ払い同士の喧嘩が始まった。
周りの客は観戦にまわり、止める気配がない。
店長:「また始まったよ・・・メイ!頼む。」
酒場の店長がそう言うとメイは運んでいた酒をテーブルに置き、やれやれという顔で男たちに近づいた。
男達は取っ組み合い床に転がって殴ったり殴られたり・・・
それを囲んで観戦している客達をかきわけてメイが現れる。
メイ:「おきゃくさん他の人達のメイワクね。外出るヨロシ。」
片言の言葉で二人に告げるとメイは片手で一人を捕まえる。
客A:「なんだ!ねぇちゃんすっこんでろ!ケガしても知ら・・・」
掴まれた男は次の瞬間宙に舞った。
それをメイは片手の手のひらの上に乗せる。
ポカンとそれを眺めるもう一人の男も同様にヒョイと持ち上げもう片方の手のひらに乗せる。
涼しい顔で二人の男を手に乗せて酒場の窓の方に歩いていく。
メイ:「誰かマドあけてくだし~」
メイが窓に近づくと店の従業員が窓を全開にした。
メイ:「ごきげんよう。」
そう言ってメイは二人を店の外へ放り投げた。
店の外には池があり、二人の男は頭からそこへ落とされた。
周囲の客が喜んで口笛を吹き拍手をしてメイに喝采を送る。
メイは淡々とした表情で仕事に戻った。
カズマ:「なんだ?あの馬鹿力は?」
ドグマ:「メイは巨人族と人間のハーフだ。姿形は普通の人間と変わらんが腕力は巨人族の力を受け継いでいる。」
カズマ:「巨人族?」
ドグマ:「西の大陸には巨人がいるらしい。身の丈は三メートル程で怪力なんだとよ。メイの母親は普通の人間だが父親は巨人だ。」
カズマ:「なぜオッサンがその事を知ってるんだ?」
ドグマ:「メイとメイの爺さんがこの王国に亡命してきた時俺が審査をした。」
カズマ:「オッサン入国を許可したのか?そんな慈悲深いタマじゃないだろ?」
ドグマ:「うっさい!確かに俺は反対したが王女様が・・・」
カズマ:「そういう事か。爺さんは今どうしてるんだ?」
ドグマ:「町の外れに庵を建ててそこに二人で暮らしてる。だが爺さんは年が年だから仕事がなくてな。メイがここで働いて生活費を稼いでいる。」
カズマ:「ウエイトレスというより用心棒として・・・だろ?」
カズマの指摘が気に入らないのかドグマは返答しない。
メイが唐揚げ定食二つを持って二人のテーブルへ近づいてくる。
カズマ:「まあ、金がないのは俺も同じ。ゴチになりますぜ。」
ドグマ:「調子のいい奴だ。まあいい、食べるぞ。」
メイが定食二つをテーブルに置くとカズマは唐揚げにかぶりついた。
メイは伝票をテーブルに置き、何も言わず立ち去ろうとした。
その時カズマが声をかける。
カズマ:「メイちゃん待った。今日仕事はいつ終わる?」
メイ:「今日はお客さん多いから朝までお店やるよ。」
カズマ;「ちょっとお話したいから早退できないかい?」
メイはうんざりした様子でため息をついた。
メイ:「お客さんちょとさっきからしつこいアルね。ジロジロわたしを見てるしキモイアル。いい加減わたしもがまん限界ね。変な事するなら張り倒すよ。」
カズマ:「あー残念だがそっちの話じゃないんだ。今の仕事より稼げる仕事があるんでその相談をしたいんだ。君と君のお爺さんと。」
稼げる仕事という言葉にメイが反応した。
メイ:「稼げる仕事ってどんな仕事?」
カズマ:「傭兵だよ。これから戦争が始まる。」
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