第10話 面談

勇者の証明が終わった後、カズマは男性全員の体力測定と個人面談、及び軍事チームの結成と訓練を行うと宣言した。


そしてBシェルターとモンスター軍の脅威についても語り、全員の一致団結を求めた。


勇者が現れた事で民は高揚していたので反対する者は誰一人いなかった。


皆勇者到来の祝宴を望んだがカズマはそれを制した。


モンスター軍襲来まで時間がない為、明日から体力測定ど一人1分程度の面接を行う予定だからだ。


明日の体力測定に備えてよく休むように皆を労い、カズマは城に戻った。


城に戻ると大広間での食事が待ち構えていたが、カズマはそれも断った。


そんな事よりもやる事が山ほどあったのだ。


体力測定の項目設定、各項目の入力フォーム作成、個人面談の名簿作り、軍事チーム訓練スケジュールなどなど・・・


最低限の食事だけマナに運んでもらい、コンピュータールームにこもりっきりになっていた。


農民、守衛、僧侶のうち僧侶チームだけは体力測定を免除して、体力測定の記録係を命じた。


僧侶全員を大広間に集め、体力測定の記録のやり方をみっちり教え、自らが測定項目を実行して記録させた。


ストップウォッチを人数分用意し、使い方を教える。


ようやく形になった頃にはもう日が暮れていた。


カズマはこちらの世界に来てまだ一睡もしていなかったので、起きているのももう限界だった。


一通り準備が終わったのでひと眠りする事にした。


カズマに与えられたのはマナの部屋だった。


勇者の出現した場所ということでマナの部屋はカズマに提供されてしまったのだ。


マナは嫌な顔一つせずにカズマに自分の部屋を譲った。


マナには代わりの部屋が用意されたが、以前の部屋と大して変わらなかったのである。


そのお陰でカズマはゆっくりと寝る事ができた。


そして夜が明け、サンライト城体力測定と面談が始まった。




体力測定は闘技場で行われた。


500人近い人数が一斉に集まれる広場はそこしかなかったのだ。


記録係の僧侶は50人ほどいたのである程度流れが速かった。


問題は個人面談だった。


こればっかりはカズマ一人での対応なので、一人1分の面接として、全員の面接が終わるまで500分=8時間20分かかる計算だった。


最初の100人までは一人1分の面接を行っていたカズマは途中でこの方式を見限り、違う方法をためした。


カズマは面接をやめ相手にファイティングポーズをとるように求めた。


戦闘で対面した時のオーラを感じる事で戦闘のセンスはある程度読める。


そのセンスをカズマの基準で数値化し、マナに記録させた。


最速で2,3秒でオーラは感じられたので、面談は回転が速くなった。




マナ:「はい次の方~」


シュウ;「受験番号380番シュウです。」


カズマ:「シュウ?」




カズマが目をやるとそこには居合の達人のシュウがいた。




カズマ:「オマエも体力測定に来てたのか。」


シュウ:「はい、勇者様、よろしくお願いします。」


カズマ:「ああ、オマエの実力はわかっているからいいよ。測定もしなくていいからここに残れ。」


シュウ:「え?じゃあオラは?」


カズマ:「合格。ていうかオマエさんには俺のチームに入ってほしい。」




カズマの要望にシュウは戸惑っているようだ。




カズマ:「なんだ?嫌なのかい?」




コクリとうなずきシュウは話し始めた。




シュウ:「オラは農民です。戦争なんてしたくありませんし、人殺しも嫌です。」


カズマ:「ほう、昨日俺を刀で切りつけたじゃないか。あの攻撃は人を殺す力が十分にあったぜ。」


シュウ:「あれは王女様のお言葉に従っただけです。オラの攻撃が勇者様に・・・いえその鎧に効かねぇ事はわがってました。」


カズマ:「そうか・・・オマエの剣に殺気がなかったのはそういう事か。」


シュウ:「でぎればオラは戦争に参加したぐねぇっす。勇者様、向こうと話し合いでなんとかなんねぇっすか?」


カズマ:「わかった、戦争に参加したくなければそれでいいさ。無理強いはしない。もう帰って畑耕していいよ。」




シュウはペコリと頭を下げて面接の部屋を出て行った。


マナがオロオロしてカズマに尋ねた。




マナ:「カズマ様、いいんですか?」


カズマ:「いいよ、アイツの道はアイツのものだ。戦いたくなければそうしていいんだよ。次の奴呼んでくれ。」




そう答えるカズマの口調は優しかったが目は笑っていなかったのをマナは見逃さなかった。


シュウの面談の後、淡々と面談はすすみ、残す所20名程となった。




マナ:「はい次の方~」


ドグマ:「受験番号483番ドグマ」


カズマ:「お、来たなオッサン。」




ドグマは顎から頭にかけて包帯を巻いていた。


昨日の戦闘で顎の腫れが引かないようだった。




ドグマ:「誰がオッサンだ、若造」


カズマ:「よう、どうだい?調子は?」


ドグマ:「フン問題ない。」




プイとドグマは視線をそらす。


カズマとは馬が合わないようだ。




カズマ:「オッサンももう測定しなくていいよ。ここに残ってくれ。」


ドグマ:「早く言え!もう測定など全て終わったわ!」




クククと笑いカズマは謝った。




カズマ:「悪い悪い、まあアンタの実力は昨日わかったからな。俺のチームに入ってくれ。」


ドグマ:「断る。貴様と一緒に行動などできん。」


カズマ:「ちなみに俺のチームにはマリちゃんも入る予定だ。最強のガーディアンが必要なんだが・・・」


ドグマ:「王女が?ううむ・・・仕方ない。参加しよう。」


カズマ:「よし!助かる。マジで戦力足りねぇんだ。実際今日一日この城の男全員とイメージバトルしたんだがどいつもイマイチでな。」


ドグマ:「私以外の守衛はダメか?」


カズマ:「うーん、ステータス自体は農民より上なんだが、それほど差があるわけじゃない。俺のチームに必要なのはスペシャリストだ。例えばシュウみたいな剣の達人な。」




ドグマは何か考えている。




ドグマ:「オイ、カズマとかいったな。」


カズマ:「ああ、俺はカズマですが何か?」


ドグマ:「一人オマエの希望通りの奴に心当たりがある。」


カズマ:「本当か?」


ドグマ:「ああ、多分アイツはオマエさん好みだ。」


カズマ:「ほう、実に興味深いねぇ。」


ドグマ:「ただ問題が一つある。女なんだ。しかも外人だ。」


カズマ:「問題ない。すぐに連れてきてくれ。面接する。」




カズマの瞳は子供の様にキラキラ輝いた。

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