第13話 児童遊戯

リーとカズマが話をしている間、メイは外で一人しゃがんでいた。


一人でいると昔いじめられていた記憶がよみがえる。


小さい子供達が遊んでいるのを独りぼっちのメイがじーっと見ている。


私も一緒に遊びたい・・・そう思って近づくと皆怯えて逃げていく。


どうして?


どうして皆私の事さけるの?


どうして皆私と遊んでくれないの?


寂しいよ・・・


誰か助けて・・・・




リー:「メイ、起きなさい。」




リーの呼びかけにメイはハッと頭を上げる。


リーとカズマとドグマが庵から出てきた。


メイは涙ぐんでいたのを腕で拭った。


悲しい夢を見ていたようだ。




メイ:「じーじ、話おわたの?」


リー:「ああ、この方は戦争でオマエの力を借りたいようだね。それでいいのかい?」


メイ:「うん、代わりにお城にすめるし、ごはんも食べれる。」


リー:「この方はオマエに闘い方も教えてくれるそうだがどうだい?」


メイ:「それはいらないアル。私つよいから誰にも負けない。」


カズマ:「いやメイちゃん、君はまだ未熟だ。」




カズマの言葉にメイはムッとする。




カズマ:「今から君にそれを教えてあげよう。かかってきなさい。」




カズマは腰をやや落としてファイティングポーズをとる。




メイ:「オマエ正気アルか?ワタシと戦えばオマエボコボコになるアル。」


カズマ:「君は俺に触る事もできない。」


メイ:「私を怒らせる気アルか?私が本気だしたらオマエ死ぬアルよ。」


カズマ:「本気で来い。殺す気でな・・・」




さらに挑発するカズマ。


メイの怒りは頂点に達した。




メイ:「つぶす・・・」




メイはカズマに飛び掛かった。


カズマの顔面に右の拳を打ちこむ。


カズマはヒョイと身をかわしながらメイの右手をとり、くるりと回転する。


そしてメイをそのまま前方の地面にやさしく投げ下ろす。




カズマ:「もう一回だ。」




スッとカズマは離れ、メイを手招きする。


メイは立ち上がり今度はカズマに飛び蹴りを放つ。


今度もカズマはメイの足を掴み、くるりと回転し、前方の地面にメイをやさしく投げ下ろす。




カズマ:「もう一回・・・」




メイは背中をさすりながら再びカズマに飛び掛かる。


今度は両手でカズマを掴もうとする。


カズマはメイの両手を片方ずつ掴み、まとめて、くるりと回転して前方の地面にやさしく投げ下ろす。


メイは何度もカズマに飛び掛かったが、同じ要領で投げとばされてしまっていた。


リーはメイが全くカズマの相手にならない事に驚いていた。




リー:「これは・・・」


ドグマ:「カズマの奴・・・遊んでやがる。」




メイとカズマの様子は闘いとは程遠いものだった。


まるで父親にじゃれる子供と、それを軽くいなしている父親。


そんな戯れが続くとメイはフラフラになっていた。


地面に投げ下ろされる衝撃はさほどでもないが、くるくると回転させられて三半規管が影響を受けたようだ。


メイは目が回るのか足取りもおぼつかなくなってきている。




メイ:「パーパ(お父さん)・・・」




ぐるぐると頭の中が混濁し、目の前のカズマに自分の父親を重ねる。




メイ:「パーパ!もっとワタシをかまって!」




そう叫びながらカズマに抱きつこうと突進するメイ。


それをヒラリとよけて回転させて投げ飛ばすカズマ。


フラフラと立ち上がったメイは泣いていた。




メイ:「どうしてワタシを捨てたの?パーパ。」




両手を前に出してよろよろとカズマに近づいていくメイ。




メイ:「寂しいよ・・・パーパ・・・」




その時カズマはすばやくメイの背後に回り込み、首の後ろに手刀を打ち込む。


メイは意識を失い、その場に崩れ落ちそうになった。


カズマはメイの体が地面に落ちる前に優しく抱きかかえる。




カズマ:「ほい、お疲れさん。」




あまりにもあっけなくメイが倒されたのを目の当たりにしたリー。




リー:「信じられん・・・」


カズマ:「約束通りメイさんを傭兵として教育させていただきます。明日には二人ともお城に引っ越しをしてください。荷物をまとめてもらえれば城から荷馬車と人員を送ります。メイさんはこのまま寝かせておけば朝には目覚めるはずです。寝室に連れていくので案内してください。」




メイを抱きかかえながらカズマは庵の中へ向かった。


あわててリーはそれを追いかけて寝室へ案内した。


寝室にメイを寝かせて布団をかけるカズマ。


メイの寝顔を見るといい夢を見ているのか笑顔だった。

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