第7話 報告

タッタッタッタッタ・・・


マナはサンライト城の階段を駆け上がっていた。


勇者の到来を王女に伝えるべく走るマナ。


普段と違い生き生きとしているマナを見かけた城の民達が声をかける。




民A:「マナちゃん、どうしたの?なんかいい事あった?」


民B:「新種の薬草でも見つけた?」




皆の問いに答えずマナは「カズマ様・・・カズマ様・・・」とつぶやき走っていく。


そこへマリが目の前に急に現れ、マナはよけきれずにぶつかった。




マナ:「キャッ・・・」




マナは尻もちをついてイタタタと肩をさする。


臨戦態勢でピリピリしているマリはマナを睨みつけた。




マリ:「マナ!城内を走るな!」




マナはその迫力に押されビクッと体を震わせた。




マナ:「申し訳ありませんでした、マリ様・・・」




今にも消え入りそうな声で謝るマナを見てフッとマリの表情が和らいだ。




マリ:「こちらこそすまなかった。だがここは武装している者もいる。ぶつかってケガをするのはオマエだ。そうならないようにお互い気をつけよう。大丈夫か?」


マナ:「はい、マリ様。私は大丈夫です。」


マリ:「そうか。ところで何か緊急事態か?」


マナ:「あ!そうでした!カズマ様なんです!」




マリの頭に?マークが浮かぶ。




マリ:「なんだそのカズマ様とは。」


マナ:「あ、えーとつまりですね。『予言の書』なんです。勇者様なんです。」




しばしの沈黙が二人を包む。


ニコニコしているマナを見つめるマリ。




『カズマ様・・・予言の書・・・勇者様・・・』




三つのキーワードからマリはマナの言わんとする事を予測した。




マリ:「つまり『予言の書』にある勇者様が現れそいつはカズマという名前なのだな?」


マナ:「そうです!マリ様!これで世界は救われます!」




マリは半ば強引な推測が的中している事に驚いた。




マリ:「まさか本当にそうなのか?」


マナ:「はい。カズマ様は『予言の書』に書かれているとおりに光と共に現れました。その様子は私が全て見ていました。間違いありません。」


マリ:「信じられん・・・夢ではないのか?」


マナ:「いいえマリ様。確かに勇者様が現れたのです。」




マリはマナの真剣な表情にやや驚いた。


マナのこんなに真剣な表情を見るのは初めてだった。




マリ:「マナ、勇者は今どこにいる?案内せよ。」


マナ:「はい。勇者様は今『開かずの間』にいらっしゃいます。なんだかジョーホーシューシューをするとか・・・」


マリ:「何?あそこに入る事ができたのか?」


マナ:「はい!なんかピカピカまぶしい部屋で誰かと話をしていました。おそらく神様だと思います。」




マリの表情が曇る。




マリ:「おのれ・・・忌々しき過去の遺物が・・・」


マナ:「マリ様・・・どうかしましたか?」




マナは怯えながらマリの様子を伺っている。




マリ:「いや、気にするな。『開かずの間』だな?」


マナ:「はい」




『勇者だと?本当に勇者なら・・・殺す気で試してやる』




足早に『開かずの間』へと向かうマリを追いかけてまたマナは走り出した。

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