第8話 契約

カズマ:「えーっと・・・これは作ったからあとはブーツを・・・」




カズマはコンピュータールームで防具を作っていた。


強化ゴムで作られた鎧、兜、籠手、ブーツ。


全てが4Dプリンターで製造された後それらを装備してみる。




カズマ:「うーん、ジャストフィット。」




その完成度に満足しているカズマ。


そこへマリとマナがエレベーターから出てくる。




カズマ:「おや?おじょーちゃん。いやマナちゃん、その人は?」


マナ:「あ、カズマ様こちらは・・・」


マリ:「そなたが勇者か。私はこの城の王女マリだ。そなたの力を見たい。ひとつお手合わせ願おう。」




マリの有無を言わさぬ迫力。


マリの威圧的な態度に物怖じもせずカズマが答える。




カズマ:「いいよ、でもここは狭い。上に広場はあるかい?」


マリ:「城の外に闘技場がある。そこがよかろう。」




無言でエレベーターに乗り込むカズマとマリ。


その間に挟まれたマナは縮こまった。


地上に上がる間も沈黙が続く。


エレベーターが地上の階につくと、マリがスタスタと城の外へ向かう。


カズマもその後を続き、さらにその後をマナが駆け足でついていく。


城を出て左へ数百メートル進むと右手に闘技場が見えてくる。


円形の闘技場の中央に来るとマリは振り返りカズマと対峙する。




マリ:「カズマとやら、そなた武器は?」


カズマ:「俺はこのままでいいよ。」


マリ:「そうか・・・では・・・」




マリは一礼をした後、刀を抜き構えた。


カズマは構えることもなく仁王立ちのまま動かなかった。


マリの目が座り殺気がみなぎる。


マリの剣気が頂点に達した時、パシッ!と何かがはじける音がする。


それと同時にマリはカズマに切りかかり、カズマの頭部に刀を振り下ろす。


刀が当たる寸前でカズマはヒョイと身をかわす。


二度三度とマリは切りかかるが、カズマはことごとく見切りかわしていく。


何度切りつけてもカズマにかわされ、マリは肩で息をするようになっていた。


マリは意を決したように刀を頭上に持ち上げた。そして・・・




マリ:「ヤァー!」




雄たけびと共にカズマに襲い掛かる。


バシッ!


カズマは両手でその刀を挟み込んだ。


真剣白羽どり。


マリが刀を押しても引いても動かない。


マリが少し力を抜いた瞬間、カズマは刀をヒョイととりあげた。


カズマは取り上げた刀をマリに向ける。




カズマ:「オイおねぇちゃん、アンタ俺を殺す気だったな?」




カズマは冷たい視線をマリに向けた。


マリは観念した。




マリ;「ああ、オマエを殺そうとした。気に入らなければ好きにすればいい。」




途端にカズマは爆笑した。




カズマ:「ガッハッハ!いいよ!アンタいいよ!」




あっけにとられているマリをよそにカズマは爆笑していた。




マリ:「貴様!何がおかしい!」


カズマ:「いや~、あんな剥き出しの殺気は久々でよぉ。ちょっと鳥肌たっちまったぜ。ガッハッハ!」




なおも笑い続けるカズマにマリは怒りを覚えた。




マリ:「私をなめているのか!」


カズマ:「違う違う・・・ククク・・・」


マリ:「だったらなぜ笑う!私はオマエを真剣に殺そうとした。それを愚弄する気か!」




カズマはようやく笑うのをやめて嬉しそうにマリを見た。




カズマ:「いや悪い悪い。俺に歯向かう奴って最近いなかったもんでな。なんか物足りなかったんだよ。アンタの気迫は本物だった。ありがとうよ。」


マリ:「修羅場を楽しむほどの猛者ではあるようだな。しかし私の攻撃はかわせてもモンスターには太刀打ちできるものかな?」


カズマ:「ほう、モンスターの事を知っているのかい?」


マリ:「先ほどAシェルターの早馬が来た。Bシェルターはモンスターの軍勢で押し寄せたらしい。Aシェルターは陥落するだろう。」


カズマ:「ん~予想通りだな。」


マリ:「現段階で我々ができるのは・・・」


カズマ:「城の防御を固める事と避難民の受け入れってとこか。」




マリは少し驚いた。


自分と同じ意見が出るとは考えていなかった。




マリ:「よくわかったな。ただ敵を待つだけになるかもしれないが、我々ができるのはそのくらいなのだ。貴様に何か案はないか?」


カズマ:「貴様じゃない、俺はカズマだ。」


マリ:「カズマか・・・すまない。」


カズマ:「いいんだよマリちゃん。まあ色々案はありますぜ。」


マリ:「そうか・・・ならばその力我らに貸してくれ。」


カズマ:「いいよ。でも農民の皆さんにも戦ってもらうことになる。戦う経験がない奴がほとんどだろうから適正を見て役割分担するし、訓練もしてもらう。そして総指揮は俺がとるからそのつもりでいてくれ。嫌な奴は外れてもらうからな。」


マリ:「わかった。皆には私から説明する。」


カズマ:「よし、契約成立だ。」




カズマが手を出し握手を求めるとマリはその手を握った。


マナはその光景をボロボロと涙を流しながら見つめていた。




カズマ:「わっ!オマエいたのか。なんで泣いてんだよ?」




またカズマの笑い声が闘技場に響いた。

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